昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
フリー参観・3
【3校時目―音楽】
昇平は、音楽の授業も、協力学級で受けている。音楽には介助の西尾先生はついてこないので、昇平1人で4年3組に行き、皆と一緒に音楽室に移動していった。
授業が始まる前、昇平は男の子の列に座ってずっと下を向いていた。何をやっているのかと思って目をこらしたら、小さな紙切れになにやらお絵かきをしている。そのうちに授業が始まって、「お腹の体操」という発声練習が始まったが、まだお絵かきをやめない。こら、昇平! 始まってるぞ! ・・・と声には出さずに後ろからにらんでいたら、ふと昇平が振り返って、私と目があった。あわてて紙切れをしまって、授業に集中する昇平。ふー、やれやれ。相変わらず行動の切り替えが悪いねぇ。(苦笑)
指導をしてくれているK先生は、音楽専科の先生。私は初めてお目にかかったのだけれど、とにかく、ものすごく魅力的な授業をなさる。「お腹の体操」は笑い声で歌いながら声を出す練習だったけれど、楽しくて面白くて、子どもたちはみんなニコニコしていた。お絵かきをやめた昇平も、楽しそうに歌って参加している。「低い声で歌って」と言われたら、手を口に入れて(押さえて?)変な顔をしながら歌っていた。う〜ん、はしゃぎすぎだけど・・・まあ、いいか。
次に全員で歌を歌った。私がわきからのぞき込んで昇平の歌う顔を見ようとしていたら、1回歌い終わったところで、すかさずK先生が言った。「それじゃ、せっかくだからお父さん、お母さんたちのほうを見て歌おうか!」 わーお。嬉しい嬉しい。おかげで、昇平が歌っている様子も、ばっちり前から見ることができた。
楽譜には「1回目」と「2回目」という指示がついていて、1番と2番で歌う歌詞が変わってくる。見ていたら、案の定、昇平はその歌いわけができていなかった。もうひとつの歌では、「D.C.」と「Fine」という音楽記号が使われていて、途中から繰り返して、それが終わったら最後の章節を歌うように指示されていた。これも、昇平は理解できていないようで、その部分は歌っていなかった。
はは〜ん、と思った。こういう歌い方の指定や音楽記号に関しては、最初に曲を習ったときに、必ず先生から教えられているはず。でも、それが一斉指導だったので、昇平には意味がよくわからなかったのだ。
これは体育のときと同じ問題だな、と思った。
昇平は一斉指導の声が聞き取りにくい。理解しにくい。だから、体育のときには「アルゴ体操」で小さく進むように指示されても、どんどん大股で進んでしまっていたし、最後に片づけを指示されても、気づかずに教室に戻ろうとしていた。
音楽でも、全体に向かって教えられた歌い方の順番については、聞き取れなかったか、意味が理解できなかったのだろう。
けれども、声を大にして言いたいけれど、これは断じて「先生方の指導のせいではない」!
体育で全体に指示を出していたR先生も、音楽専科のK先生も、子どもたちへの呼びかけ方はものすごく上手だったのだ。子どもたちの気持ちをぐっと引きつけ、子どもたちの意識に訴えることばかけができる先生方だ。・・・私は昔、小さな子どもたちに歌やゲームで英語を教える仕事をしてきたから、このあたりの指導力はよくわかる。この先生方に教え方が下手だと言ってしまったら、上手な先生なんて誰もいなくなってしまうだろう。
むしろ、私は、昇平の抱える困難さを改めて見た気がした。こんなに上手に教えてくれる先生でも、やっぱり、全体に話しかけた内容はよく聞き取れないんだね。
とはいえ、例えば4年3組で受ける理科の授業などは、先生が説明する内容をよく理解できているという。教科書や図や実物で確認しやすい理科と、基本的に「モノ」が存在しない音楽や体育との、内容の違いというのもあるかもしれない。
とにかく、昇平は全体指導には弱い。これは間違いない、と改めて感じた。
(「フリー参観・4」に続く)
[05/10/04(火) 15:06] 学校