昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

問題点の整理−「不安と人形」総括

今回の運動会に関係した一連の事件を整理してみた。
大きく分けて、2つの問題が起きている。


1.運動会の練習が本格化した頃から出現した、強迫的な不安やことばの繰り返し

最初は「ウルトラマン人形が怖い」だったのに、ひとつ解決するたびに、新しい不安の対象を無意識のうちに見つけてくるので、どんどん恐怖の対象がスライドしていった。「ガバドン(怪獣の名前)」「アニメ星のカービィの泥棒さん」「ボルン署長」などなど。繰り返し言う相手は、最初は母だけ。後半は学校で担任にも言うようになった。一番激しい時期には、5分に1度、2,3分に1度、果ては30秒に1度くらい言っていたこともあったようだ。

これは明らかに、プレッシャーを感じている状態を表現していたのだと思う。
今までになく「一生懸命やるぞ」「負けないようにがんばるぞ」という意気込みが強かった昇平。それだけに、練習にも今まで以上に一生懸命取り組んでいたらしい。その緊張感や、「がんばるぞ」という自分自身の気持ちがしんどくなった時、気持ちが落ちつかなくなり、「ウルトラマン」や「泥棒」といったことばの繰り返し、という形で表出されてきたのだと思う。
運動会が終わるまでの一過性のものだろうと予想していたが、案の定、運動会直前から激減し、運動会翌日にはほんの数回聞くだけになり、代休も終わってまた学校が始まった今日は、家でも学校でも一度も口にすることがなかった。

ただし、これはひとつのプレッシャーへの対処方法なので、今後また何か緊張する場面やプレッシャー度の高い経験をすると、同じような強迫的行動が再発する可能性はある。
でも、今回、本人が「笑うと気持ちがすっきりする」「楽しいことを考えると落ちつく」というのを、いくらか経験したようなので、次第に別な形でプレッシャー発散できるようになっていくと思う。

結論:
イベントを前にしての強迫的行動には、あまり騒ぎ立てず、本人を安心させ、リラックスさせる方向で受け止める。笑う門には福来たる。



2.運動会で自分の組が負けたことに腹をたて、無関係な敵組の女の子に衝動的に乱暴を働いてしまった

この中で特に問題な点は3つ。

・運動会の勝敗に、通常のレベルを超えて本気で怒ってしまった。

・運動会の勝敗は全体のものであるのに、それを個人のせいと原因を置き換え、個人攻撃で発散しようとした。

・下級生の女の子にパンチをした。(同級生や男の子ではなかった=無意識のうちに自分より弱い相手を選んでいたと思われる)

最初の、運動会の勝敗に本気になりすぎた件は、ただ行動に出ていないだけで、実際には他の子どもたちも同じように腹立たしく感じていたのかもしれない。それくらい白熱していたし、去年も白組が負けていただけに(そして、昇平は去年も白組だった)「今年こそは・・・!」という思いが、子どもたちの中に非常に強かった。
事前に、学校レベル、学級レベルで「勝っても負けても、正々堂々と戦った結果であれば、それ以上は怒らない。相手の健闘をたたえる」という指導が必要なのかもしれない。

次の、怒りを個人攻撃で発散しようとした件。
これは、ADHD特有の行動と言えるのかもしれない。衝動性が他人に向かって発動されてしまったケース。(もちろん、原因が全体にあって、個人1人1人には責任がないことが分からない、という認知的な問題も絡んでいるが)
障碍特性だからしかたがない、と言っているわけではない。原因が何であれ、他人に危害を加える、というのは許されてはならない。ただ、後で本人に聞いてみたら、ちゃんと「乱暴してはいけない」「怒ってはいけない」ということは分かっていたのだ。分かっていても、その場では感情に巻き込まれて、つい衝動的に手が出てしまった、ということなのだ。
今までは、いくら衝動性があっても、こんなふうに他人に手が出ることはまずなかった。本人が大きくなってきたために出現してきた行動なのだろう。今度、衝動性をコントロールする訓練というのも、しっかり考えて行かなくてはならないのだろう。
もうひとつ。炎天下で長時間競技してきて、昇平はへとへとだった。そういう「疲れ切った状況」にあった昇平を、「大丈夫だろう」と安易に考えて目を離していた我々(周囲の大人)にも責任はあると思う。今後、こういう状況がまた出てきた時には、十分配慮していかなければならない。

自分より弱い相手を選んで攻撃した件。
これは、本人は自覚していないかもしれない。でも、最近、スーパーで泣いたり騒いだりしている子に「うるせえぞ! 黙らないとぶったおすぞ!」などと凄んで黙らせようとする等、弱者に力を誇示して言うことを聞かせようとする行動が見えていたので、おそらく、同じ根っこがある問題だと思う。わきを歩いていた赤組の子が、自分より年下の、しかもおとなしそうな女の子だったから、無意識のうちにその子を選んで攻撃したのではないか、と私はにらんでいる。
新たにこの問題が浮上してきた背景には、昇平の場面認知力が上がってきたことがある。相手が自分と比較してどういう立場にある子か(自分より強いか弱いか)が、瞬時に判断できるようになってきたのだ。
強さに対するあこがれの気持ちもある。強いヒーローはかっこよい。昇平は本気でそう信じている。
これは、障碍のあるなしに関わらず、この年代以前の子ども、特に男の子にはよく見られることだと思う。弱い子を選んでいじめる、からかう・・・子どもの世界では日常的に起こっている出来事だ。
だけど、それは「絶対にやってはいけないこと」だ。
子どもが本質的にそういう特性(弱者を力で痛めつけようとすること)を持っているのであれば、「それは正しくない」「そんなことをする人は、ぜんぜんかっこよくないのだ」と教えてやらなくてはいけない。
弱いものいじめをしない、ということだけでなく、いろいろなことに関して、こういう社会ルールや正しいあり方というものを教えていく段階に来たのだな、と考えている。SSTがますます重要になってきたと言える。


運動会では、昇平は本当によくがんばっていた。過去最高のがんばりを見せたと言って間違いない。そのこと自体は、本当に賞賛されて良いことだと思っているし、実際、たくさんほめた。
それとはまた別に、今回見えてきた問題については、今後も、場面に合わせ、本人の意識に合わせて、折に触れ指導していこう、と考えている。
昇平が精神面でも、またひとつレベルアップしたことを、今回の運動会は見せてくれていたわけだ。


さて、それでは親としては、担任の先生方と協力しながら、ひとつひとつに対応を考えていくことにしましょうか。
ゴールははるか彼方でも、長距離ランナーになって、がんばるぞ。(笑)

[05/05/24(火) 20:55] 学校 日常

[表紙][2005年リスト][もどる][すすむ]