昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

不安と人形・6−学校でも

今回の昇平の不安定が、とうとう学校でも出てくるようになってきた。以下はドウ子先生からの連絡帳から。

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5月17日(火) 記録者:ドウ子

朝、授業前に見ていたABCの絵本(前から教室にありました。)の宇宙人のイラストを指し、「これが気持ち悪いから、図書館においてきたい」と。腕を強く引っ張っての主張は初めてでした。一緒に置きに行くと、それについては一回だけ「だれか借りたかな」と言うだけでした。
今日は、御家庭でのお母さんへの5分に1回の”ウルトラマン”が、私への”カービィの警官と泥棒”になっていた一日で、やはり、言っている途中で、はっとしたように「言わないで」や「もう言いません」になります。言い続ける時は、視線をそらすような、合わないような・・・です。同じことを言ってしまっては後悔しているような様子です。今日の受診の結果、お知らせお願いします。
自閉のお子さんの、こだわりによる同じことばや、同じ回答(返事)がほしくて(心地よくて)言い続けている様子には慣れている私ですが、言葉に出した後、はっとする顔をするお子さんの様子は初めてです。

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5月17日(火) 記録者:母

M病院へ行ってY先生に相談してきました。やはり、「しっかりやろう」「ちゃんとやろう」とがんばりすぎて、疲れが出てきた状態だろうということでした。
がんばりの気持ちが、水の入ったコップのように満杯だったところに、運動会の練習が始まってとうとうあふれ出したのが、今回の症状なのではないかと思うのですが・・・と話すと、Y先生は深くうなずいておられました。「ちょっと疲れたから休みたいよ」というのがことばにして言えないために、「ウルトラマン」等への不安を口にする形で出ているのだろう、という話でした。
「疲れたら休んでいいんだよ」と教える、さらには実際に休ませるといいでしょう、と言われました。「ずっとがんばりを継続していなくても大丈夫ですから。それでダメになるなんてことはありませんからね」と言われてしまいました。確かに、家では「これだけは毎日の役目や課題だからやろうね」という感じでがんばらせていて、息抜きする時間が足りなかったかもしれません。反省。
なお、今の状態には投薬は必要ないだろう、ということでした。

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今朝、昇平を学校に送っていくと、ドウ子先生が心配して話しかけてくれた。
昨日は、特に給食準備中に不安定で、5分に1度どころか、30秒に1度くらいの割で、ドウ子先生に「ボルン署長と泥棒・・・(アニメに出てくるキャラクター名)」と言い続け、連絡帳にもあったとおり、途中ではっと気がつく顔をしていたそうだ。また、先生が視線を合わせようとすると、どんどん視線から逃げようとしていたという。ここは、母である私とは反応が違うところ。「どういうことなんでしょうね?」とドウ子先生も不思議そうだった。
「ウルトラマン」や「ボルン署長」ということばを言って、それに「○○っていわないで」と答えてもらうのは、実は、「くたびれてしんどいよ。なんだか気持ちが落ちつかなくて不安だよ」−「大丈夫、心配はいらないよ」という意味合いのやりとりになっている。母はそれにしっかり答えてくれると分かっているから目を合わせるけれど、ドウ子先生に言うと、「何を言っているの?」なんて聞き返されそうな気がして、心配で目が合わせられなくなるんでしょうね・・・とドウ子先生と話し合った。結局のところ、自分が普通じゃないことを言っていることも、でも、それを言わずにはいられない心理状態であることも、昇平はかなり意識しているのだろう。

ドウ子先生は、昨日の運動会の練習風景も観察してくれていた。ゴミ袋を拾って分別しながらゴールを目ざすチャンス走の練習は、とても楽しそうにやっていたらしい。150m走では、途中で疲れてだれてくる子も多い中、最後まで「必死」を絵に描いたように、一生懸命真剣な顔で走っていたそうだ。
・・・なるほど、やっぱりね、と思った。

昇平は、今年かなり意識して運動会をがんばっているのだ。
これまでは、運動会と言ってもそれほど真剣みはなかった。みんなと一緒にやれればいいや、くらいの気持ちだったのだと思う。
でも、4年生の声が聞こえるあたりから、昇平は急に「自分」というものを意識し始めた。
誰に言われたわけでもないのに、自分から「がんばろう」「一生懸命やろう」「精一杯やろう」とし始めた。学校だけでなく、家でもそうだった。何も言われないうちから宿題や家庭学習に取り組み、自分の役目の布団敷きをし、ゲーム時間を守り、時間が来ると「お風呂の時間だ」と準備を始め・・・。それは、本当に素晴らしい態度だけれど、でも、さすがに一事が万事その調子だと息切れがしてくる。そこに始まった運動会の練習。決して練習自体は厳しくないのだけれど、それにも「よし、一生懸命がんばるぞ」と考えたら、とうとう限界を超えてしまって、「ウルトラマン人形が怖い」と不安定が始まった・・・というのが、今回の一連の症状だったらしい。
昇平はこれまで、そんなふうに自分から「がんばる」ことをしたことがなかったから、がんばると疲れることも、そういう時にどうやったらいいかも、まだ分からないでいるのかもしれない。
「いわゆる過適応ですね」とY先生には言われた。うーむ、確かに。

[05/05/18(水) 12:46] 学校 日常

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