昇平てくてく日記2
小学校高学年編
10月(4)〜成長と法事
10月22日(月)
今日も公園まで一緒に散歩に行った。その後、家庭学習が難しいのにかんしゃくを起こして、パソコンデスクを殴りつけるうちに上板を打ち割ってしまって、デスクの表面が陥没。最近力が強くなってきたからねぇ。「ぼくを叱ってください!」と自罰を要求するけれど、これはパニックを起こしている証拠。「しょうがないよ。キーボードを置くには不自由なさそうだから、とりあえずそれで使いなさい」と言うけれど、暴言は続く。この暴言もパニックの証拠。それでも、自虐的なことばや暴言ではなく、「本当は自分は何を言いたいのか」を確かめながら、「どうしたらいいか」を話し合っていくうちに、自分で壊した場所に厚紙を貼って補修することを思いつき、実際にそれをして、比較的短時間でパニックから立ち直ることができた。時間にすれば15分くらいだっただろうか。以前だったら1時間以上混乱していたし、安定剤を頓服させる必要もあるくらい、当人にとってはショッキングな出来事だったのに。
もちろん、こちらが落ち着いて対処したというのは大きいと思うけれど(これで、こちらまでデスクが壊れたことにびっくりしたり怒ったりしたら、パニックは増長してなかなか収まらなくなる)、それにしても、自力で立ち直る力がついてきたように思える。
パニックが収まった後でも「自分はだめだ。この失敗は死ぬまで忘れない」と落ち込みながら言うので、「うん、死ぬまで覚えていて。そして、次にまた腹が立ちそうになったら、“そうだった。この前みたいなことが起きるかもしれないから、やっちゃいけないぞ”って思い出してね」と話した。そうしたら、落ち込みからもけっこう早く回復したように見えた。
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10月23日(火)
昨日のパニックの一件を連絡帳で報告したら、学校で何か失敗した時にも「一生〜だ!」とか「死ぬ!」などと自己否定することばがほとんどなくなって、たとえ言っても立ち直りが早くなっている、という連絡をもらった。家でも学校でもそうなら、確実にその力(パニックから立ち直る力)がついてきたってことなのだと思う。
マラソン大会に向けての練習開始。業間の休み時間に校庭を走るのだけれど、去年まで「ぼくはいい!」と言って走らなかった昇平が、今年は嫌がることもなく、「もう終わっていい?」と言うこともなく、皆と一緒に8周も走っていたという。このあたりにも成長を感じます、とドウ子先生からのコメントがあった。
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10月24日(水)
今日も学校でも家でも落ち着いて過ごしていた。
学校では5時限のうち4校時までは協力学級で過ごしていたけれど、何ごともなく穏やかな一日だったそうだ。マラソン大会の練習では、またがんばって8周走ったけれど、何周したか気にしながら走るので明日からは目で見てわかりやすい支援をします、と連絡帳にあった。ドウ子先生、今度は何をするのかな? 楽しみ……。
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10月25日(木)
マラソン練習で、何周したかわかるように1周ごとに数字プレートをつけた輪ゴム(プールのロッカーの鍵のようなもの)を腕にはめるようにしたところ、効果大で、しっかり走れたそうだ。しかも、張り切っているのでスピードも出てきたという。
昨日の体育では「1周50秒以内で走る」という目標を立てて、それに向かってがんばっていたらしい。これは、6年生全員が、それぞれ自分に合わせて違った目標を立てているのだという。走るという行為そのものは同じでも、そこで目ざす目標はひとりずつ違う。これが本物の「特別支援」だなぁ、とつくづく感じた。うちの学校は本当にいい先生方が揃っている。
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10月26日(金)
(ドウ子先生の連絡帳から)
作文集に載せる作文を書くために、メモを作り始めました。「マンガ家になりたい」という内容で昇平君が書いた短い文に、私が質問を書き、その答えを昇平君が書く形で内容を広げています。本人にも興味のあることなので、出来事を思い出すより書きやすいようです。
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10月27日(土)
本当に、連日昇平は落ち着いて過ごしている。特に問題もないので、今日は特記事項なし。
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10月28日(日)
今日は主人の実母の二十七回忌の法要があった。ごく親しい親戚を招いただけのこぢんまりとした集まりだったけれど、お寺に行ってお経をあげてもらい、墓参りをしてから会食をした。
昇平は法事にまともに参加するのは初めて。「法事ってなに?」と聞くので、「仏教の儀式だよ。いつものお墓参りとかは小さな儀式。今度のはお寺でお坊さんのお経も聞くんだけど、人数は少ないから中くらいの儀式だよ」と教えたら、「ぼくは何もしないで、ただそこにいればいいんだね」と、なんとなくイメージがわいたようだった。
実際には、約30分の法要の間、私とは離れたおばあちゃんと兄ちゃんの間の席に、本当に静かに座り続けていることができた。焼香も、他の人のしていることを見ながらちゃんと同じようにやっていた。後から聞いた話によると、目を閉じてお経を聞いていたおばあちゃんを見て、「目をつぶるのが本当なの?」と、そっと尋ね、「どっちでもいいんだよ」と教えられて、その後も自分は目を開けてお坊さんのすることを見ていたらしい。
静かにするべき場面を自分でわきまえていたことに、まず感心。おばあちゃんのしている様子を観察して真似しようと考えたことにまた感心。さらに、迷惑にならないようにそっと質問したこと、30分もの間静かにし続けることができたこと……とにかく、私たち家族もびっくりするほど立派な態度だった。さらに墓参りの時には、自主的に手桶に水を汲んで運んでくれて、久しぶりで昇平を見た親戚たちも、「大人になったこと!」と目を丸くして感心していた。
本当に――子どもは成長していくんだなぁ!
[07/10/29(月) 10:05] 学校 日常 発達障害