昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
安心できる世界(後編)
だけど、外の世界に、外の世界と自分をつなぐ手助けをしてくれる「ヘルパーさん」がいたとしたら、どうだろう。
昇平のような子どもたちは、認知に偏りがあるけれど、全然認知できないというわけじゃない。理解できる部分もある。わかるように説明してもらえば、理解していけることもある。それを知っていて、昇平がわからないとき、困っているときに、「これはこういうことなんだよ」「こういうときにはこうするといいんだよ」と教えてくれる人がそこにいたら、昇平だって、外の世界をそれほど怖がらなくてすむようになる。
昇平自身は、外の世界に関心はあるのだ。他の人たちと関わるのは楽しいことだと気がつくようにもなってきている。思い切って外に出てみたい、という気持ちは、心の底にいつもあるのだ。
そのとき、出て行こうとする先に、頼りになる「ヘルパーさん」がいてくれて、困ったときにすぐに頼ることができたら、臆病な昇平だって、飛び出していく勇気がわいてくる。思い切ってやってみよう。きっと大丈夫。だって、そこに助けてくれる人がちゃんといるから・・・。その信頼感が、外へ出て行く勇気を与えてくれる。
体験の幅が広がれば、認知できるものも増えてくるかもしれない。得意なことだって増えてくるかもしれない。外の世界に「わかること」「できること」が増えれば、そこも安心できる世界に変わってくる。外の世界が、彼の世界に変わっていく。
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学童の子どもたちと行く遠足は、昇平には初めての体験。
だけど、学童にはとても頼りになる鴨原先生がいる。困ったときに言えば助けてくれるY指導員もいる。お友だちだって、昇平が聞けばいろいろ教えてくれる。
だから、昇平は考えたのだ。みんなと一緒に公園で遊んで、お弁当を食べて、プールに入って・・・きっと楽しいぞ! と。
夕方、学童に迎えに行ったら、子どもたちの大半は静かに昼寝の最中だった。
昼寝の時間は毎日あるけれど、大抵は横になっているだけで、本当に眠っている子は半分もいない。でも、今日はほとんどの子たちが熟睡していた。どの寝顔もとても満足そうで、なんだか見ていてとてもほほえましかった。
昇平と、数人の3年生は起きていて、静かに本を読んでいた。さすがに上級生は体力があるので、昼寝しなくても大丈夫だったらしい。でも、彼らも満足して、快い疲労に浸っているように見えた。昇平も、とても落ち着いた表情をしていた。遠足ではとても楽しんで、大きな50メートルプールでも泳いできたらしい。
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去年まで昇平の担任だった森村先生が、こんなことを言っていたことがある。
「今までその特性に合わせた指導とか、いろいろ考えてきたんですが、もしかしたら、昇平くんが安心して取り組めるようにすることこそが、なによりも大事なんじゃないかな、と思うようになってきたんですよ」・・・と。
もちろん、その「安心」を作るためには、その子の特性を知らなくてはできないのだけれど、でも、「安心ができる環境作り」というのは、まず真っ先に考えなくちゃならない、本当に大事なことなのだろう、と私も昇平を見ていてつくづく感じている。安心があるからこそ、子どもは大きく成長していけるのだから。
この夏、私は子どもたちが親から離れつつあるのを感じている。もう、昔のように「お母さん、お母さん」とべたべたくっついては来ない。母が昇平の面倒を見る場面も、ぐっと少なくなってきた。直接親が手をかける時代は終わろうとしているのだ。
だとしたら、親である私の役割はなんだろう。
やっぱり、昇平が信頼し、安心して一緒に過ごすことができる人たちが、外の世界に1人でも増えるように、その橋渡し役をしていくことなんだろうな・・・。
親のあり方と子のあり方、そんなことまで考えている、今年の夏休みだったりする。
[05/08/11(木) 20:17] 学校 日常