昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

パソコン頭・1

この週末、昇平はパソコン三昧の日々だった。
パソコン専用の時計(囲碁で使う対局時計。上のスイッチを押している間だけ時計が進むので、累計の時間が分かる。)を見ると、一応決められた時間は守っているようなのだが、それにしては何だか様子がおかしい。頭の中が、ネットで見た2チャンネル系フラッシュアニメでいっぱいになっているのが分かるのだ。
2チャンネル系アニメが悪い、と言っているわけではない。時折私も見せてもらうけれど、秀作もかなりある。ただ、昇平の場合は、それが面白いとなると、はまりすぎるくらいはまってしまうのが問題なのだ。
普通なら、いくら面白くて夢中になっても、それが生活の全般にまで影響を及ぼすことはない。ところが、週末の昇平は、何をしていても頭の中ではアニメを思い出していて、にへらにへら。食事中にも上の空で、時々思い出し笑いをしては家族からひんしゅくを買う。お風呂に入っていても同様。母がいくら話しかけても、ろくに返事もできない状態だった。
さすがに月曜日に学校に行っている間はそんなこともなかったようだったが、帰宅してからは、大急ぎで家庭学習を終わらせて、後はまたパソコン、ネットアニメ、ネットゲーム。時計を見ると、時間は守っているものの・・・どうも、母の目を盗んで時計の針を戻している気配がする。
昇平の夢中ぶりがあまり目に余るので、とうとうお兄ちゃんまでが言いだした。
「昇平、いい加減にしろ! おまえの頭の中にはパソコンのことしかなくなっているぞ!」
まったく、お兄ちゃんの言うとおりの状況だった。

昇平は確かに何かに夢中になりやすい性格ではあるけれど、今回のこれは、ちょっと度を過ぎていた。日常生活に支障が出始めている。
そこで、パソコン時間を減らすことを宣言した。今までは2時間までOKにしていたけれど、それを1時間にする、と言い渡した。指折り数えて確認してみたら、実際には母の目を盗んで3時間以上やっていたようなのだ。
昇平の目に涙が浮かんだ。
「短すぎるよ。ぼく、死んじゃう。ホームページが作れなくなるよ・・・」
昇平の夢は、自分のホームページを開設すること。それ自体は別にかまわないし、そのためのページ作りの時間がかかっているなら、母もそううるさくは言わないのだけれど、実際には違うのだ。ネットアニメに取り込まれてしまっている。
そこで、どうしてパソコンに夢中になりすぎるのが悪いのか、話して聞かせた。
パソコンを長時間やりすぎると、頭の中がパソコンのことだけでいっぱいの「パソコン頭」になってしまうこと。そうすると、大事なことが外から全然入って行かなくなること・・・。
「だから、明日からはパソコンの時間を決めてやろうね」
と言って、平日は1時間半まで、ということにした。さすがに1時間は、ちょっと実行不可能な気がしたので。

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昇平は不承不承うなずいたものの、まだよく納得できていない表情をしていた。母や兄に叱られるから、パソコンの時間を減らすしかない・・・と考えているのが、見ていて分かった。
そこで、寝る前にお話をせがまれたときに、こんな物語を創作して聞かせた。
「あるところに、パソコンがものすごく大好きで、パソコン頭になっている男の子がいました・・・」
「いやいや、その話はいいよ!」
あわてて首を振る昇平。そりゃそうだ。自分が主人公になって良くないことをする物語は、誰だって聞きたくないもんね。そこで、私はこんなふうに話を続けた。(つづく)

[05/02/22(火) 10:43] 日常 療育

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