昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

森村先生の教材箱・2〜付箋を使った作文指導〜


上の写真は、5月末にあった運動会の直後、森村先生が学級の子どもたちに行った作文指導の成果。
ゆめがおかの子どもたちは作文が得意ではない。その子どもたちに、伝えたいことや自分の思いを文章にして書く力を身につけさせようと、ステップを踏んで指導を続けてきたのだ。

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最初は、先生が子ども1人1人の話をよく聞くところから始まっていた。
焦って早口になってしまったり、発音が不明瞭だったり、言うべき肝心なことを言わないで関係ない話に飛んでしまったり・・・この子たちの話を聞く、というのは、考えている以上に大変なことなのだが、先生は1人1人を相手に、目を見ながらしっかり話を聞き、子どもたちにはきちんと最後まで話すことを指導していた。

次のステップでは、作文や物語の感想文を書くときに、先生の前で書きたい内容を口頭で言い、先生にメモにとってもらって、それをもとに文章を書いていた。自分で文章が考えられないときには、先生に文章化を手伝ってもらうこともあった。それに慣れてくると、メモをとってもらっただけで「ぼく、あとは自分でできるよ」と言って、自力で文章を書くようになってきた。

その次のステップが、今回の付箋を使った作文指導。
まず、黒板に子どもたちが運動会で出場した種目名や、共通の出来事(「入場行進」とか「おうちの人とおべんとう」とか)を書き出して、思い出す手がかりにする。子どもたちは、自分が書きたい内容を思いつくまま付箋に書き出し、それを紙に貼り付けていく。1枚の紙にはひとつの出来事。それを何枚書いても良い。
運動会は子どもたちにとって特別大きなイベントだった上に、まだ記憶に新しかったので、どの子も付箋に8枚以上も書いて、森村先生をびっくりさせていた。
その後、先生の前で作文としての構成を考えながら、「じゅんばんにならべかえてみよう」という紙に付箋を貼り直していく。
ことばの足りない付箋に関しては、森村先生が子どもと話ながら、内容をふくらませていく。
すると、先生に頼らず、「ボク、こんなふうに書こう」と言って、順番を自分で考えて並べ直した子も出てきたという。
森村先生は、作文としての流れを意識できるように、番号と矢印を付箋の間に書き込んでいき、つなぎのことばだけを考えて、文章としてまとめやすいように手伝った。
使われていることばや作文の題名も一緒に考えたが、子どもが「これがいい!」と言うものは、あえてそのままにしたのだという。

というわけで、昇平が決めた題名は「むねんだった運動会」。
なにがそんなに「むねん」だったのか、完成した作文を読んでもらおう。

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     『むねんだった運動会』        昇平

 朝、ぼくは6時30分におきました。
 入場行進がはじまるときに、「ドン!!!」っていう花火の音だったので、ちょっとうるさかったです。
 さいしょのしゅもくの「いそげへんしーん」では、みのり先生にあくしゅしてゴールするカードをひろいました。3位でした。
 120m走は、ころんじゃったけれど、前を見て全速力で走りました。
 おうえんのときは、5年生が白いはたをふっていましたので、まねをしました。
 お昼休みにおべんとうをたべたら、きゅうにねむくなって、すこしねてしまいました。
 三年生さいごのしゅもくのちびっこタイフーンでは、3人で走りまくり、はんていは赤白ひきわけでした。
 へい会式でせいせき発表がありました。ゆうしょうは赤がゆうしょうだったので、白はすこしくやしかったです。
 でも、白がゆうしょうしなかったのはざんねんだけど、楽しかったです。
 かえったら、プラモデルをくみたてて、かんせいさせました。

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原稿用紙2枚半。昇平がこんなに長い作文を書いたのは、生まれて初めてのことだった。
内容もとても詳しい。そのときの気持ちや、どんなふうにがんばったかもちゃんと書けている。
もちろん、文章としておかしな部分や、ことば遣いが変な部分はあるのだが、大人の手が入っていない分、妙に味のある文章になっているような気もする。(と、これは親バカですが。笑)

感心したのは、段落ごとに1字下げがちゃんとできていたこと。それから、作文に漢字がたくさん使われていて、文字もとても丁寧だったこと。
さぞ、しっかり指導されたんだろうな、と思って森村先生に聞いたところ
「改行は、付箋が変わるときに、次の行にして1マスあけようね、とだけ言いました。あとは、特に指導はしていません。一度に2人ずつくらいで清書していったので、子どもひとりひとりの脇に自分と稲月先生がついて、脇から見ていただけです。」
・・・す、すごい!!!
プロの指導というのはこういうものか、と改めて思い知らされた気がした。

文章を書いていくとき、段落を考えるというのは、実は大人でも難しい。
書いている内容が頭から次々に浮かんでくると、ついついそのまま書き続けてしまうから、どこで区切ったら良いのだろう、と後から頭を悩ませてしまうこともある。
ところが、付箋を使うと、その見極めはいたって簡単。
「付箋が変わるときに次の行に移って、1マス下げる」
これだけのルールになるから、子どもたちも迷うことなく改行して段落が作れる。
ここで紹介はできないが、他の子たちの作文も、本当に上手に段落を作って書かれていたし、その分、とても読みやすかった。もちろん、内容的にも、今までで一番読み応えのあるものになっていた。

作文というのは、ただ原稿用紙を前にすれば書けるものではない。
何をどう書くかと言うことに加えて、「文字として書く」という運動的な活動や、「最後まで書き続ける」という集中力・持続力の問題も絡んでくる。
ところが、付箋を使えば、作文の構成はもちろん、今自分がどこまで書いたのか、あとどのくらい書けばいいのかの見通しも立てられるようになる。見通しが立てば、がんばって最後まで書けるようにもなる。
そこに、すぐ脇に先生がついて見ていてくれたのだから、集中力はばっちりだったのだろう。不思議なことなのだけれど、この子たちは、ただそばで見ていてもらうだけでも、課題に集中して取り組めるようになるのだ。
本当にすばらしい授業だなぁ・・・と、つくづく感心してしまった。

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付箋を使った作文指導。
これからますます発展していきそうで、私としても、ものすごく楽しみに思っている。

[04/06/10(木) 11:12] 学校

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