昇平てくてく日記2

小学校高学年編

5月(4)〜昭和の日と運動会〜

5月21日(月)   天気:晴れ

 今日は昇平と約束していた「昭和の日」の二回目。祝日の昭和の日ではなく、私が子どもの頃の昭和の時代のように、夜は「パソコンなし、ゲームなし、ビデオなし」で過ごす、というもの。
 「今日は昭和のひだねぇ」と朝からカレンダーを見ながら、うきうきしている昇平。意外なくらい楽しみにしている。以前にも、そんなふうにパソコンやゲームをやらない日を作ろうとしたのに、本人が頑として承知しなくて断念したことがあったのだけれど、先日のインターネット普通事件をきっかけに、「パソコンやゲームがなくても楽しく過ごせる」というのが実感でわかるようになったらしい。これも本人が成長したからこそ、なのかも。

 一緒にトランプをした。でも、やっぱり二人だけでは限界がある。う〜ん、次は絶対に旦那や兄ちゃんにも一緒にやらせよう。二人だけでやるダウトはエンドレスで空しいぞ。その後は、たっぷり本を読んだ。「ニルスの冒険」は読み終わり、別の科学本もずいぶん読み進んだ。「お母さん、これも一緒に読もう」と、昨日買った「ポケモン大百科」も持ってきたが、「それは自分で読む本です」と断った。普段自分一人では読まない本を一緒に読む時間にしたかったので。
 ビデオが見られなくて、代わりにテレビをつけた昇平。久〜〜しぶりで「名探偵コナン」を見て、さらに「水戸黄門」の最後のチャンバラシーンを見て大喜びだった。なるほど、昭和の日をやると、こういうものにも目がいくようになるわけね。これはいいかもしれない。今後も続くといいなぁ。

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5月22日(火)   天気:晴れ

 運動会の練習が、いよいよ最後の追い込みに入っているらしい。でも、疲れた様子は見えないし、学校でも「割と」落ちついて過ごしているらしい。(決して、「とても落ちついている」とは言わないが)
 相変わらず、朝は学校近くのコンビニから学校までの二百メートルくらいを自力登校。本当はもっと距離を延ばしていくつもりだったのだけれど、様子を見ていると、朝はまだリタリンが効いていないせいもあって、不注意と多動が強くてなんとなく危なっかしい。交通量の多い交差点で、横断歩道を二つ渡って学校へ向かうのだが、それを渡りきるまで車の中から目を離せないでいる。距離を延ばすにしても、もっと慣れて、危なっかしさが減ってからだなぁ。

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5月23日(水)   天気:晴れ

 今週二度目の「昭和の日」。朝からまた「今夜は昭和の日だよ」と言って、学校から帰ってきてからもあまりパソコンをやらず、台所で私のそばをうろちょろしながら過ごしていた。夜には一緒にトランプをしたり、本を読んだり。学校から帰る途中、図書館に回って新しい本を仕入れてきたので、その中の「カタツムリ」の科学本を読む。
 風呂から上がってから、私が連絡帳を書く間、布団に入ってテレビを見ていたが、たまたま映ったのが珍しいものベスト3の番組で、非常に面白くて、結局全部見ていた。私も途中から一緒に見たけれど、その中で鍾乳洞を取り上げていて、ちょうど「しょうにゅうどう」の本も借りてきていたところだったので、昇平と夢中になってしまった。番組が終わってからその本を確かめてみたら、なんと、テレビで鍾乳洞を紹介していた先生が筆者。う〜ん、なんという偶然! 「カタツムリ」を読み終えたら「しょうにゅうどう」の本に移るけれど、おかげでとびきり関心を持ってくれそうだ。
 週に二回の「昭和の日」。昇平の関心の幅を広げていくのに絶好の機会になっている気がする。

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5月24日(木)   天気:晴れ

 診察日。
 最近、昇平はその日学校であったことを主治医に話すようになった。今回も一日の内容をずっと教えていたが、その中でも、飼育槽を準備してカブトムシの幼虫を放したことを詳しく話していた。とても興味を持った出来事だったらしいが、その幼虫をどこから持ってきたのか、買ってきたのか、それとも? と主治医に聞かれると、「わかんない」。「それじゃ、この次までに先生に聞いてきてね」と宿題にされていた。そんなふうに話をする相手が質問したときに説明ができることが次の課題ですね、というようなことを、後から主治医に言われた。
 実際にはカブトムシの幼虫はもらったものだったので、どこから来たものかは誰もわからなかったのだけれど、それはそれで、「先生が持ってきたから、幼虫をどこから来たのか、ぼくは知らないんだ」というふうに話せるといいんだと思う。相手が何を知りたがっているか、相手にどんな情報を提供していくか。――会話をするということは、常にそういうことを考えながらするわけだから、これからはその練習をしていくといい、と言われたのだと思う。ことばのキャッチボールができるようになるために。

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5月25日(金)   天気:曇りのち雨

 明日は運動会。でも、午後から雨が降り出して、夜にはかなりしっかり降っていた。
 「運動会、大丈夫かなぁ」と心配する昇平。ついでに、「L子ちゃん、ちゃんと椅子カバー持ってこられるかなぁ」とL子ちゃんのことも心配。椅子の脚カバーを持ってくるのを忘れたL子ちゃんは、担任から「明日忘れたら運動会に参加させないよ」と言い渡されたらしい。そこで、椅子カバーを忘れたってちゃんと運動会には参加できること。ただ、できれば忘れずに持ってきて欲しいから、先生はわざとそういう言い方をしたこと、さすがにそう言われたら、L子ちゃんだって「大変!」と思って、忘れないで持ってくるだろうから……と説明した。
 普通の子なら、それくらい当たり前に理解するところだけれど、そのあたりの語り手の心理を丁寧に教えていくことが、昇平には必要なんだよね。そういう場面に出会うたびにこまめに丁寧に、だな。がんばろ。

