森村先生の教材箱〜顔写真カードとケース〜
上の写真は、昇平が今ゆめがおかで使っている「顔写真カード」と、それを覚えるためのケース。
どちらも森村先生の手作り教材だ。
そもそもは、昇平が人の顔をなかなか覚えられなくて、そのために人との関わりがなかなか発展しないことから始まった。
森村先生は、今年の昇平の目標の一つに「1人でも多く協力学級のお友だちの顔と名前を覚えること」を決め、この顔写真カードとケースを作って下さったのだ。
カードは、昇平の近くに位置したり、運動会で一緒のグループになったりする子の顔を、森村先生がインスタントカメラの「チェ○」で撮ったもので、パンチしてリングに束ねてある。写真の下にはその子の名前も書いてある。TEACCH(ティーチ)をご存じだったり、ドラマ『光とともに・・・』をご覧になっている方は、「ああ、あれね」とすぐおわかりになることだろう。
ケースの方は、7cm×8cmの工作用紙を2枚重ねて三方を貼り合わせ、写真の顔がでる位置に四角い窓を開けてある。その下には蓋が付いた細長い窓があって、名前を隠したり見たりすることができるようになっている。
クラスのお友だちの写真をこのケースに入れ、名前を隠した状態で顔だけを見せて「これはだ〜れだ?」とやって、ゲーム感覚で顔と名前を覚えていくのだ。
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何を隠そう、実は、この私も人の顔や名前を覚えるのは苦手。
昇平ほどではないけれど、なかなか人が覚えられなくて、しかも、覚えてもとっさに勘違いすることも多くて、今までにずいぶん恥ずかしい思いや失敗をしてきている。
この顔写真カードを初めて見せてもらったとき、「ああ、私も子どもの頃にこういうのが欲しかったですー!」と、思わず森村先生に言ってしまった。
こういうものでクラスメートの顔を覚えることができたら、あんなこともこんなことも、あんなトラブルもきっと避けられたのに・・・
などと考えながら、試しに1人の子の顔写真をケースに入れてみて、びっくり!
顔がものすごく鮮明に見える!!
同じ写真なのに、しかも、チェ○だから小さい写真なのに、写真全体で見たときより、顔の部分だけ窓から出して見てみたときの方が、顔の輪郭、目鼻立ちと言った顔の特徴が、ものすごくクリアに見えるようになったのだ。ちょうど、視力の悪い人間が、眼鏡をかけたとたん、急にくっきりと見ることができるようになったような感じ。
他の写真でも試してみたが、やはり同様だった。
それでは、と、後で文字だけを同じように狭い窓から見てみたのだけれど、文字の方は別に変化を感じなかった。絵も変化なし。ところが、実物や写真のようなものだと、狭い範囲で見た方が急にクリアに見えるようになる。
ふ〜む・・・・・・。
どうやら、私も一種の視覚的な混乱を起こしやすい人間だったようだ。背景の中から肝心の映像(この場合は顔)を抽出して認識するのが苦手で、それで、人の顔がなかなか覚えられなかったらしい。
私がこういう特徴を持っていたからといって、昇平もそれと同じとは限らないのだけれど、案外、昇平もこれに近い状態なのじゃないかな、などと考えてしまった。
昇平が人の顔を見忘れたり、見間違えたりするときの様子が、私のそれとかなりよく似ているから・・・。
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さて、この教材のおかげで、昇平は運動会の団体競技を一緒にする子たちの顔をすぐに覚えてしまった。
(森村先生いわく、男の子より女の子の顔の方が早く覚えるそうな。やっぱり昇平も男・・・???)
実際の競技のときには、昇平が安心しきった表情で精一杯がんばっていたのが印象的だった。
その後も、徐々にではあるけれど、顔を覚えたお友だちのカードが増え続けている。
最近、ふと気がつくと、昇平が相手の顔を確かめる場面が増えてきた。
遠目に見かけたお友だちが誰だか分からなかったのだろう。「おや?」という顔をして、わざわざ近くまで行って、顔をのぞき込んで確かめていた。
つい先日も、後ろ姿だけで隣のクラスのお友だちだと早とちりして、別な子に「Fくーん」と声をかけてしまったが、振り向いたその子の顔をのぞき込むように見て、「あ、まちがえちゃった」と自分で気がついていた。
その人が誰かを確かめるためには顔をしっかり見ればいい。
当たり前のようなことだけれど、昇平は、森村先生の教材のおかげで、ようやくそのスキルを身につけてきたらしい。
お友だちの顔と名前を覚えることで、少しずつ昇平の人間関係が広がっていくといいな・・・と母は願っている。
[04/06/02(水) 14:35] 療育 学校