昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

不安と人形・4−対応

ふー、やれやれ。今、ようやく隣の部屋の掃除と整理が終わったところ。

ウルトラマン人形を怖がることから始まった今回の不安定、人形を倉に片づけ、ひとしきり「ウルトラマン」−「ウルトラマンって言わないでね」という合い言葉を母と交わし合う時期を経て、今度は「ガバドン(怪獣の名前)って言わないで」が始まり、「(アニメのカービィの中の)○○署長って言わないで」になり、「隣の部屋にある攻略本を片づけて」になっていった。怖がる対象のスライド。「そのもの」が怖いのではなく、不安な精神状態にそれが「はまっているだけ」なのがよく分かる。
今回怖いものに共通しているのは「顔」。ただし、それは昇平的に「怖い」「気味が悪い」だけで、一般的に見れば「かわいい」に入る類の顔だと思う。あるいは「このくらい、どうってことないよ」というレベル。
昨夜はとうとう、ネットで試していたゲームのキャラクターの顔が怖い、と言いだした。Windowsに標準で入ってくるゲーム「マインスイーパー」のクリア画面に出てくるサングラスの顔も怖い、と言いだし、とうとう「ぼくはもうインターネットをやらない! ホームページも作らない! ファイルを全部消して!」と泣きだした。なので、母はインターネットとマインスイーパーへのショートカットを、デスクトップから削除してやり、彼が今までダウンロードしてきたゲームのファイルなども全部削除してやった。すると、昇平は自分自身でゴミ箱を空にして、完全に消去してしまった。まあ、最近彼のデスクトップが満杯になってきていて、整理した方がいいのに、と思っていたところだったので、ちょうどよいタイミングだったとは思うけれど。
「ぼくはもう絶対パソコンをやらない! インターネットをやらない! (作品発表は)お母さんのホームページだけでいいです!」と泣きながら言うものだから、「今は、しばらくお休みしてもいいと思うよ。でも、またパソコンでインターネットをやりたくなったら、いつでも(ショートカットを)復活させてあげるから、安心しなさいね」と言うと、ちょっと落ちついた顔になった。

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ところが、その後も昇平は、パソコンの中にマインスイーパーのプログラムがある、と思っただけで落ちつかない。お兄ちゃんがやるかもしれない、そしたらどうしよう、と考え始め、「お兄ちゃんのマインスイーパーも消す!」と言いだした。「お母さんのノートパソコンの中のマインスイーパーも消して」と言う。
「それは絶対にダメだよ」と言い聞かせた。昇平くんのデスクトップにあるものならば、何をどうしようと、それは昇平くんの自由。でも、お兄ちゃんやお母さんや他の人のものは、絶対に勝手に消したりいじったりしてはいけません。それは、絶対にやってはいけないことなの。少し強いくらいの口調で、きっぱりと言って聞かせた。

実は、その少し前にも、こんなやりとりがあった。
「ウルトラマン」が「ガバドン」にスライドし、「ガバドン」−「ガバドンって言わないで」が合い言葉になっているとき、茶の間に行っていた昇平が、ニコニコしながら戻ってきて言ったのだ。「おばあちゃんにも、『ガバドンって言わないで』って言って、巻き込んじゃった」。
「巻き込んじゃダメ!」と思わず声を上げてしまった。昇平のこだわりがここだけで終わらないで、他の人を巻き込むようになったら困るな、と考えていた矢先だったのだ。「他の人にまで言っちゃダメよ。巻き込むのは、お母さんだけにしておきなさい」
すると、昇平はすぐに「はい!」と答え、あわてて茶の間に飛んでいって、おばあちゃんに「『ガバドンって言わないで』って言わなくていいよ」と伝えていた。

不安定は、根本的に落ちついた精神状態にならなければおさまらないのは分かっているけれど、それを他の人たちまで巻き込む形で発展することだけは避けたいな、と考えている。

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今回の不安定は、本当に家庭の中でだけ、それも母だけにしか出ていない。学校ではしかにも立派にがんばっているから、まさかこんな強迫神経的な状態になっているとは、学校での様子からはまず分からない。
ただ、ドウ子先生は家庭での状態を知っているので、とても心配してくださっている。昨日も、西尾先生と2人で運動会の練習の様子を見ていてくださったそうだ。
昇平は、周囲の子たちのリード(それも、とてもさりげない上手なリード)に合わせて、周りをちらちら見ながら、一生懸命全体練習に取り組んでいたそうだ。表情も様子も、普段とまったく変わりがなかったという。
学童でも、とても落ちついて過ごしている、という報告を受けている。
これはやっぱり、母に甘える気持ちから起こっているんだなぁ、と感じている。
甘えている、と言っても、悪い意味合いではない。4年生になってからずっと、「上級生になったから」といろいろ頑張り続けて、息切れがしてきたものだから、一番安心できる場所で「不安定」という形で表出してきたんだろうと思うのだ。
「ウルトラマンって言わないで」「ガバドンって言わないで」というのは、「ぼく、なんだか最近くたびれちゃったんだよ」という意味合いのことばなんだろうと感じている。

実は、隣の部屋を片づけていたのは、昇平にその部屋に置いてあった本を倉に片づけてほしい、と言われたから。彼的に怖い顔が載っている本があって、それが同じ部屋にあると思うだけで落ちつかないらしいのだ。
そのついでに、彼の机まわりも徹底的に掃除して、使いやすいように物を置き直してやった。文房具がすぐにとれるように、引き出しを机のすぐわきに移したり、机の上にお気に入りの本を置く場所を作ってやったり・・・。たぶん、安心してのんびりできる場所がほしいんだろうと思うから。
旦那が昔使っていた古いノートパソコンがあるので、これを昇平用にカスタマイズして使わせることも考えている。これはネットにはつながっていないから、彼的に怖いサイトにつながっていない、という安心感があるはず。
でも、だからといって、なんでもかんでも彼の要求通りに片づけたり、しまい込んだりはしないようにしよう、と考えている。先のこだわりへの巻き込みではないけれど、これをやりすぎると、何でもかんでも全てのものを自分のまわりから排除しはじめる可能性があるから。
彼のスペースに関してはできるだけ意に添うようにしてあげるつもりだけれど、他の人のスペースに関しては不可としていくつもり。

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昇平は最近、とても眠そうだ。宵っ張りで早起きの彼が、夜8時過ぎからあくびをして、朝は私が起こしに行くまで寝ている。やっぱりくたびれているのだろう。
ドウ子先生からは「こちらで何かできることはありますか?」と聞かれたので、「ときどき息抜きの時間をお願いします」と頼んだ。そういえば、昨日も昇平は自分から「図書館に行きたい」と言いだし、昼休みに本を眺めて過ごしていたらしい。自分でも、息抜きの時間を意識しはじめたのかもしれない。
とりあえず、今私が考えてできることは、ひととおりやったつもり。
あとは病院へ行って、主治医と相談してこようと思っている。積極的な手を打つにせよ、運動会が終わるまで様子を見守るにせよ、やっぱり主治医に現状報告したほうが良いだろうから。

[05/05/17(火) 12:19] 学校 日常

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