昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
かんしゃくと反省
先週の土曜日、私が所属している親の会の総会があった。
私も昇平を連れて参加した。
総会ともなると、話し合う内容は多い。
昇平は部屋の片隅の机でお絵描きなどして過ごしていたのだが、そのうち、他の会員の子どもさんが外遊びから戻ってきたら、がぜん嬉しそうな様子になった。
実はその子とは先日、別の集まりで顔を合わせている。その子が持っていたSDガンダムフィギアで遊んだのが楽しかったらしく、その後、昇平もガチャガチャでガンダムフィギアを集め始めるのにはまっている。この時も、2人揃ってフィギアを手に、叫んだり走り回ったりと、楽しそうに遊んでいた。
なんかいいなぁ、とすごく思った。
昇平も、こんなふうに子ども同士で遊ぶのが楽しくなってきたんだよね。
☆★☆★☆☆★☆
総会終了後、その子はお母さんと帰っていった。
私は今回から役員を仰せつかったので、総会後も残って話し合いを続けていた。
そのうち、昇平がそばに来て言った。
「ぼく、上で遊んでくるね」
上の階には子どもが遊べるホールがあり、この日はちょうど、ボランティアによるおもちゃの広場も開かれていたのだ。
昇平はこの日、全体的に落ち着いて過ごしていたので、大丈夫だろうと思って、そのまま送り出してやった。
そのまま話し合いを続けること30分あまり・・・いや、1時間近くたっていただろうか。
昇平があわてた様子で戻ってきて、母に報告した。
「ぼく、指輪ふんづけて壊しちゃった。ごめんなさい」
えっ? と思って、話を詳しく聞いてみると、どうやらおもちゃの広場でおもしろくないことがあって、かんしゃくを起こして指輪を踏みつけてしまったらしい。
それ以上状況は詳しく分からなかったが、とにかく「謝らなくちゃいけないから、お母さんと一緒にもう一度行こう」と言って、昇平と上の階に行ってみた。
その場にいたボランティアさん2人に平謝り。昇平も、何度も何度も「ごめんなさい」を言っていた。
ボラさんに話を聞いてみると、広場に昇平のお目当てのおもちゃがなかったことにかんしゃくを起こして(おもちゃの貸し出しもしているので、誰かが借りていったらしい)、その場にあった指輪のおもちゃを踏んづけて壊したのだという。
また、いくら制止しても、おもちゃをしまっておく引き出し(当日出さないおもちゃもしまってある)を開けようとしていたらしい。
そうか〜・・・。
SSTの最後のレポートにも書かれたこと。「自分の要求に固執してしまって、活動の妨げになることがあります。感情のコントロールがもう少しできるようになると、より生活しやすくなると思います。」
まさしく、そのとおりのことが起こったわけだ。
☆★☆★☆☆★☆
もともと、昇平は自分の要求には固執するタイプだったが、ある程度ことばが通じるようになってからは、そのトラブルもだいぶ減ってきていた。
ところが、ここに来てまたトラブルが増加。
昇平が成長してきたために、自己主張が強くなって自分の要求を通したがるようになったのだろう、とは児童館の先生の話だが、かんしゃくを起こすことも増えたし、他の子に乱暴なことばや怖いことばを言うことも増えてきた。
児童館では実際に乱暴をすることはまずないのだが、おもちゃの広場では、小さな子が遊んでいるボールプールに突撃しようともしたらしい。
自分の要求を通すために、相手にとって一番刺激的なことばや行動を選んでいるのが見える。
そんなことをすれば、後々もっと悪い結果になるのだけれど、それを言ったりやったりしないではいられないのだろう。
衝動性・・・自己中心性・・・先が読めない、自制心が弱い。
最近落ち着いてきたように見えていたけれど、やっぱり本質はADHDだったんだねぇ・・・。
☆★☆★☆☆★☆
幸い理解のあるボランティアさんたちで、昇平がかんしゃくを起こしたことも、母が付き添わないでおもちゃ広場に昇平を行かせてしまったことも許してもらえたけれど(お一人は障害児の施設のお手伝いもしている方らしい)、どんなに落ち着いたように見えても、やっぱり目を離してはいけなかったんだ、と改めて反省した。
そんなに簡単に自制心が育つなら、昇平だってこんなに苦労はしないんだものね・・・。
その場を去ってから、昇平と2人きりで話をした。
「これからどうしたらいいかな?」と尋ねると、「もう絶対に怒りません。約束します」と昇平。
でも、それがその場ではできなくなるから、自分でも困ってしまうんだよね。
「怒りんぼしたい気持ちになっちゃうのは、しかたないことだよね。ただ、そのとき、他の人に八つ当たりしたり怖いことを言ったりしないで、我慢できるようになるといいね。・・・だんだん、そうなっていけるといいね」
「うん」と昇平は神妙にうなずいた。
その後、帰りの車の中で、昇平が「ぼく、今夜のご飯作りをいっぱい手伝うよ!」と突然言い出し、本当に夕食の支度をたくさん手伝ってくれた。
夜、一緒にお風呂に入ろうと廊下を並んで歩いていたら、突然昇平が「ごめんね」と言った。「え、なにがごめんねなの?」と聞き返すと、「ううん、なんでもないよ」と昇平。
昇平なりに、自分のしたことをとても反省しているんだな・・・と思った。
そうだよね。きみは本当は「お利口さんで優しい子どもになりたい」と心から思っているのだもの。
だけど、自分が持つADHDの特性に振り回されてしまって、自分でも不本意な行動をとってしまう。
きっと悲しいよね。くやしいよね。
昇平がその小さな頭の中で何を考えているんだろう、と思うと、なんだか切ないような気持ちになった。
☆★☆★☆☆★☆
その後、病院の診察日にその話をしたところ、主治医からこう言われた。
「今はそんなふうに自分を押さえられないときがあってもしかたないでしょう。その後、きちんと後始末をつけるられるようにすることが大切です。そうするうちに、だんだん、我慢ができるようになってきますからね」
後始末・・・悪いことをしたと反省して謝ること。
それは、昇平もちゃんとできたね。ボラさんたちに謝ったし、母にも、自分が悪いことをしてしまったと報告に来られた。
母と一緒にもう一度しっかり謝ることもできた。
そうするうちに、きっと我慢のできる大人になっていけるね。
きっと、いつか・・・。
きっと、必ず。
お母さんは、信じているからね。
[04/04/20(火) 14:09] 日常