昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
授業参観〜卒業おめでとうパーティ〜
先週の金曜日の午後、小学校の授業参観があった。
この時期のゆめがおかの参観は、6年生の卒業おめでとうパーティになる。今年は、隣のクラスのA君が卒業していくので、しばらく前から、子どもたちは準備に大忙しだった。A君への感謝と激励のことばは、国語の作文指導の時間に、会場の飾り作りやA君に送るプレゼント作りは図工の時間に・・・と、普段の授業の延長上の準備でもあったらしい。
さて、パーティ当日。子どもたちはもう、朝から興奮気味。昇平はスケジュールが書かれた黒板を見て、3,4校時目に協力学級での授業が入っていて、パーティの準備作業に関われないのを見て取るや
「ぼくは役立たずだ!」
と言ってがっかりしていた。みんなと一緒にパーティの準備をしたかったらしい。森村先生から、飾り作りなどでたくさん準備を手伝ったから十分役にたっていたんだよ、と言ってもらっても、やっぱり残念そうだった。
パーティでは、昇平は開会のことばを言う役目だった。
最初、文字が書かれた黒板を見ながら言っていたが、先生から「昇平くん、前を向いて言うんだよ」と声をかけられると、すぐに正面に向き直って、大きな声で開会を宣言することができた。
A君への感謝のことばを読み上げるのは、誰よりも大きな声ではっきりと読むことができた。・・・保育園時代、劇のセリフや卒業のことばがなかなか上手に言えなくて、園でも家でも何度も何度も練習したときのことを、ふっと思い出してしまった。
全員で「ビリーブ」も歌った。これは音楽の授業の一環として練習してきたということで、どの子もちゃんと声を出して上手に歌っていた。並ぶ子どもたちの背が高くなって、肩幅も背中も広くなってきたのが、私の席からよく見えた。ふらふらする子は誰もいない。勝手なことをする子もいない。今、何をするべき時かをちゃんと理解して、クラスの一員として、みんな参加している。1年生のE君も一緒に並んで歌っている。ああ、みんな本当に成長したなぁ、立派だなぁ、と思ったら、思わずほろりと来てしまった。
A君へのプレゼントは、色紙をちぎって貼って作った、大きなA君の似顔絵だった。パネルに入れられていたが、とてもよく似ていて、立派なできばえ。子どもたちはA君に内緒でこれを作り続けていたので、いざA君に渡す段階には、とても得意そうな顔になっていた。A君はどんな反応をしてくれるかな・・・? という期待にわくわくしている。
A君が、パネルを見たとたん「なんだこれは!!」とびっくり。自分の顔だとすぐに分かったようで、照れたように笑っていた。それを見て、他の子どもたちも大喜びだった。
その後は、皆でできるゲーム大会。
最初は大きなトランプカードを使ったカルタ取り。先生が上げたカードと同じ模様と数字のカードを取る、というもの。
昇平は真っ先に1枚取ってご機嫌だったけれど、その後、全然取れなくなってしまってだんだんご機嫌斜めに。その様子を見て、4年生のD君が
「あ、こんなところに(先生と同じカードが)あったぞ。きづかなかったなぁ〜」
なんて昇平に聞こえるように言って、わざとカードをゆずってくれた。
ところが、それをすばやく自分のものにしてしまった子がいて、昇平は涙を浮かべて怒り出した。
「ぼく、全然取れない! こんなゲーム、もういやだ!!」
そこで、森村先生が昇平に言った。
「昇平くん、ゲームはみんなで楽しくやるものだよ。今日は誰が主役だっけ? A君だよね。A君が楽しい気持ちになれるように、仲良くやらなくちゃね」
すると、昇平はすぐに「はい、わかりました!」と言って、怒るのをやめてまたゲームに戻っていった。・・・実際には、内心ではかなりまだ悔しがっていたけれど。
そんな様子を見て、他のお母さんが私に言った。
「昇平くん、気持ちの切り替えが早くなったよね。いつまでも怒っていなくなったね」
ゆめがおかのお母さんたちは、他の子たちの成長にもちゃんと気がついてくれる。それが嬉しかった。
結局、昇平はもう2枚カードを取ることができた。1年生のE君でさえ4枚取っていたから、実際には一番少なくて、「ぼくは最低の枚数だ」とまた悔しがっていたのだけれど、ゲーム進行係のC君が表彰式で
「負けても怒らないでゲームが出てきて偉かったから」
と優勝した子と一緒に昇平にもメダル代わりのモールの首飾りをかけてくれたので、昇平の機嫌は一発で直ってしまった。
C君も、かつては他の子の気持ちがなかなか分からず、自分自身のことや自分の気持ちのことで精一杯で、他の子とトラブルを起こすこともあった。でも、5年生になった今はすっかり落ちついて、他の子の気持ちにも目を向ける余裕が出てきた。
ゆめがおかで、勉強だけでなく、心も一緒に育ててもらっているんだなぁ、とつくづく思った。
その後、椅子取りゲームもやった。昇平はA君の大きな体にかなわなくて、2回目でリタイヤ。でも、先の経験があったからだろう。負けても全然怒らず、「あーあ」と言って壁際の席に戻っていった。
最後に、A君からみんなにプレゼントがあった。メモ帳、鉛筆、消しゴム、そして、1人1人のお気に入りキャラクターの絵を使ったしおりが2枚。昇平のは、もちろんカービィのしおりだった。仮面ライダーやガンダムのしおりをもらった子もいた。
もう少しでA君ともお別れなんだなぁ、と思ったら、私たちまでしんみりした気持ちになってしまった。
A君は、大きな体と声で、いつも元気にあいさつしてくれる子だった。昇平が入学してきたときには、とてもかわいがってくれた。今は、毎朝教室をのぞいては「昇平くん、おはよう」と、昇平にあいさつのご指導をしてくれる。昇平もA君から言われると、「おはようございます!」と大きな声で返事をする。それがなんともほほえましく、そして頼もしかったけれど、その光景ももうすぐ見られなくなってしまうんだなぁ・・・。
子どもたちが成長して卒業していくことは、とてもめでたいことだけど、でも、やっぱりさびしさは隠せない。
子どもたちも、それを感じているようだった。だから、A君の卒業をお祝いしようと、精一杯準備してパーティを盛り上げたんだよね・・・。
本当に、この子たちはどんなふうに成長していくんだろう。
そして、どんな大人になって、どんな人生を生きていくんだろう。
出会ったときより何回りも大きくなった子どもたちを眺めながら、未来に思いをはせてしまった授業参観だった。
[05/03/01(火) 10:47] 学校