昇平てくてく日記2

小学校高学年編

三連休の日記

2月10日(土)

 朝からなんとなく昇平の様子が落ちつかない。パソコンの前にいてもひっきりなしに体が動く。ひとりでしゃべり続けている。母にも話しかけてくるけれど、話す内容が一貫していない。勝手にしゃべって勝手に話し終えてまたパソコンへ向かう――という感じ。
 三連休が始まるから興奮しているんだろうか? 天気がいいからはしゃいでいるんだろうか? 少し風邪気味の影響だろうか? いつも通りに薬も飲んでいるし、特に変わった出来事はないのだけれど。たまに、こんな原因不明の日もある。
 昼食後、行きつけの床屋へ散髪へ。いつもなら必ず漫画本を持って椅子に座るのに、今日は何も持たずに座った。途中まで、一言も口をきかず、落ちついて座っていた。多分、本人なりに、自分から散髪を頑張ろうとしたのだと思う。
 ところが、他に誰も客がいなかった店内に、おじさんと小学3年生くらいの男の子が入ってきたら、とたんに落ちつきがなくなった。小柄な子だったので、幼児と間違えたらしい。騒いだり泣いたりするのではないかと神経質になって、言動が怪しくなってきたので、あわてて昇平に本を渡した。本を眺めて、何とか落ちつきを取り戻したが、顔を剃ってもらう場面でまた一騒ぎ。なんとか無事散髪は終えたものの、家ではさらに調子が崩れて、結局、一日中落ちつきがなかった。

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2月11日(日) 建国記念の日

 今日も朝から落ちつきがない。そわそわ、がたがた。ひとりごとも多い。休日で家にいた旦那が、「なんだか落ちつきないな。どうしたんだ?」と言う。
 昼過ぎ、旦那に連れられ、I君と一緒にまた温水プールへ。今回はI君のお母さんは同行しなかったが、プールでは全く問題なく、二人で楽しく泳いだり潜ったりしていたらしい。
 ところが、帰宅してから、昇平はいっそう不安定に。部屋でゲームをしていた兄ちゃんが、ちょっと失敗して「あっ、くそ」とつぶやいただけで、「兄ちゃんが怒る、怖い」とべそをかき、部屋にいられなくて階下に逃げていた。おばーちゃん相手に「兄ちゃんをやっつけてやる」とか「もう自殺するしかない」とか、ひっきりなしに言い続けていたらしい。でも、兄ちゃんは別に怒っていたわけでもなんでもない。昇平の方の状態が悪くて、必要以上に過敏に反応していた。「殺す」「自殺する」のことばも久しぶりに出ていた。
 3時頃、タイミングを見計らって買い物に誘う。店内に小さな子がいて大声を出していても怒らないことだけ、あらかじめ確認しておく。ついでに、「今日は三連休だから、チャレンジの勉強はお休みにしようか」と言うと、そのあたりから急に機嫌が直りだした。「うん!」と今日初めての明るい声。
 店で買い物をしてから、買い物カゴを車まで昇平に運んでもらう。店内は割と人が多かったけれど、そこでも落ちついて行動していた。籠を運び終えた昇平に、「これで挽回したね」と声をかけたら、また「うんっ!」と明るい声と顔。
 楽しみに毎日買っているポケモンのカードガム。出てきたカードはこれまでと同じものだったけれど、怒ることもなく、「昇平は新しいカードを2枚手に入れた。昇平はまた、新しい冒険に旅立った。ここまでをセーブしますか? はい」と、RPGゲーム風におどけて言って、自分の気持ちを切り替えていた。その言い方が面白くて、母は爆笑。
 夜、また兄ちゃんは部屋でゲームをしていたけれど、昇平は全く気にすることなく、パソコンをしたり、兄のゲームを眺めたりしていた。やっと落ちついたらしい。

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2月12日(月) 振り替え休日

 三連休三日目。でも、旦那は仕事へ。
 兄ちゃんと昇平がハンバーガーを食べたがったので、車で福島駅前まで出る。マックで昼食を取ってから、ゲーセンへ。昇平には300円を渡し、「向かいの本屋さんにいるからね」とだけ伝える。今日の昇平は朝からしっかりした顔をしていて、外出を楽しみにウキウキしてはいたけれど、不安定な感じがまるでなかったので、そのまま自由行動させる。ゲーセンでは、兄ちゃんと昇平は別行動だったが、たまに店内をのぞくと、兄ちゃんがさりげなく昇平のいる場所を気にしているようなところを目撃した。面倒見るわけではないけれど、それでも気を配ってくれてはいたらしい。
 40分あまりたって、本屋にも飽きてきたのでゲーセンへ。すぐ昇平に出会った。
「ぼく200円だけ使ったよ。100円自分にもらってもいい? 貯金したいから」
 最近、昇平はそんなふうに、もらったこづかいを使い切らずに残しておいて、貯金するようになっている。とても良いことなので、誉めて100円は昇平にあげた。どうやら、200円分遊んだ後は、店内をうろうろして、デモ画面や他の人のプレイする様子を眺めて過ごしていたらしい。
 もう帰る、と言うので店を出ようとしたところで、ゲームを始めようとしている兄ちゃんを発見。すると、昇平、さーっと近寄っていって、「やっ」と片手を上げて「先に帰るね〜」と声をかけていた。およよ。こんな場面、初めて見るぞ。
 兄ちゃんは定期券があるので勝手に帰ってきてもらうことにして、昇平を連れて帰路についたけれど、帰りの車の中でも、途中立ち寄ったスーパーでも、家に帰ってきてからも、昇平は本当に機嫌がよかったし落ちついていた。本当に、最初の一日半はなんだったんだろう? という感じ。
 まあ、本当に、こんなふうに山あり谷あり、精神状態にも波がある、ということなんだろうなぁ……。三連休中に復活して、本当によかった。でないと、せっかくの連休が楽しくなかったものね。
 家に帰ってから、100円玉を貯金箱に入れて、満足そうな顔をしていた昇平だった。

[07/02/13(火) 09:28] 日常 発達障害

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