昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
クレーム
昨日の午後。
車に乗って外出しようとして、昇平の口の周りが汚れているのに気がついた。昼食後に歯みがきをしたのだが、その歯磨き粉や食後の薬が付いていたのだ。
「昇平くん、口の周りが汚れているよ。そこの水道で洗いなさい」
と言って、ハンカチを持ってくるのを忘れたのに気がついた。
おっと、どうしよう。家の中に取りに戻ろうか?
いや待て、今朝洗濯したハンカチがもう乾いている頃だ。よし。
瞬時にそれだけのことを考えると、
「ちょっとハンカチ取ってくるね」
と言い残して、私は家の陰の物乾し場に走っていった。
車に戻ってくると、昇平は口を洗わないで、プンプン怒りながら車の座席に座っていた。
「どうしたらいいか、何も言わないんだもん」
と文句を言ってくる。
そうかー。昇平は外の水道で顔を洗う、なんてこと、ほとんどやったことがなかったんだっけ。
でも、さっきは途中まで水道に行きかけていた。
「ここで洗えばいいの?」と母に聞こうとしたのに、母がハンカチを取りに走っていってしまったので、どうしていいのか分からなくなって車に戻ってしまったんだわ。
ごめんごめん。お母さんが急ぎすぎたわ。
「ハンカチを取ってくる」と言ったのも、よく聞き取れなかったんだね。急ぐととても早口になってしまうのが、母の悪い癖だから。
「ここの水道で顔を洗ってね」
と水道の蛇口をひねってやると、昇平は素直に顔を洗った。
ハンカチを手渡すと、それで顔を拭いた。
その様子を見ながら、やっぱり何か変わってきているようだな、と思った。
今までなら、こういうときは、ただただ困惑するだけだったのに、「しっかり教えてくれなかった」とクレームが言えるようになってきたのだから。
夏休みも残り十日あまりになった。
二学期が始まったら、昇平はいちだんと違った姿を見せてくるんじゃないだろうか。
母はそんな予感がしてならない。
[04/08/13(金) 08:19] 日常