昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

授業参観〜作文に思う〜

水曜日は小学校の授業参観だった。
ゆめがおか学級では、この時期の参観は「6年生の卒業おめでとうパーティ」になる。
子どもたち手作りのクッキーにジュースにウーロン茶付き、ゲームあり、作文発表ありの楽しい参観になった。

今年、知的障害児学級である「ゆめがおか1」と情緒障害児学級である「ゆめがおか2」からは、合わせて5人の卒業生が出る。残る在校生は同じく5人。つまり、クラスの半分がこの3月で卒業していってしまうのだ。
6年生が卒業して中学生になっていくのは、とてもめでたいことだと思うのだけれど、来年のことを思うと、やはり淋しい気持ちになる。
子どもたち自身も同じ気持ちなのだろう。在校生が発表した作文は6年生ひとりずつに贈る言葉だったし、6年生が読み上げた作文はあとに残る下級生たちに向けたメッセージだった。

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作文発表のときで驚いたことがひとつ。
在校生が作文を発表する際、森村先生が「見ないでも言える人は作文を戻しましょう」と言ったところ、皆が次々と作文を返し始めたのだ。昇平も最後に作文を先生に渡していた。母は密かに『大丈夫かな〜?』と心配していた。
発表の直前には子どもたちから「見ないと分からなくなるかも」という不安の声が上がった。
すると、森村先生が「作文のことばそのままでなくていいんだよ。だいたいこんな意味、ということを言えば、それでいいんだよ」
これには、正直びっくり仰天した。『え〜っ、そんな曖昧な指示で大丈夫なの!?』と。
自分が何をするか、何を言ったらよいか、あらかじめ分かっていないと不安になることが多い子どもたちなのに。
どころが、子どもたちはそれで納得して、黒板の前に並び始めた。おいおい・・・? という感じで眺めていると、トップバッターの昇平が、6年生のひとりに向かって贈る言葉を言い始めた。
「○○君、いっしょに野球を遊んでくれてありがとう。優しくしてくれてありがとう。えーっと・・・」
案の定、途中で詰まった。でも、自分で一生懸命内容を思い出して、またことばをつないで、その6年生の良かったこと、一緒に過ごして楽しかったことなどを発表していった。
卒業生と在校生の人数はまったく同じだから、それぞれひとりずつ卒業生にむかって感謝のことばを言っていく。誰も作文を見ていない。ときどきことばに詰まることもあるけれど、昇平と同じように思い出して、また話し続ける。
ゆめがおかは複式学級だから、上級生下級生の交流はとても密で本当に仲が良い。どの発表も、気持ちのこもった良い内容だった。

参観後の懇談会で、森村先生から説明があった。
「今回の下級生の作文発表が、私のこの1年間めざしてきたことの集大成だったんです」と。
『6年生のことを作文に書こう』というテーマだけで、子どもたちに6年生ひとりひとりのことを思い描かせ、子どもたちの言ったことばを森村先生が拾い上げていったのだという。なるほど、どうりで6年生ひとりひとりについて、よく描写されていたわけだ。さらに、いろいろな経緯の末、在校生は作文を見ないで、自分のことばで作文の内容を語る、ということになったのだという。
つまり、作文の「大意」を頭に置いて発表していた、ということなのだが・・・

こういう発表のしかたは、実は、ゆめがおかの子どもたちには決して楽ではない。むしろ、作文を丸暗記した方が楽な子のほうが、圧倒的に多い。だから、私も『え〜っ』と驚いたのだ。
大意を理解し、それを自分なりのことばで語る。
見た目は地味かもしれないけれど、それは、とても大きな成果の発表だったと思う。だって、それができるようになったということは、長い時間をかけた地道な国語指導があったということだから。

本当にすっかり落ち着いて、毎日、自主的にドリルやプリントに黙々と取り組む子どもたち。
これがとてもADHDなどの発達障害を抱える子どもたちだとは信じられないような姿だ。
自分でできる、という自信。ぼくだって、私だってがんばるぞ、という意欲。そして、分からなくなったときに適切な形で先生に質問することもできるようになった。
本当に、特殊学級の教育はものすごい、とつくづく感じている。

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懇談会でも話題に上がったが、森村先生はこの学校に来てからもう7年目になっている。今度の春には異動があるかもしれないのだ。
もちろん、親たちからは先生を引き留めることばが出てきたけれど。

学校制度には親にもどうしようもない部分があるので、どんなにごねようとも、先生の異動を変えることはできないのだが、もしも・・・もしも私の夢がかなうのであれば・・・
森村先生にはこのまま小学校に残っていただいて、ゆめがおかの担任を別の先生に委ね、森村先生には特別支援教育コーディネーターになっていただけたら・・・
森村先生は、校内にいる、教育的支援が必要な子どもたちについてしっかり把握なさっているし、その担任や親たちの相談にものっていらっしゃるし、さらに、これから入学してくる子どもたちの中に支援が必要な子どもたちが混じっていることもご存じだから・・・
このままコーディネーターとして、そういう子どもたち全体をフォローしてもらえるようになったら、きっと、小学校としてもかなり理想的な特別支援教育ができるようになって、ゆめがおかだけでなく、もっともっと大勢の子どもたちが救われていくだろう、と・・・

ついついそんな夢を思い描いてしまうのだった。

【補足】
特別支援教育とは、LD(学習障害)・ADHD・高機能自閉症などの発達障害を抱える子どもたちに対して、文部科学省が打ちだしている対応。
発達障害児は普通学級に全体の6%くらい在籍していると言われており、その子どもたちに対する対応は「緊急かつ重要な課題」とされている。
平成16年度からは、学校の中に特別支援教育コーディネーターが置かれ、子どもたちのため、学校の先生方と一緒に具体的な支援について考えたり、親と学校、あるいは専門機関とのパイプ役をつとめることになっている。

[04/02/26(木) 01:16] 学校

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