昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
子どもたちの社会
先週は何かと忙しくて日記の更新が思うようにできなかった。書きたいことはいろいろとあったのだけれど。
今日は、その中でも、1週間ほど前にあったできごとのことを・・・。
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私は週に2回、近所の学習塾に行っている。
その日も教室で子どもたちの勉強の手伝いをしていたのだが、昇平と同じ2年生のA君が、とても機嫌の悪い様子で教室に入ってきた。
いつもはニコニコと陽気な子なので、気になって聞いてみた。
「どうしたの? 何かあったの?」
彼はちょっと口ごもってから、口をとがらせながら答えた。
「B子ちゃんたちに置いていかれた。一緒に帰ろうって約束してたのに」
B子ちゃんというのは、やはり教室に来ているクラスメートの女の子。A君とは割と仲が良くて、よく一緒になって教室に来るのだが・・・。
そこで、今度はBちゃんのところに行って、こっそり訳を聞いてみた。
B子ちゃんはA君よりもっと口ごもってから、思い切ったように答えた。
「だって、A君、C君の体操着袋を引っ張ったりして、ひどいから、みんなで『あんなA君とは帰らないことにしよう』って言ったんだよ」
ははぁ、なるほどねぇ。
A君、陽気で元気なのは良いけれど、ちょっと元気が有り余っていて、一言余計なことを言うことも多い。
原因が何かまでは分からないけれど、同じクラスの男の子とケンカのようになって、それを見たB子ちゃんたちのグループから、一時的に仲間はずれにされてしまったらしい。
いかにも、という感じの出来事だったけれど、問題がひとつ。
A君は、そういう「行動だけで示された暗黙のメッセージ」には、なかなか気がつけない子だということ。だから、相手の気持ちが良く分からないまま傷つけるようなことを言ってしまい、相手を怒らせてしまう、ということが時々ある。
そこで、B子ちゃんに向かって、そっとこう言った。
「あなたたちの気持ちは良く分かるよ。やっていることも、もしかしたら、正しいのかもしれない。でもね、A君にはどうして置いていかれちゃったのか分からないみたいだよ。それじゃ、A君も自分の何が悪かったのかわからないよね。置いていく前に『そんなことをするなら一緒に帰らないよ』とか、A君に言ってあげてもらえるかなぁ。そうしないと、A君はいつまでたっても、自分のどこが悪いか分からなくて、また同じことをしてしまうかもしれないでしょ?」
B子ちゃんはちょっとの間考える顔をして、「わかった」と言ってうなづいた。
あとでA君にその話を教えた。
すると、A君は憤然とした顔で言った。
「C君が僕に怒ってそういうことするなら分かるよ。だけど、B子ちゃんたちにそんなふうにされる筋合いはない!」
・・・2年生にしては言語能力の高い子なのだ。ことばは達者なのに、他人の気持ちの動きを考える、という面にはまだちょっと幼いところがある。だから、こんなトラブルが起こるのだけれど。
「それはまぁ、そうなんだけどね」
と言って、あとはそのまま彼の様子を見守ってみた。
最初は怒った顔のままだったA君だが、時間がたつにつれて落ち着いた表情になってきて、隣同士の席になったC君(この子も実は教室に来ている勉強仲間)とも普通に接していたので、あとは特に何も言わなかった。
次の教室日には、いつもと同じように元気な顔でやってきた子どもたちだった。
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こういう小さなトラブルは、子ども社会の中ではひんぱんに起こることなのだろうと思う。
子どもたちのつきあいというのは大人が思っている以上に社会的で、本人たちが未熟な分、逆に厳しい面も多いな、と感じている。子どもたちは必死で彼らなりの社交術を展開しているのだ。
今回の子どもたちは、もし、昇平が地元の小学校を選べば同級生になったはずの子たち。でも、昇平には、こんなレベルの高い社会性は、要求することはおろか、理解することさえまだ不可能だ。
将来は、こういう複雑で微妙な人の心理も理解できるようになるかもしれない。でも、今は、昇平の発達段階に合わせた人との関わりを学ぶことが、なにより大事だと思う。
護られながら、教えられながら、少しずつ少しずつ社会というものを理解して、その中での生き方を身につけていくのが一番正しい道なのだろう、と思う。・・・というか、そういうやり方しかないような気がする・・・。
特殊学級では、学業だけでなく、そういった人との関わり方についてのきめ細かい指導もある。(ただし、特定教科だけ特殊学級に通ってくる通級制度では、このあたりの指導は思うようにできないかも、という気はするけれど。)
昇平はゆめがおかを選んでやっぱり正解だったんだなぁ、と改めて思ったひとときだった。
[04/03/08(月) 05:40] 日常