昇平てくてく日記2

小学校高学年編

正月にいとこ達と過ごす

 元旦に郡山市の私の実家へ年始に行って、一泊してきました。
 実家へ行くのはお盆以来だったから半年ぶり。昇平は親戚中から「大きくなった」「背が伸びた」「たくましくなった」と口々に言われていました。5年生になってから急に大きくなり始めて、今は身長は145センチほど、体重も42kgを越えているます。身長はちょうどその学年男子の平均だけれど、体重は重い方になってしまいました。本人も太ってきたのを気にして、しょっちゅう「痩せなくちゃ」「運動しなくちゃ」と言っているのだけれど、食べる量も半端じゃないので、さて、どのくらいスマートになれますやら? いわゆる水太りタイプではなく、がっちりした堅太りタイプなので、なお痩せにくいかもしれません。
 ただ、いわゆる「リタリンを飲んでいると大きくなれない」という迷信(?)は否定する形になりました。

 半年ぶりに実家の親戚たちに会って、その間の彼の成長ぶりも実によく見えました。人との関わり方が、以前より格段に良くなっていたのです。
 もちろん、まだまだ自分勝手だし、言われていることも状況もわかっていないし、すぐパニックを起こすし、小さい子の大声や泣き声は苦手だし……。でも、自分から親戚たちに関わっていこうとする態度が、以前よりはっきり現れていて、しかも、それなりに自然な形で深まっていたので、これには私の母も感心していました。人の中にいることを楽しんでいる様子もしばしば見られました。

 面白かったのは、一番小さないとこの「はるちゃん」との関わり。
 弟の一人娘で、3歳になったのですが、今までは昇平にとって一番心配な存在でもありました。泣くかもしれない。騒ぐかもしれない。怖い、うるさい、つらい……。
 昇平の聴覚過敏、特に泣き声に関する過敏性はどうしようもなく強いので、我慢させることはほとんど不可能です。その場を回避させるしかありません。この正月にも、マク○ナルドにハンバーガーを食べに行ったら、少し離れた場所で大泣きしていた赤ちゃんの声に怒り出し、泣き出して、旦那と三人、ハンバーガーやドリンクを手に駐車場の車に移動して、そこで食べるはめになりました。ちゃんと逃げ場が確保されていたり、人口密度があまり高くない(あまりうるさくない)場所ならば、たまに我慢できることもありますが、だいたいはそんな我慢をさせることはできません。あまりにも苦しそうで、つらそうで、我慢してその場にいるように無理強いしたら、それこそ大パニックを起こして、収集がつかなくなりそうで。
 そんなわけなので、郡山のおじいちゃん、おばあちゃんの家に行くときには、はるちゃんが来るかどうか、はるちゃんが泣くかどうか、が彼にとっては非常に大きな関心事。「泣くのは小さい間だけ。ことばが話せるようになると、泣くことはとても少なくなる」と聞かされてからは、「はるちゃん、しゃべれるようになった?」と質問するようになりました。
 さて、半年ぶりで会ったはるちゃんが、どうなっていたか?
 さすがは3歳、しかも女の子。口の回りきらないところはありますが、しっかり周囲の話しかけることを聞き取って、ちゃんと返事をしたり、意見を返したりしていました。話が通じるのが嬉しくて、昇平もしきりに「はるちゃん」「はるちゃん」。
 まあ、相手の反応や表情を読むのは不得手な昇平なので、せっかく遊びに夢中になっているはるちゃんに一生懸命呼びかけたり話しかけたり、と、必ずしも上手に働きかけているわけではありませんが、それでも、はるちゃんの方でも、しっかり昇平に答えてくれて、なんとなく二人とも良い雰囲気。
 このいとこ連中は、ちょうど男3名、女3名いるのですが、今までは上の4人が男2人、女2人でくっついてしまって、昇平やはるちゃんがみそっかすでした。ところが、今回は、そのみそっかすのはずの二人が、やりとりをして関わっているわけです。
 おー、二人とも成長したねー! と感無量でした。

 しかも、はるちゃんが相手だと、昇平の面倒見のまあ良いこと。
 学校でも、2年生のI君を一生懸命面倒見ているのだとは聞いていたのですが、実際にはるちゃん相手に話しかけたり、世話を焼いたりしている姿をみて、本当だったのねぇ、と……。
 まあ、はるちゃんに泣かれないように必死になっていた、という動機も大きかったんだろうとは思いますが。それにしても。
 上の子たちが、自分たちだけで遊んでいて、茶の間に誰もいなくなったら、昇平「はるちゃん、顕微鏡見ようか」と言って、おじいちゃんの部屋から顕微鏡セットを持ってきて、セットに入っていた標本をはるちゃんに見せていました。
「はるちゃん、ほら、これエビの卵だよ」
「エビー?」
 エビが大好物なはるちゃん、昇平に言われるままに顕微鏡をのぞき込んで
「見えたー!」
 とかわいい笑顔。
 昇平、顕微鏡の使い方は理科の授業で習っています。それをしっかり生かしたわけです。案外、昇平は応用力があるのかも。
 その様子を見ていたはるちゃんのお母さんも、にこにこしながら、
「昇平くんが面倒見てくれるから助かりますー」
 昇平、あんた、感謝されたよ。すごいね。(笑)

 とはいえ、そんなに長い時間、二人が持つわけはありません。
 はるちゃんは少しずつ眠くなってくるし、昇平は一生懸命関わって、疲れてコントロールが効かなくなってくる。はるちゃんが、ぐずぐず言い出すと、昇平が泣いて怒り出して……引き離して、
「はるちゃんを一生懸命お世話したから少し疲れたんだよ。好きなゲームでもしてなさい」
とゲームでリフレッシュさせました。
 あとになってから、はるちゃんが昇平のところに来て言いました。
「お兄ちゃん、泣いてたねー」
 昇平はなんとも返事をしなかったけれど(それを嫌がっていたと言うよりは、どう返事をしていいのかわからないでいた、という雰囲気)、はるちゃんは、はるちゃんで、自分と遊んでくれた昇平お兄ちゃんが急に泣き出したから心配したのかもしれません。
 関わりの力が未熟な昇平と、やっと親以外の人たちと関わり始めたはるちゃん。
 スムーズになんてはいかないけれど、でも、なんだか見ていて「ちょうどいいなー」という気がしました。本当の意味で昇平がお兄さんでいられる相手。本当に、自分が思いやらなくてはならない相手。そして、そうやって思いやったことに、素敵な笑顔や返事でしっかりリアクションを返してくれる人。それが、はるちゃん。小さい子はいつまでも小さくはない、ということも、昇平の目の前に見せてくれています。うーん、本当にステキだなぁ。

 翌日、昇平が帰り際に、はるちゃんに向かって言いました。
「はるちゃん、ホントに成長したねー」
 ちょっと大人っぽい言い回しなのがおかしかったけれど、でも、それが昇平の実感だったんでしょうね。
 それ以外の時間にも、年上のいとこ達が遊んでいるところに一緒にいたり、兄に無理やり頼み込んで、もう一人の男のいとこと3人でゲームをしたり。今までで一番関わりの深い、この正月でした。

[07/01/03(水) 13:17] 日常 発達障害

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