昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
プライド
数日前のこと。
夕方、学童に迎えに行ったら、4年生以上はクラブの日で下校が遅かったらしく、昇平はまだ宿題をやっていた。下級生たちはもっと早く下校してきているから、宿題は終わらせておやつを食べている。昇平は、おやつも食べずに必死で漢字の練習中。家に帰ってからのんびりしたいので、宿題はなんとしても学童で済ませていきたいのだ。
せっかくがんばっているので、そのまま待つことにして、宿題の様子を見守っていた。
すると・・・あらら、なんですか、その書き順は?
「胃」という漢字を書くのに、上の田の部分を四角形に描いてから中に十を入れている。書き順、めちゃくちゃじゃないの〜!
「機」の書き順も変だよ。木を書いてから、糸の上の部分、もうひとつ糸の上の部分、横棒書いてから斜め線の順番で書くんだよ。いいかい、木、糸、糸、横棒・・・だよ。
そんなふうにわきから口を出していたら、昇平が怒ったような声を上げた。
「うっせーな! これでいいんだよ!」
きつい口調に思わず目を丸くして、
「だって、書き順が正しくないときれいに書けないでしょう」
と言うと、さらに怒ったような声で
「あーもう。うるさいんだよ!」
うるさい、の「る」の部分を強く発音してもらうと、そのときの昇平の口調が分かると思う。子どもが親の小言をシャットアウトしようとするときのイントネーションだ。
あ、そうか、と気がついた。
今年、昇平は学童では最上級生で、周りは1年から3年までの下級生ばかりになっている。発達の遅れている昇平でも、やっぱり「お兄さん」だし、実際下級生よりよくできることもあるものだから、それなりに尊敬の目で見られることもあるらしい。
そんな昇平に私がいつもの調子で口を出していたものだから、周りの子たちが、あれれ、おやおや、という目で見ていた。「昇平お兄さん」のメンツをつぶすようなことをしちゃっていたんだね。
ごめんごめん。これはお母さんが悪かった。
そこで、あとはもう何も言わずに、書き順がおかしくても字の形が変でも、そのまま昇平に任せておいた。
☆★☆★☆★☆
4年生になって、昇平は本当にこれまでとひと味違ってきている。
簡単に言えば、「大人になってきた」のだ。
「おい、てめえ○○だぞ」とわざと乱暴なことばづかいをしてみたり、お兄ちゃんのことを「兄貴」と呼んだり。
手助けを受けずに自分の力でなにかをやり遂げることにも、積極的になっている。・・・力及ばなくて失敗してしまうこともあるけれど、それはそれで良い経験だと思う。「ぼく、自分でできるよ」が最近の昇平の口癖だ。
お友だちと関わることも本当に楽しむようになってきた。自分の気持ちと相手の気持ちが合わなくて、悔しがって泣いたり怒ったり、という体験も積んでいる。
そして、あらゆる場面で感じるのが、プライドの成長。
他の同年代の子たちより遅れていても、できないことがたくさんあっても、やっぱり4年生らしいプライドが育ってきている。
「ぼくだって大したヤツだぞ」と、自分自身に胸を張りたいのだ。
末っ子ということもあって、母にとってはいつまでも「小さなかわいい昇平くん」というイメージだったのだけれど、そろそろそれも返上しなくちゃいけないんだね。
君はもう「お兄さん」なんだ。
また一歩、昇平から離れて見守る段階に来たのを感じて、嬉しいような淋しいような気分の母だったりする。
[05/07/05(火) 13:54] 学校 日常