昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

踏まれたらどうなるか

昨夜のこと。

日中からなんとなく集中に欠けていた昇平が、夜になってなおさら落ち着きなくなってしまった。
原因はわからないけれど、こういうことは時々起こる。
機嫌は悪くない。むしろ上機嫌で、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、片足立ちになったりしてふざけている。
そばの畳の上では兄が寝転がって本を読んでいた。
危なっかしいな、と思って声をかけた。
「昇平、そばにお兄ちゃんがいるよ。踏んじゃうから片足はやめなさい」
すると昇平、「大丈夫さ!」と言うように、わざわざ兄の上を片足でぴょん! と飛び越して見せた。
あのな〜・・・。

それから1分後。突然兄が「痛いっ!!!」と叫んで跳ね起きた。
案の定、昇平に踏まれたのだ。
痛いのと、突然のことで驚いたのとで、兄は怒って本を床に叩きつけ、足音荒く部屋を出て行ってしまった。
昇平、びっくりして怯えて、半ばパニック状態。
「お兄ちゃん、怒ってる? お兄ちゃん、どうしたの? お兄ちゃんをこらしめて!」
おい。

そこで、順序よく、この出来事の道筋をたどって見せた。
「どうしてお兄ちゃんが怒ったか分かる?」
「ぼくがお兄ちゃんを踏んじゃったから」
「そうだね。でも、どうして踏まれたら怒ったか、分かる? 踏まれたら、どうなると思う?」
「怒る」
「うん、怒ったけどね。・・・踏まれたら、どうなるかな?」
「泣く」
どうやら、一番肝心のことに気がつかずにいるようだったので、こちらから正解を言った。
「たとえ泣かなくても、踏まれたら、痛いでしょう」

とたんに、昇平、はっとした様子になって
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
と言い出した。
確認するように、私も言った。
「お兄ちゃんはね、踏まれて痛かったから、それで怒ったんだよ。お兄ちゃんに『ごめんなさい』を言いに行こうね」

怒っているときの兄に近づくのは、昇平にはなによりも恐怖なのだけれど、さすがにこの時は自分が悪かったと気がついたので、謝りに行かなくちゃいけない、と自分でも思ったらしい。
「お母さん、いっしょに謝って」
と母に応援を頼んで、階下の兄の部屋の前まで行き、
「お兄ちゃん、ごめんね」
と言った。
とたんに、兄の怒声が飛んできたので、昇平はびくっとしたけれど、それでも必死で言い続けた。
「お兄ちゃん、ごめんね。踏んじゃって、ごめんね・・・」

まあ、兄もなんとか許してくれて、一件落着となったのだけれど。

「踏まれたら痛い」
という当然の推論が昇平にはできていなかった、という事実には、ちょっと考えさせられてしまった。
最近、いろいろと分かることが増えてきていただけに、母もちょっと油断していたのかもしれない。「お兄ちゃんを踏んじゃうよ」と言っただけで、踏んでしまった後のことまで想像できていると思ってしまったのだから。
とはいえ、こういう体験を通して学ぶことも大事だと思うし、本人なりにきっちり落とし前もつけられたから、良い経験をしたと言えるのかも・・・。

成長に伴って、昔より落ち着いてきた部分と、逆に自分が押さえられない部分とが出てきた昇平。そこに、相変わらず分かっていないことと、だんだん分かってきたことが入りまじっていて、最近の昇平は、本当にアンバランスなモザイク模様。
これが、ある安定した状態になるまでには、まだまだ時間がかかりそうだな〜・・・と思いながら眺めている。
まったく、子育ては持久戦だ。

[04/06/15(火) 09:11] 日常

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