昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

トラブル続出・2〜下校時に〜

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それと原因は同じなのか、それとも、以前からその手のトラブルが起こっていたのかは分からないが、追い打ちをかけるように、また別の事件が起こった。
月曜日の下校時に、昇降口のところで、一緒に帰っている男の子グループが「昇平くんとは帰りたくない」と言いだしたのだ。怒る昇平。昇平が怒ると、すぐに出てくるのが「ぶっ殺してやる!」「おまえらみんな死ね!」「やっつけてやる!」といった過激すぎることば。それで、同じ方面に行く女の子たち(ちなみに、その子たちの多くは去年まで一緒に学童に通っていた子。昇平のこともよく分かってくれている)が「あたしたちが一緒に昇平くんと帰ってあげるよ」と言ってくれたのだそうだが、昇平はますますいきり立って、「女となんか一緒に帰れるか!」「女なんか死ね!」とか騒いでいたらしい。それを通りかかった協力学級の担任が聞きつけて、事の次第を聞いたところ、こんな事実が分かったのだ。

昇平は毎日、学童まで、同じ方面に帰宅する男の子たち数人と一緒に帰っている。男の子たちは協力学級で一緒の子たちで、多くは去年まで学童も一緒だった子たち。昇平のことをよく分かっていて、理解しようとしてくれている。とても優しい子たちなのだ。
ところが、昇平は帰り道でその子たちに「1人ずつ交代で昔話をしろ」と言い、子どもたちができないと答えると、「ぶっ殺してやる!」「やっつけてやる!」と大騒ぎを始めていたのだそうだ。人の多い表通りでそんなふうに騒がれたら、子どもたちだって嫌になってしまう。まるで自分たちが昇平をいじめているように見える、とも感じただろう。それで、「昇平くんとは一緒に帰りたくない」になったわけだ。
協力学級の担任から知らせを受けて、ドウ子先生も子どもたちから詳しく話を聞いたらしい。その結果、昇平が今までにも、何か思い通りにならなかったり、気に入らないことがあったりすると、大声で騒ぎ立てていたことが分かった。
昇平が障害を持っていること、だから配慮しなくちゃいけないことは、協力学級の子どもたち全員がとてもよく分かっている。分かりすぎるくらい、分かってくれている。だから、思い通りに行かなくなって昇平がパニックを起こして騒ぎ出すと、子どもたちは昇平の主張をのんで言うことを聞いてあげる、という形で、昇平をなだめてくれていたのだ。
実際、ドウ子先生は翌日下校する子どもたちの後を一緒について行ったそうだが、1人の子が出題するゲームに皆で楽しく答えながら歩いていたのに、突然、昇平が「ねえ、クイズをしよう!」と言い出すと(衝動性のしわざ)、せっかく皆でゲームを楽しんでいたのに、全員が「いいよいいよ」「クイズをしよう」と言って、昇平に合わせてクイズを始めてくれたのだそうだ・・・。

この話をドウ子先生から聞いたとき、正直、私はショックだった。
他の子たちに我慢を重ねさせるような形のつきあいが、正しい人間関係のはずがない。
私は、昇平に障害があっても、「昇平くんといると楽しい」と言ってもらえるような、そういうお友だちができると良いな、と考え、そのために学童を変えたりもしてきた。でも、それは、他の子どもたちの「犠牲」の上に成立するものであっては、絶対にいけないのだ。このあたりの区別には少し難しいものがあるけれど、でも、「配慮」は「誰かが障害児のために我慢をする」ということであっては、絶対にいけないのだ。
ドウ子先生も言っていたとおり、「そんな人間関係は長続きしない」し、「将来的なことを考えると、昇平くんのためにもならない」ことだから。

「とりあえず、しばらくは昇平くんたちの下校の様子を観察します」とドウ子先生が言ってくれた。
「よろしくお願いします」と頭を下げながら、私は、家庭ではいったい何をすることができるだろうか、と考え続けていた。

[05/06/03(金) 01:00] 学校 日常

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