昇平てくてく日記2

小学校高学年編

冬休み中

 冬休みが始まってそろそろ一週間。昇平も我々も元気でいます。
 人と関わる楽しさを覚え始めた昇平は、休みになると遊び相手がいなくて退屈しますが、時節柄、友だちの家に遊びに行くのも、遊びに来てもらうのも迷惑になるので、年末年始の間は我慢するように言い聞かせています。かわいそうだけれど、そういう「時期」もあるのだと、覚えてもらわなくてはね。
 しかたなく、毎日パソコンに向かってネットをしている昇平ですが、見ていると、自分で創作できるゲームのサイトをもっぱら訪問しています。やっぱり「作る」のが好きなようです。
 補講で学校に行っている兄ちゃんがたまに早く帰ると大喜びで、「お兄ちゃん、スマデラ(テレビゲーム)しよう!」と自分から誘います。兄ちゃんも、冬休みなのに勉強ばかりで飽き飽きしているので、弟のお誘いには喜んで乗ります。
 自分が寝る前に父が帰宅してきたときには大喜び。「おかえりっ!」と自分から部屋を飛び出して出迎えに行って……。以前と比べると、ずいぶん人との関わりが良くなってきたなぁ、とつくづく感じます。

 そうそう。クリスマスにはサンタクロースからゲームソフトをもらいました。今人気の「ポケモンダイヤモンド」です。
 昇平はまだサンタクロースを信じているので、イブの二、三日前から「本当にサンタさんはそれを持ってきてくれるかな?」と心配していました。手紙も書いていたので、「読んでくれたかな?」とまた心配して。本当にサンタクロースがリクエストの品を持ってきてくれたとわかった朝には大喜びでした。
 我が家では兄ちゃんの時から「サンタクロースは小学生の間しか来ない」と言い聞かせています。「サンタはいない、と思ってしまったその時から、もう本当にサンタクロースからのプレゼントは来なくなるんだよ」とも。その後からは、しょうがないから、代わりに私たち親が君たちにプレゼントをあげるよ、と……。嘘ではないですよね?(笑)
 昇平は目下「ポケモンダイヤモンド」にも夢中です。手持ちのポケモンもだいぶ強くなってきたようです。正月が過ぎたら、近所のC君と通信対戦するんだ、と楽しみにしています。
 モンスターと同じくらいか、それ以上に興味を持っているのが、ゲームの中に出てくる「木の実」。薬草代わりに使われる架空の果物なのですが、それがえらく気に入っていて、ことあるごとにその特性や味などを教えてくれます。一般には、ポケモンの種類や特性を覚えることにそんなふうにはまるものなのですが、昇平の場合は「木の実」。
 「昇平くんがその木の実を食べてみたいからでしょう。食いしん坊だね」と言ったら、えへへ、と照れたように笑っていました。

 冬休みの学習も順調に進んでいます。
 朝食の後に飲んだリタリンが効く時間帯を見計らって、朝9時から宿題。夕飯を食べ終わって二階に上がったら、その日のチャレンジ。小学生になってから、ずっとそんなふうに習慣づけてきたので、なんということもなく取り組んでいます。この冬は、宿題の内容を母がいちいち確認してやらなくても、自分でちゃんとその日の分を出してやるようになりました。漢字の書き順中心のプリントが1枚と、算数の計算プリントが1枚です。
 歯みがきカードも一行日記も自主的に続けています。「あ、今朝まだみがいてなかった。これからやってくるよ」なんて、10時頃に洗面所に飛んで行ったりはしますが。まあ、自分から気がついてやるところに意義を認めることにしています。(笑)

 寝る前の読書タイムは、学校の図書室から借りてきた『ドングリクッキー』という本に移りました。縄文時代の食生活を体験してみよう、という本なのですが、これがなかなか面白い。私も一緒になって夢中で読んでいます。
 昨日はとうとう「本当にドングリクッキーが作ってみたい!」と言い出して、小学校までドングリ拾いに行ってしまいました。昇降口の前に大きなドングリの木が2本あるのです。冬だし、もうドングリなんて落ちていないだろうと思ったら、木の枝にまだたくさんなっていたのですね。それが前日の強風で落とされていて、きれいなドングリをたくさん拾うことができました。どうやら、天は「クッキーを本当に作ってみなさい」と言っているようです。(笑)
 今日はそれを煮て、殻をむいてあく抜きをします。明日、粉にして、ドングリクッキーを作ってみる予定……。どうなるかわかりませんが、うまくいったら、「そっと、ひとりごと」ブログの方で報告します。(笑) なにかと気ぜわしい年末ですが、昇平のおかげで、思いがけない楽しみも味わっています。

 昨日は今年最後の診察に病院にも行ってきました。
 通信簿を持参していったのですが、昇平の場合は教科の評定ではなく、学期間の様子を事細かに文章で書くスタイルなので、主治医も参考になるようで、カルテに一生懸命書き写されていました。
 国語、文章の読み取りがうまくなってきた。算数、内容を理解していて、文章題も解けるようになってきた。音楽、曲に合わせて一生懸命合奏していた。図工、大得意。体育、プールで25m泳げるようになった。理科、板書が落ちついて書き写せるようになってきた……。
 肯定的注目の下、良かったこと、できるようになったこと中心に書かれているので、それだけ読むと、まるでものすごく順調な学校生活だったように読めます。(笑)
 でも、決して嘘ではないので、主治医としても「良い傾向になってきたようですね」と嬉しそうでした。
 ちなみに、学校での生活状況には、こんなことが書かれてきました。
「学級の友だちと自分たちで遊ぶものを作り、会話を楽しみながら遊ぶようになりました。予想外なことに対して臨機応変に行動する姿も見られました。」
 そして、協力学級の岩幡先生からは、こんなコメントが。
「授業中の暴言が少なくなり、帰りの会で教室に来たときにも、静かに友だちを待っていられるようになりました。」
 誉められてはいるけれど、それまでの昇平の扱いがいかに大変だったかわかるコメントで、先生方のご苦労がしのばれて、ここを読んだときには思わず苦笑いでした。主治医は、よかったよかった、とまた喜んでおられましたが。

 一日中、彼を見ていると、相変わらず落ちつきはないし、パソコン以外のことには集中力は短いし、人の話は聞けないし、すぐに興奮して状況がまるで見えなくなるし、叱られると「死ぬしかない」とか言うし(ただ、以前のような調子ではなく、こちらの反応を見ながら言っている感じなのが変化)、小さい子の泣き声には過敏すぎる反応をするけれど。まだまだだなぁ、まだ目は離せないなぁ、とは思うものの。
 でも、確実に成長は感じる昇平です。他の子たちよりはずっとずっと発達が遅れているけれど、それでも、彼なりのスピードで確実に前進しています。主治医にも言われたように、「今だから教えられることを教え、今だからこそ覚えられることを覚えて」もらって、来年もまた、一歩一歩進んでいこうと思います。
 いつの日か、彼が私の手元を離れて自分の足で歩き出す姿を見られることを願いながら――。

[06/12/29(金) 05:32] 学校 日常 発達障害

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