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5月26日(土)   天気:晴れ

 前日の雨も上がり、晴天の下、運動会になった。昇平最後の運動会。郡山の実家から、私の両親も見に来た。

 開会式=30分くらいと長くて、帽子や髪の毛をしきりに気にしていたけれど(一種の退屈しのぎ)、それ以外には自分の場所を動くこともなく、きちんと参加していた。応援合戦では歌も歌い、皆と一緒に拳も上げてしっかり応援していた。
 ラジオ体操=昇平の協調運動能力の現状がとてもよく見える場面。相変わらずひとつひとつの動きをピシッと決めるのは難しそうだったけれど、今回はまともにラジオ体操をできるようになっていた。体をぐるりと回したり、後ろにそらしたり、ということができるようになっていたのには感動した。
 チャンス走=カードを拾って、同じカードの女の子とペアを組み、カードに書いてあった課題をこなしてゴールへ向かうという競技。昇平は大玉を二人で運ぶカードを引いたようで、真ん中くらいでゴールしていた。なわとびや二人三脚のカードだと、昇平には難しくてペアの子に迷惑をかけるだろうと思ったので、無難なカードでホッとした。
 200M走=出だしからゴールまで終始ビリ。おかげでこちらは絶対に見逃さない。 「歩いた方が速かったんじゃないか?」とは、足の速かった父の評だけれど、まあ、私に似てしまったんだからしょうがないでしょ。(笑) でも、200Mもの距離を最後までしっかり走りきったのはとても偉かったと思った。
 団体競技=大玉を担架に乗せて四人で運ぶゲーム。紅白対抗だから責任重大。昇平はL子ちゃんと同じ組で一緒に走っていた。玉を落とすことなく無事に次のチームに渡すことができて、見ているこちらのほうが安堵した。旦那も「無事に大役を果たせて良かった」と胸をなで下ろしていた。

 運動会、個人競技の成績ではなく、団体競技がとにかく気になる。ちゃんと参加できていて、本当に良かった。準備係の仕事は、本人が何の競技の時に仕事をするかわからなくて見逃してしまったけれど、これもちゃんとできたらしい。一安心、二安心。
 暑くて疲れて大変だったけれど、(昼休みにはバテて横になっていた。昼休み後、席に戻ってからは一時腹痛がしていたらしい。)、文句も言わず、最後の最後まで本当によく頑張って参加していた昇平だった。

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5月27日(日)   天気:晴れ
 今日は家族全員が休み。家でのんびり過ごして、昨日の運動会の疲れをいやした。

 夜、旦那と父の日のお祝いの話をしていたら、聞きつけた昇平が「母の日はいつ?」。今年は子どもたち、母の日をまったく意識していなかったからなぁ。(苦笑)
 もう過ぎちゃったよ、と言うと、「今からでもプレゼント欲しい?」と昇平。うん、くれるならほしいなぁ。お母さんの絵を描いてほしいな。「えー……(自信のない声)……手紙でもいい?」 うん、手紙でもいいよ。
 すると、昇平、手近な紙にさらさらとこんな手紙を書いた。

「お母さん いつもありがとう。今日もがんばってね。
 ゆうしゃフルートのぼうけんも がんばってつくってね。
   昇平より (大きなハートマーク) 」

 ……思わず笑ってしまった。

 「勇者フルートの冒険」も頑張って作ってね、かぁ。
 うん、母は今、それにすごく力を入れているからね。君と一緒に作り始めた物語。今はもう、驚くくらい本格的なファンタジーになっちゃって、今の君には難しくて読めなくなってしまっているけれど。
 でも、そこに込めた想いは、物語を作り始めた当時と変わらない。「フルート」は、君のような子どもたちの物語。個性的だけど、なにかしら身体や能力にハンディキャップ的な偏りを持つ少年少女たちが、巡り会い、偏っている能力を補い合って強大な敵に立ち向かい、一緒に成長していく。君たちだって、きっとそうだよ。自分の持っている力を出し合って、自分らしく生きていくことがきっとできるよ――なんてメッセージを、ひそかに込めながら書いていたりする。
 いつか、君がもっと大人になった時に、難しい方の「フルート」も読んでくれたらいいな……。

 「お母さん、手紙をもらえてうれしい?」と昇平が聞いてきた。うん、すごく嬉しいよ。
 すると、昇平は驚いた顔。「お母さん、本当にうれしいの? そんな――そまつな手紙が、そんなにうれしい?」 うれしいよ。本当に、ものすごく嬉しいよ。
 とたんに、昇平は感激した顔になって、「お母さん、ありがと〜!」と抱きついてきた。
 ありがとうって言うのは、お母さんの方なんだけどね。(笑)

 本当にありがとう、昇平。
 君が優しい頑張る子に育ってくれていることが、お母さんには何よりのプレゼントだよ。

[07/05/28(月) 10:16] 学校 日常 療育・知識 発達障害

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