昇平てくてく日記2

小学校高学年編

協力学級での授業参観

 先週の金曜日に小学校の授業参観があった。
 今回は、久しぶりで協力学級の5−2での参観。授業は理科だった。

 昇平は、理科は大好き。大人数の学級での授業は決して得意ではないけれど、内容が目で見て理解しやすいし、実験のように体を動かせる内容も多いので、興味がある。介助の西尾先生が付き添ってくださっているからではあるけれど、他のクラスのお友だちと一緒に、理科の授業に参加できている。

 今日の参観の内容は、振り子の周期に関する実験。
 ふりこの、「おもりの質量」「紐の長さ」「振れ幅」を変えたときに、振り子の周期がどう変わるか、予想を立ててから、実際に振り子の条件を変えながら時間を計測して周期を割り出し、予想の結果を確かめる、というもの。前の時間までに予想や実験のしかたはきちんと確かめていたようで、その続きからの授業だった。

 最初に、振り子の周期が変わるのはどの条件を変えたときだろうか、という予想の発表。それぞれ、周期が変わる、変わらない、と子どもたちは予想を発表していったけれど、「紐の長さを変えると周期が変わる」というところで、昇平が手を上げた。
 え、あんた発表するの!?
 一瞬焦る母。だって、他の子たちがまだ手を上げないうちに、真っ先に手を上げるんだもの。
 授業参観は、できるだけ全員に発表の機会を持たせようとする時間。5−2の担任の岩幡先生が昇平を差した。
「はい、昇平くん」
「紐の長さが短いとと、(周期が)早くなると思う」
「どうしてそう思いますか?」
 でも、昇平は、自分の考えをことばで説明するのは得意ではない。案の定、理由を聞かれて詰まってしまった。
 すると、昇平がいきなり前の先生の方へ出ていった。介助の西尾先生があわてて引き止めようとする。岩幡先生も「その場所で言っていいよ」と止める。でも、昇平は「いいえ、前で言います」とか言いながらずんずん進んでいって――ひえぇぇ、どうする気よ、昇平!? と母は焦りまくり。参観しているお母さんたち、みーんな注目してるんですけど……。
 すると、昇平、おもむろにチョークを手にとって、黒板に振り子の絵を描き始めた。短い振り子が揺れる絵。それから長い振り子が揺れる絵。短い方の振り子の絵を示しながら、
「紐が短いと、力が早く伝わるから、早くなると思います」
 おわぁ。
 なんとなく、教室全体にも、なるほどー、という雰囲気が漂う。
「昇平くんの意見に賛成の人」
 と岩幡先生が尋ねると、何人もの子が手を上げた。
 うわあぁぁぁ……。見事昇平は発表をやり遂げたけれど、見せ場も作ってくれたけれど、母は冷や汗の方がすごくて、なんだかまともに見ていられなかった。
 すると、席に戻りながら、昇平が私を見て、にやっと笑った。「どう、すごいだろ?」と目で言っているのがわかった。はいはい、すごうございます。母はびっくり仰天いたしましたよ。……ああ、心臓に悪かった。(苦笑)
 その後も、昇平は一、二度手を上げて発表していた。母が見ているものだから、いいところを見せたかったらしい。まあ、場にそぐわない発言もあったけれど、それは大目に見ておきましょう。(笑)

