昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

「見通し」の重要性

保育園時代の連絡帳を読み返して、改めて発見した特徴の1つがこれ。
「昇平は、初めての体験のことには、見通しが立たないのでパニックを起こしやすい。でも、一度体験してどういうものかを理解すると、その後は急激に慣れて平気になり、がんばることができる。」
きっと、この日記を長く読んでくださっている皆様なら、感じてくださっていたことだとは思うけれど・・・。

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思い返してみれば、昇平の行動はすべてこの連続だった。
保育園に入ってすぐには、パニックの連続。副担任の保育士に泣いてしがみついてばかりだったのに、2週間もたたないうちに、園の生活に慣れて自分から行動を始めていた。
初めて体験するエアロビクスには拒否的態度。ところが、回数を重ねる毎に、急激に慣れて参加を始める。
保育園に入る前に、子育て支援センターで体験したクリスマス会もそうだった。初めてのときには、怖くて怖くて、母の膝から顔を上げられないくらいだったのに、次に別の場所で同じプログラム(でも、一部省略はされていた)のクリスマス会に出たときには、とても楽しそうに参加していた。あまりの違いぶりに、母はびっくり仰天してしまったのだけれど、あれは、一度クリスマス会を体験して、こういうものだという見通しが立っていたので、平気になっていたんだね。

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ところが、初体験なのにパニックを起こさなかったこともある。
例えば、保育園でのお泊まり保育。
このときは、スケジュールがあらかじめ知らされていたので、それに合わせて家の中で「お泊まり保育ごっこ」をしたのが効果的だったらしい。
お集まりの後、みんなで作るカレーの材料を買いに行くよ。カレーを作るよ。メニューはこれとこれとこれで・・・。次はこれをするよ。夜になったからみんなと寝るよ。お母さんは一緒に寝ないけど、大丈夫?
紙に食材や料理の絵を描いて、切ったり貼ったり。布団を掛けて寝る真似をしたり。昇平のリクエストもあって、丁寧にお泊まり保育を予行練習する遊びになったのだが、本人の中にはお泊まり保育のイメージがばっちりできあがったようで、当日は、保育士よりもスケジュールをよく知っているくらいだった、と感心されたほど。心配するようなことはまったくなく、スムーズに一晩、園にお泊まりしてきた。

小学校に入学したときも、パニックはほとんど起こさなかった。
これは、森村先生の指導のおかげ。
教室にはいると、黒板の片隅に、必ずその日の時間割と予定が書かれている。子どもたちは、そこを見てその日の自分のスケジュールを知ることができる。
なにかに取り組むときには、必ず森村先生が丁寧に内容を教えてから「さあ、それじゃやってみようね」と言ってくださる。取り組むべき内容は、短い言葉で、はっきりと分かりやすく伝えられるので、聞き取る力が弱い昇平にも、しっかり伝わっていく。
同じクラスの上級生たちも、昇平が戸惑っていると、「こうするんだよ」とアドバイスしてくれた。自分たちが通ってきた道だけに、アドバイスも的確だった。これは複式学級ならではの良いところ。

つまり、初めて体験することでも、事前に情報を知らされて、何をどうすれば良いかのイメージがしっかりできていれば、(多少緊張や不安は感じても)パニックを起こすことなく、スムーズに取り組むことができる、ということ。
これを「見通しが立つ」と言うのだが、昇平には、この見通しを立てさせてやることが、すべてにおいて、とても大事なんだな、と、改めて感じてしまった。

そうそう。つい先日の「スター・ウォーズ展」だってそうだった。
戦闘機の模型がある、と聞いて行く気になった昇平だったけれど、行きの車の中では、新聞に折り込まれてきた展示会の特集ページを何度も開き、展示物の写真を眺めては、展示会の様子をイメージしていたっけ。
だから、会場では、好きな展示物はじっくり眺め、苦手な物の前は急いで駆け抜けて先で親を待つ、なんて行動を取ることができたんだ。
そうだったのか〜・・・・・・・・・。

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実は、今日の午前中にあった学年集会で、昇平が「初体験のパニック」を起こした。親子ドッジボール大会という内容だったのだが。
最初、昇平は楽しそうに体育館に向かっていた。ドッジボールは学校で何度もやっているから、全然不安がない。母と一緒にできるので、うきうき、という様子だった。
ところが、前に貼ってあった勝ち抜きトーナメント表を見たとたん、急に拒否反応を示し始めた。どうやら『こんなドッジボールのやり方は知らない! ぼくにはできない!』と思って、急激に不安になってしまったらしい。「ぼく、やりたくない。ドッジボールできない」と言いだした。
大丈夫、できるよ。やり方は同じなんだよ、と教えても、不安の方が先に立って軽いパニック状態になっているので、本人の頭には入っていかない。
開会式が始まるときにもぶつぶつ言って怒り続けていたので、ハンカチを使って手遊びをさせてみた。最初は怒っていた彼も、遊びに夢中になるうちに気持ちが切り替わったようで、母の手からさっとハンカチを抜き取って得意そうな顔になった頃には、すっかりパニックもおさまっていた。
その後、若干不安そうではあったものの、開会式には落ち着いて参加し、親子で組んでする体操には、きゃあきゃあと声を上げて喜んでいた。
実際に試合が始まってしまえば、なんということもなく、普通に参加していた昇平だった。

こんなこともあったものだから、彼にとっての見通しの大切さを改めて痛感している。
できるだけ、事前に見通しが立てられるように。
できるだけ不安を減らす方向で。初めてのことでも、安心して取り組めるように・・・。

だけど、それでもやっぱり見通しの立てようがない初体験というのは、出てきてしまう。
そのときには、パニックを起こしても、実際に体験してもらうしかない。
二度目、三度目になって、見通しが立つようになれば、きっとうまくやれるようになるから。

がんばれ、昇平!

[04/09/19(日) 01:37] 療育 学校 日常

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