昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

ある朝の風景

ある朝のこと。

学級に到着してランドセルを下ろすなり、昇平はCくんに近寄っていった。
「ねえねえ、Cくん、あとでマリパごっこやろう」
マリパとはマリオパーティというテレビゲームの略称。その日は朝、時間があって、登校寸前まで昇平はそのゲームを家でやってきていたのだ。それが楽しかったので、大好きなCくんと学校でもその遊びがしたくなったらしい。
ところが、Cくんは即座にこう答えた。
「やんない」
「どうして!? ねえ、Cくん、マリパごっこやろうよー!」
「やらないよ」
「えーっ! どうしてー!? お母さーん、Cくんがやらないっていじわる言うんだよー・・・!!」
毎日何度も繰り返される2人のやりとりだ。
昇平は友だちと遊ぶのが好きになって、遊びたくて遊びたくてたまらない。でも、Cくんは1人で静かに過ごすのも好きで、あまりしつこく誘われるのは好きじゃない。それに、4年生と6年生だから、遊びの内容が合わない場合もある。
「遊ぼう!」「遊ばない」でケンカのようになりかけていた。

けれども、その様子を見ていて、ふと私は気がついた。
「ねえ、昇平くん。マリパって何のことだか、Cくんにちゃんと説明した?」
すると、即座に昇平が言い換えた。
「ねえ、マリオパーティごっこしようよ」
とたんに、Cくんが言った。
「なぁーんだ」
納得したような、安心したような顔になっていた。やっぱり「マリパ」が何のことかわからなくて、それで「やらない」と言っていたのだ。
すると、昇平の方も、なーんだ、という笑顔になった。Cくんがいじわるな気持ちや、昇平を嫌いになった気持ちから「遊ばない」と言っていたわけじゃないとわかったのだ。
「ねえ、Cくん、あとでマリオパーティごっこしようよ」
「うーん、やるかもねー」
慎重なCくん、マリパが何のことかわかっても、それでも「やる」と確約はしない。だけど、昇平は満足したような顔でCくんから離れて、席に戻っていった。

   ☆★☆★☆★☆

ゆめがおかの子どもたちは、それぞれにまだ友だちと関わることが上手じゃない。
毎日がぶつかり合いや誤解の連続で、言い争いになったり、ケンカのようになったり、でも、すぐにまた仲直りして一緒に遊んだり。学年が違うこともあって「まるで兄弟みたいです」とドウ子先生も言う。年子の男の子が3人もいるのでは、さぞ先生も大変だろう。
そんな子たちだけにしておくのも心配で、私は毎朝、ドウ子先生が教室に到着するまで教室に残っている。子どもたちの話を聞いたり、この朝のように関わり合いの交通整理をしたり。けれども、そんなぶつかり合いを通して、子どもたちが少しずつ成長していくのが見えるのから、私としても楽しいひとときだったりする。
子どもたちの成長や交わりを毎朝フリー参観できて、私はとてもラッキーかもしれない。

[05/07/10(日) 20:30] 学校

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