昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
お父さん、大好き!
昇平が『かいけつゾロリ』のビデオを見ながら、急に怒り出した。
「ダンクもみんなも、お母さんに会えなくなるって言っている。どうしてお母さんだけ? お父さんはどうしたんだ?」
ダンクという名前のスキーの大ジャンプ選手が、金メダルを取らないと国に帰れない、お母さんに会えなくなる、と悩んでいる場面だった。「お母さん」ということばに弱いゾロリが、それを聞いて一肌脱ぐ、というストーリーなのだが、昇平はそれを見て、会えなくなって困るのがお母さんだけなんて変だ、お父さんに会えないのはかまわないのか、と考えたらしい。
「ダンクにはお父さんがいないのかもしれないよ。病気で死んじゃったとか」と言ってみると、「そんなことはないよ!」とむきになって否定する。どうやら、ビデオの中のダンクに自分自身を重ね合わせているらしい。アニメの中の登場人物でも、お父さんがいない状況にはなってほしくない様子。
そこで、こう聞いてみた。
「昇平くんは、お母さんに会えなくなるのと、お父さんに会えなくなるのと、どっちが嫌?」
もし、どちらかと言われたらお母さんのほう、とでも答えてもらえたら、ダンクも同じだから、お母さんのほうだけ言っているんだろうね、お父さんに会えないのだって本当は嫌なんだと思うよ、と説明しようと考えていた。
ところが、昇平は大まじめな顔で即座に答えた。
「どっちに会えないのもいやだ!」
う〜ん、そうか〜。
いや、まったくその通りだね。
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旦那は最近、本当に仕事が忙しい。1ヵ月ぶっ続けで出勤(出勤時間が短い日もあるが)なんて月もざらにある。朝早く出かけていって、夜遅く帰ってくる日も多い。昇平が寝る寸前に帰ってきて、やっと「おやすみ」のあいさつができれば、ましなほうだ。うちの旦那だけではないのだろうけれど、本当に厳しい状況にあると思う。
昔は、こんなふうに顔を合わせない日が続くと、昇平は父に対して反応が薄くなっていった。久しぶりに早く帰ってきても、目も合わせず「ただいま」にもろくに「おかえり」も言わず、そばに寄ることもなく・・・。そんな状況に危機感を感じて、「忙しいのは分かるけど、何とかもう少し早く帰ってきて、子どもとふれあう時間を増やして!」と私から頼んだこともあった。
あの頃と比べると今はもっと状況が厳しくて、一緒に遊びに行くことさえままならない日々なのだけれど、それでも昇平はお父さんを絶対にいてほしい人だと思っているんだなぁ・・・と改めて感心してしまった。
本当に、こんなに忙しいお父さんなのに、昇平はお父さんが大好きなのだ。いや、昇平だけでなく、お兄ちゃんもお父さんが大好きだ。お兄ちゃんは、お父さんが忙しすぎることを、折に触れて心配してくれている。ふれあう時間が短くても、お父さんが子どもたちを心から大切に思ってくれていることを、その家族のために毎日一生懸命働いてくれていることを、その背中から感じ取っているのかもしれない。
昨日は、旦那が早く帰ってこられた。昇平はお年玉の入った財布を握ってお父さんと一緒に買い物に出かけ、ゲーセンで遊び、おやつを買って、にこにこ顔で帰ってきた。
寝る間際にお父さんが帰ってくると、どんなに眠くても、布団から起き出して「お父さん、おかえり!」(たまに「お父さん、ただいま」になることもあるけど)と言いに行く。
昇平にとっては、世界にたった一人の、大事な「ぼくのお父さん」なんだよね。お父さんに会えなくなるのは、お母さんに会えなくなるのと同じくらい嫌なことだから、だから、アニメを見ていても「お父さんのことはどうしたんだ?」と憤慨するんだよね。
「お父さん、だーい好き!」
昇平のそんな声が聞こえてきたような気がして、ちょっぴり感動してしまった母だった。
[05/01/09(日) 05:52] 日常