昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

今日のニュース

ここに何度も書いていることだけれど、昇平はことばの発達が遅れている。
言われていることが聞き取りにくく、理解しにくい。自分で言いたいことが頭の中でうまくことばにまとまらない。
本当はいろいろ話したいこともあるのだろうけれど、それを言語化できなくて、黙々と自分だけの遊びに没頭していることもある。

それでも、最近、学校の様子をたずねると、つたないことばをつなぎ合わせて、いろいろ話して聞かせてくれるようになってきた。
それが「今日のニュース」というものに発展しているので、今日はそれのレポートを・・・。

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そもそものきっかけは、ふとした思いつきだった。
学校から家に帰る途中、スーパーに回ったのだが、昇平が自分で買い物を引き受けて、しかにも上手に買い物をしたので、それを誉めようと思った。ところが、そのとき、昇平は車の後部座席でアドバ○スのゲームの真っ最中。こういうときの昇平は、いくら話しかけても話半分も入っていかないので、なんとか注目して欲しくて、こんなふうに切り出した。
「今日のニュースです。今日、昇平くんは学校から帰る途中、お母さんと一緒にスーパーマーケットに回りました。そして、お母さんが書いたメモを見ながら、ひとりで買い物をすることができました・・・」
ことばや文章をできるだけ省略しないように気をつけながら、口調はゆっくり、はっきりと、ちょうど作文を朗読しているような調子で話してみた。
すると、普段と違う母の語り口に、昇平がゲームから顔を上げて耳をそばだてた。
「・・・昇平くんはとても偉かったな、とお母さんは思いました。」
とニュースを締めくくると、昇平はまじめな顔で「うん」とうなづいた。
自分は偉かったんだ、と改めて自分を確認したのか、またこの次もがんばるぞ、と心の中で決意したのか、そのあたりは分からなかったけれど。

昇平の反応が良かったので、また思いついて、こう持ちかけた。
「今度は昇平くんの番だよ。今日のニュースを教えて。学校でどんなことがあったの?」
すると、昇平、少しの間考え込んでから、おもむろに語り出した。
「今日の給食は○○と××と△△でした。ぼくはグリーンピースをたくさん食べました。」
グリーンピースは、昇平の苦手な食べ物のひとつ。それをたくさん食べたというのは、本当にすごい。「すごいねー! よくがんばったねー!」と思い切り誉めると、嬉しそうに、にやっと笑った昇平だった。

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それをきっかけにして、ほとんど毎日、母と昇平の間で「今日のニュース」を報告し合うようになった。
時間帯は一緒にお風呂に入るときのことが多い。昇平の気をそらすようなものがほとんどなくて、母との会話に集中できるから。学校から帰る車の中で話すこともある。

昇平のニュースは2つ。一つ目は必ずその日の給食の中身で、それをどんな風にがんばって食べたか、を教えてくれる。学校の給食は、苦手な食べ物の多い昇平にとって、一番の関心事のひとつになっているのだ。
うっかりすると、給食のことだけでニュースが終わってしまうので、もうひとつ、ニュースを教えてもらうことにしている。そうすると、その日学校で遊んだことや、勉強したこと、行事のことなどが話題に出てくる。
意識して報告するようになってから、昇平の話が分かりやすく、詳しくなった。独りよがりな話し方が少しずつ減ってきた、という感じだろうか。場面がよく分からなくてこちらが聞き返しても、ちゃんと説明してくれるようになった。
休み時間にクラスの友だちと中庭に氷探しに行ったこと、薄くてキラキラした氷が砂場にたくさん落ちていたこと、その氷を昇平が「食べた」ら、森村先生に「こらっ、今、何食べた!?」と注意されたこと・・・(笑)
その後、先生とどういうお約束をしたのか、も教えてくれた。

昇平の話を聞くときには、話してくれた内容に対して叱ったり怒ったりしないように気をつけている。
学校での出来事は、決して良いことばかりではない。いたずらしたこと、失敗したこと、困ったこと、上級生にからかわれたこと・・・親として心配になるような話題も出てくる。でも、それに対して親がマイナスの反応をしたら、せっかく語り出した学校での様子を、昇平が隠して話さなくなるような気がするのだ。
だから、そういうときには、先生やまわりの子どもたちがどういう対応をしたのかを、しっかり聞くようにしている。そうすると、昇平が困っていたときには通りかかった子どもたちが助けの手をさしのべてくれたり、からかった上級生を担当の先生が注意してくれていたことがわかる。
昇平はほとんど常に、先生や面倒見の良い友だちの目の届くところにいる。ちょっとしたトラブルや失敗はあっても、学校の対応に任せておいて大丈夫だろう、と母は見ている。

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それに対する母のニュースは、最初、昇平に気をつけて欲しい内容などを織り込んでいた。
「こうして欲しいなぁ、と思いました。」とか「これに気をつけると良いと思いました。」というような。
でも、やっぱりこれは聞いていて面白くないだろうなぁ、と思ったので、また、昇平ががんばったり偉かったりしたことを見つけて誉めるニュースに戻した。どんなに些細なことでも誉める対象にすれば、けっこう誉めるネタは見つかるのだ。
ただ、ここ2,3日、「今日のニュース」は昇平が報告するだけで、時間の都合で、母のほうのニュースは無しになっていた。
すると、昇平のニュースが短く簡単になってきたのだ。
母が誉めて認めてくれるから、それが嬉しくて話してくれていたんだな、と改めて思わされた。
今日は、必ず母の方からも昇平の良いところをニュースにして、話して聞かせようと思っている。
「今日のニュース」には、まだまだ続いて欲しいから・・・。

[04/02/20(金) 13:34] 日常

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