   ☆★☆★☆★☆

 実際に振り子を揺らして時間を計る実験は、六人一組のグループで行われた。昇平は、私が見ている場所から一番遠いグループだったけれど、やっていることはよく見えていた。
 振り子を揺らして時間を計るのは他の子たち。昇平は、その結果を記録する係になっていた。
 揺れる振り子を一緒に眺める。が、そのうち、気がそれて、椅子に座ったり、あっちこっち向き始める昇平。そうすると、介助の西尾先生がすかさず実験に引き戻してくれる。結果の数値を書き込むときにも、声をかけてくれている。
 記録した後、次の実験に移るのだけれど、そこで昇平の集中がいきなり途切れるのがわかった。視線がうわの空になる。記録してほっとするんだろうし、教室に今日はお母さんたちがいっぱいだから、なおさら気がそれやすいのかもしれない。そうすると、西尾先生がまた、実験に昇平を引き戻してくれる。昇平がうわの空になるたびに、何度でも。
 それを見ていて、ああ、本当にありがたいなぁ、と思った。実験の予想をしっかり発表できた昇平。でも、それができたのは、こんなふうに、いつも授業に昇平を集中させてくれている西尾先生がついてくれているおかげなんだと、はっきりわかったから。

 西尾先生だけじゃない。岩幡先生も、授業のしかたが抜群にうまい。
 語りかけ方はメリハリがあって、子どもたちの興味関心を逃さない。各グループを回ってこまめに指導しながら、全体にも目を配り、子どもたちが実験に飽きないように、実験にのりきれないでいる子には、さりげなく興味を持てる仕事を与えたりしているし。
 全体意見を聞くときにも、挙手の合図を決めているのがわかった。意見発表は普通に“パー”の手だけれど、反対意見だと“グー”の手、付け足しの意見だと子どもたちは“チョキ”の手を上げていた。目で見てわかりやすい。子どもたち自身の意見発表のしかたもうまくなる。
 うーん。この担任と介助の先生なのだもの、昇平が「理科は面白い!」と言うのも当然だわねぇ。見ている私たちも、とても楽しい授業だった。

   ☆★☆★☆★☆

 参観の後は、同じ5−2の教室で学年懇談会があった。来年は最高学年になるし、宿泊学習もあるので、それの説明などが、5年生の担任から話があった。
 私はいつもゆめがおかの学年懇談会に出るので、5年生の学年懇談会も初めてなら、他のクラスの担任の話をじっくり聞くのも初めてだったのだけれど。それで感じたのが、担任同士の連携の良さ。とてもよく話し合いながら、協力して学年全部の子どもたちを見ているのがわかった。
 岩幡先生は、5年生全員の家庭科の授業を、1組の先生は音楽の授業を、3組の先生は図工を、というように、学年の中で教科担任制もおこなっているからだと、担任自身から話があった。子どもたちがクラスを越えて、5年生の担任全員を自分たちの先生だと思っているし、その気持ちが、学年の子ども同士、クラスを越えて仲良く関わらせているのだ、とも。本当にそうだろうと思った。

 昇平は今、この学年に理科、音楽、図工、体育を学びに来ている。学年行事にも一緒に参加している。
 決して大人数が得意な子ではないのに、これだけの参加ができているのは、こういう担任たち、こういう子どもたちのいる学年だからなのだな、と改めて痛感した。
 昇平。君にとってはこれがあたりまえだろうけどね、本当は、とてもすごいことなんだよ。ありがたいよね。

 今年の夏、彼らは宿泊学習に行く。
 例年は山登りだったけれど、今年は海辺での活動になると説明があった。
 昇平は運動能力が低いから、山登りにはとてもついて行けそうになかった。海ならば大喜びだし、きっと活動にも積極的に参加するだろう。
 もしかしたら、5年生の担任たちが話し合って、今年は行き先を山から海に変更してくれたのかも、と私は思った。きっと昇平一人のためだけではないだろうけれど、昇平「も」楽しく一緒に参加できる宿泊学習を考えてくれたんじゃないだろうか。この先生方なら、おおいにありうる、と一人心の中でうなずいていた。

 本当に、昇平も4月からは小学校最終学年。
 でも、この先生方、この同級生たちが一緒なら、きっと最後の最後まで、充実した素晴らしい小学校生活を過ごせるんじゃないだろうか。
 そんなことを感じて、とても嬉しい気持ちで帰路についた授業参観だった。
 

[07/02/28(水) 14:03] 学校 発達障害

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