昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

マラソン大会・1

11月4日にマラソン大会があった。
昇平たち4年生は、去年に引き続いて800メートル。校庭を一周してから、学校を出て隣接する中学校のグランドの周りを回り、また学校に戻るコースを走る。最初は長距離を走るのを嫌がったり、コースを間違うことを不安がっていた昇平も、最後の練習では92人中80位まで順位を上げて、かなりやる気になっていた。
当日、私はコースの後半、学校の裏手のところで応援していた。その場所の方が、子どもたちがばらけて確認しやすかったから。待つうちにどんどん子どもたちが通り過ぎていったが、昇平は最後から2番目のところを走ってきた。私の顔を見るなり、遠くから
「お母さん、お母さーん」
応援する親の数が少なかったので、私の顔もはっきり見えたのだ。
「お母さん、ぼく、ころんじゃったー! 血が出ちゃったー!」
泣きべそをかくというより、怒った声で昇平が言った。見ると、確かに膝に血がにじんでる。母の顔を見て気が緩んだようで、今にも止まりそうになるので、
「大丈夫! いいから最後まで行きな!」
と叱咤して、ゴールを目ざさせ、私は裏道を通ってゴールに先回りした。
昇平は最後までがんばって走り続け、ラストから2番目でゴールインした。出迎えたドウ子先生に、転んで怪我したと訴え、保健の先生に連れられて救護テントに向かう。
けれども、昇平は見るからに怒った様子をしていた。がんばって(自分としては)良い順位を出したかったのに、転んで最後の方になってしまったのが悔しかったのだ。そこで、昇平のそばに駆けつけて、「よく最後まで走ったね。えらかったねー!」と抱きしめてやった。それで少しかんしゃくの気持ちが収まったようだったので、後は先生方に任せて、私は家に戻った。
「昇平は途中で転んじゃったけれど、最後までがんばって走り続けて偉かったよー」と、家にいたじーちゃん、ばーちゃんに話して聞かせた。
本当によくがんばり続けたと思う。
めでたしめでたし。



・・・で、終わりたかったのだけれど、事件はその後に発覚した。
以下は、その日の連絡帳から。

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11月4日(金)   記録者:ドウ子

マラソン大会、校庭の1周目で、転んだ子に連なってバランスを崩した子の後ろあたりで転び、立ち上がった時には最後でした。遠目で見ても膝の辺りを気にしていたので、血が出たのかな、とは思いましたが、走り続けているので、「走るつもりなんだ。えらいなぁ・・・」と思っていました。校庭に戻ってきた時は、一人抜いた順位だったので、足の怪我にも負けずえらい!! と思い、ゴール後治療に行ってから、ほめてあげました。
・・・ところが・・・。
順位が一つ後ろだったSくんから、困ったような訴えがありました。
校庭を出たあたりで、前を行くSくんの背中を何回か叩き、「じゃまだ、どけ」と言い、抜く時に「ざまあみろ」と言い残したそうです。事実を確認すると、その通りだということで、私にたっぷり注意され、泣き続けました。
「転んでビリになったけど、ビリになりたくなかったんです」
気持ちはわかるけれど、だからといって、Sくんにしたことは許されることではないこと、泣いて「どうしよう、ぼくは死にます」など言うけれど、一番悲しいのはSくんであること、を話しました。
Sくんに謝りにも行きましたが、昇平くんが泣き声でSくんも迷惑そうだったので、後でお詫びの手紙を書きました。
本人には、「転んで血が出ても走り続けて○(マル)1つ、Sくんに悪いことをして×(バツ)1つのマラソン大会」と話しました。「来年は○1つだけにします」と言っていたので、反省はできたのだと思います。

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連絡帳等で事実を知って、もちろん、私からも「そんなことをして勝っても、それは勝ったことにならない」「正々堂々と走るように」と本人に注意して、来年のマラソン大会ではそんなことはしないようにしようね、という話をした。
以下は、私が連絡帳に書いた返事。


11月4日(金)   記録者:母

帰宅してからも反省して、「来年は○2つにする」と言っていました。(たとえ転んでも走り続けるし、他の人を叩いたりしない、という意味)
運動会の時にも、自分のチームが負けてしまったことに腹をたて、まったく無関係だった相手チームの女の子を通りすがりに殴るという事件があったわけですが、今回の件と共通しているのは、「負けることが悔しいあまりに、衝動的に手が出る(口も出る)」ということだと思います。
以前はこれほど勝敗にこだわることはなかったのですが、それは単に周りがよく見えていなかっただけのことで、本来の性格としては、負けん気の強い部分を持っていたのだと思います。今年になって、周囲がよく見えるようになり、集団の中での自分の位置というのも分かるようになったために、「負けるのが悔しい」「負けたくない」と強く感じるようになってきたのでしょう。主人が「もっと幼い頃に通り過ぎる段階を、今やっているんだな」と言いましたが、まったくその通りなのだろうと思います。
ただ、この気持ちが、「皆と同じにやりたい」「皆に負けないようにがんばろう」という気持ちも生んでいるので、それはそれで大切にしたいと思います。
今後は、勝敗が大きく問題になるようなイベントの際には、あらかじめ「負けても怒らない」「勝ち負けの結果より、がんばることの方が大事」等、話して聞かせたいな・・・と考えています。


(「マラソン大会・2」につづく)

[05/11/11(金) 04:58] 学校

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