昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
嬉しかった対応
フリー参観のレポートもあと1回で完了の予定なのだけれど、その前に、先日ちょっと嬉しい対応が学校であったので、その話を。
嬉しい対応と言っても、何か良いことがあったわけではない。むしろ逆で、昇平が4−3で授業妨害を起こしてしまったのだ。
その日、昇平は朝からすっきりと目を覚まし、やや高めのテンションではあったけれど、機嫌良く過ごして登校していた。着替えも荷物の整理もさっさとすませ、先に来ていたCくんと遊んでいるうちに、突然怒り出す、ということがあった。気分激変。ドウ子先生や私が言い聞かせても、なかなか機嫌が直らない・・・という感じの始まりではあった。
1校時目に4年生全体で学習発表会の練習をし、2校時目はゆめがおかでの授業、3,4校時目にはまた4−3で図工があって、給食をはさんで5校時目にはまた4−3で理科。その理科の授業が始まったとき、昇平は「空気の実験がやりたい!」「またここをやるのか!」「こんなところできるか!」と言いだして、罵詈雑言、授業がまったくできないほどの大騒ぎを始めたのだという。介助の西尾先生がついていたものの、説得にはまったく耳を貸さず、興奮状態で怒り続けていたらしい。
でも、素晴らしかったのは、この後の担任の弓子先生の対応。
昇平がとても授業を受けられる状態ではなさそうだとは判断したものの、「授業を受けられないなら、ゆめがおかに帰りなさい」と罰のように言い渡すのは、本人のためにも、クラスの他の子どもたちのためにも、やりたくない。そこで、怒っている昇平に「理科の教科書を読んでちょうだい」と言って、普通なら何人もの子どもたちに分けて読ませる文章を昇平1人に全部読ませ、「はい、今日やるところを全部読んでくれたから、昇平くんはこれでもうゆめがおかに帰っていいよ。教科書をたくさん読んでくれて、ありがとう」と言ってくれたのだ。
「教科書をたくさん読んでくれてありがとう」と言われて、昇平の機嫌はころりと直り、さっきまでの興奮など嘘のように、教科書とノートと筆入れを持ってゆめがおかに帰り、「今日のところは全部終わったから、帰っていいよ、って弓子先生に言われたの〜♪」と、上機嫌でドウ子先生に報告したのだそうだ。
・・・少し遅れて戻ってきた西尾先生から事の次第を聞かされたドウ子先生、すぐに昇平に、授業が自分の好きな内容でなかったとしても、そんなふうに騒いではいけない、と言い聞かせてくれたが、そのときには昇平はもうすっかり落ち着いて、「はい、わかりました」と素直に答えて、西尾先生を「さっきと全然違う!」と驚かせたという。
一方、昇平を帰したあと、4−3では弓子先生がクラスの子どもたちにこんな説明をしてくれていた。
「昇平くんは今日は1校時目に学習発表会の練習をして、3,4校時目には図工にも来て、きっとすごく大変だったんだよ。だから、疲れた疲れたと言っていて、あんなふうに大騒ぎしちゃったんだね。そういうときもあるんだよ・・・」
すると、4−3の子どもたちは、うんうん、という感じでうなずいて、すんなり納得してくれたのだという。
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この話をドウ子先生から聞かされたとき、私は本当に嬉しかった。
昇平はこの日、確かにかなり疲れていた。肉体的にと言うより、精神的にくたびれていたのだ。
たぶん、一番の原因は学習発表会の練習。今までやったことのないイベントが始まった負担に加えて、内容がアルゴリズム体操と組み体操だという。ちなみに、組み体操を選んだのは本人で、他にはマット運動や跳び箱という種目もあったらしい。先日のフリー参観の体育は、学習発表会に向けての練習でもあったのだ。
フリー参観・2でレポートしたとおり、昇平はどの種目を見ても得意な内容ではないし、もちろん上手になんてできない。組み体操だけは、フリー参観では様子を見ることはできなかったけれど、指示に従うのが苦手で空間位置をつかむのが不得手な昇平には、やはりかなりハードルの高い内容だろうというのは、容易に想像がつく。(注:ふと気がついたが、もしかしたら組み体操というのはアルゴリズム体操そのもののことかもしれない。昇平の話なので、このあたりがはっきりしていないのだ。あとで確認してみよう)
夜、家で家庭学習をするときにも、普段なら喜んでやるはずの算数の図形問題だったのに、この日は「疲れたからやりたくない!」と言い張って、とうとう家庭学習を休みにしてしまった。協力学級での授業も多い日だったので、かなり精神的にいっぱいいっぱいになっていて、それが、ちょっとしたきっかけで怒り出したりする不安定さにつながっていたのだろうと思う。
けれども、そんな昇平の暴走を、弓子先生はあわてることなく受け止めて、「理科の教科書を読む」という課題に切り替え、「今日の内容は全部読んだので、ゆめがおかにかえって良い」という指示につなげてくれた。
そのことで昇平は達成感を感じて、本当は授業妨害をして迷惑をかけてしまったのだけれど、罰を受けたという気持ちにはならずに教室に戻っていった。
一方、クラスの子どもたちは、先生から説明してもらうことで、昇平の状態を理解して、その心情を汲み取ってくれた。「教科書を読む」ということで授業参加していったので、これまた、昇平が途中でゆめがおかに戻されても、「悪いことをしたから罰を受けた」とは受け取らないでくれたのだ。
当人のセルフエスティームを大事にしながら、周囲の子どもたちにマイナスな印象を与えずに理解を促す。とても難しいことのはずなのに、それを瞬時に判断して行ってくれた弓子先生には、本当に、感謝のことばもない。また、先生の話を素直に聞き入れて、理解してくれた子どもたちにも、感謝感謝・・・。
それ以降、昇平は授業中に暴走して怒り出すことはしていないらしい。休み時間などに友だちと遊んでいて、急に怒り出す、という場面はないことはないけれど、あの日のような不安定さは見られない。
昇平にとって、学習発表会で体操を発表する、その練習をする、というのは確かに難しいことではあるのだけれど、でも、様子を見ていると、「とても負担が大きすぎるからパスさせた方がよい」というほどの状態でもない。むしろ、最初は大変に思えていても、練習を繰り返すうちにできるようになっていって、最後にはやり遂げて達成感を味わう、という経験をする、良いチャンスのように見える。
昔から、昇平はそうなのだ。発表会や鼓笛隊などで、とても参加は無理と思えるようなスタートを切っても、先生方やお友だちの協力を得ながら、がんばって練習を繰り返して、最後には皆と一緒にしっかり参加してきている。そして、大きなイベントをクリアするたびに、昇平は一回りも二回りも成長してきたのだ。
きっと、今回の学習発表会も、本人が成長していく大きなきっかけになると思う。
その途中で、疲れてまた不安定になることもあるかもしれないけれど、弓子先生や4−3のお友だちが大きな気持ちで受け止めてくれたら、きっとそれも乗り越えて、良いものにつなげていけると思う。
学習発表会は、今月の22日。
昇平と先生方とお友だちの協力の成果を、しっかりと見てこようと思っている。
[05/10/07(金) 14:46] 学校