昇平てくてく日記2

小学校高学年編

11月(4)〜学校集会・トラブルとその対応

11月19日(月)

(ドウ子先生の連絡帳から)

 今日は明日の学校集会の準備をしました。(注:年に一度、クラスごとに企画をして行うミニ学園祭のようなもののこと)
 ゆめがおか学級では「しんぶんし迷路」をするので、新聞を三枚ずつ貼るのですが、昇平君はもちろん簡単にできますが、他の子どもたちが難しかったり、できなかったりするので、ずっと気になって「一生貼らない気か!!」などと怒っていました。それで、十枚貼ったところで「昇平君は終わっていいよ」と図書室へ移動させ、他の子どもたちとは一緒にいなくてもいいようにしました。
 “他の人たちの存在とやっている状況にも気づくようになった”ということは成長なのでしょうが、それに伴い、集団活動、特にゆめがおかのように年齢もバラバラで、みんなが同じくできない中の集団活動は難しくなった、というのも事実です。
 放課後も六年生だけ残って迷路作りを手伝っていきました。小さい子どもたちを気にしなくて良い分、「楽しいねぇ」とたくさん働いていました。

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(母の連絡帳から)

 下級生が上手にできなくて、いらいらして怒ってしまったこと、自分でも報告していました。
 一年生は六年生の昇平たちよりできることがとても少なくて、やる気もなかなか続かないこと、昇平も低学年の頃にはそうだったけれど、6年たってここまでできるようになったこと、だから一年生たちもちゃんとできるようになっていくことを話し、でも、それまでにはとても時間がかかるので、昇平としては

 心の中で「一年生なんだから、できなくてもしょうがない」と考える。
    ↓
 でも、「そのうちできるようになるさ」と考えてあげる。
   ↓
 だから、今はうまくできなかったり、ふざけたりしているように見えても「気にしない」ことにする。


 と、自分の中でどうしたら良いかについて話し合いました。

 本人に「どうしたらいいと思う?」と聞くと、すぐに「気にしないようにする」とは応えるのですが、本人なりに状況を判断して行わないと、ただ意味もわからず我慢するだけになるのだろうと思いました。
 もちろん、こう言い聞かせても、それが即実行できるようになるはずはないのですが、折にふれて繰り返し話して聞かせることで、本人の中に少しずつでも定着していってくれたら、と考えています。

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11月20日(火)

(ドウ子先生の連絡帳から)

 今日の学校集会で、昇平くんは前半各クラスを見て回り、後半、自分たちの学級の受付の仕事をすることになっていました。
 すると、前半終了直前の時間に、隣の4−2の女の子が数名、困ったように「昇平くんが怒っていて、どうしていいかわかりません」と私のところへ訴えに来ました。見に行くと、順番待ちで廊下の椅子に座っていましたが、隣の一年生女子と自分の椅子の間を拳で叩きながら、「まだ待たせる気か! いつまで待たせるのか!!」とすごんでいました。周りの子も困った表情なのですが、順番を待っているので動くこともできず、一年生の女の子は怖がっていました。どうやら、待っている人が多くてなかなか自分の番が来ないことに怒っていたようで、順番を抜かされたり……ということではないようでした。また、前半があと少しで終了し、後半になると自分は仕事をするためにその出し物ができないこともわかっていて、「もう一生できないのか!?」とパニックになっていました。
 そのうち、後半への移動の音楽がなり、一年生の女の子も「あ、交代しよう」と席を立つと、パニックも最高潮になってしまい、「わぁ〜、ぼくも仕事の時間だぁ」と泣き出してしまいました。それ以上はその場にいることは無理なので、今日は使用していなかったゆめがおか2組の教室に連れていって、“待つのは仕方のないことで、みんな並んで待っていること”“それができなくても、時間が来たらさっきの一年生のように自分の持ち場につかなくてはならないこと”“昇平くんが仕事をしないと「しんぶんし迷路」に来たお客さんが困ってしまうこと”を話すと、とりあえず納得はしました。人手が足りないので、すぐ仕事につき、表情は固まっていましたが、時間と共に戻っていきました。その後、「お母さんに怒られる!!」とそれにこだわりだしましたが、それもしばらくするとおさまりました。
 4−2に来て待たされるまでは、各クラスを回って歩き、(混んでいるのでそれなりに待たされていたはずですが)楽しんでいたのですが、やはり、誰か介助に付く必要があったのだなぁ……と反省しました。

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(母の連絡帳から)

 今日は家でも大パニックでした。パソコンのゲームのBGMの音が突然出なくなり、なにをしても復旧しなくなって、泣いて大騒ぎ。いつもはこれほどまでにはならないのに、という騒ぎ方で、とうとうリスパダール(精神安定剤)を頓服させました。やがて少しずつ落ち着いてきて、別の音の出るゲームを始めて切り替えることができましたが、そのうちに突然先のゲームの音もまた出るようになって(原因は不明)、昇平は大喜び。すっかり落ち着いてから、「ぼく、今日は疲れちゃったのかなぁ」と言っていました。

 最近の様子を見ていて、「予想外のことが起きる」または「予定していたことができなくなる(できなくなりそうになる)」とパニックになって怒り出すのがわかったので、それを本人と確認してから、「そういうときでも怒らないようにしていこうね」と話し合いました。折にふれて何度も言い聞かせたり、少しでも我慢できたらほめていこうと思っています。

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11月21日(水)

(ドウ子先生の連絡帳から)

 「予想外のこと〜」「予定していたことが〜」とは、当たり前の日常生活や集団生活、社会生活の中では普通に起こることですので、“避けることでパニックを回避する”というわけにはいきませんね。昇平くんにの特性としては耐え難いとしても、生活していくためには経験から学習するしかない、と私も思います。学校でも、我慢できたらほめること、していきたいと思います。
 今日は作文の清書をしました。昇平くんは下書きはずいぶん前にできていたので他の子の仕上げを先にしていたら、清書ができていないのは昇平くんだけになっていました。そのことを昇平くんに話しましたが、あせることもなく、気にすることもまったくありませんでした。原稿用紙二枚ならすぐ書ける、という見通しが立つからでしょう。清書はとても丁寧に、あっというまにできてしまいました。楽しい作文が出来上がりました。

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(母の連絡帳から)

 今、チャレンジ(家庭学習)の算数で体積の計算の問題をしています。図形系の問題なので、あまり苦もなくやっていますが、今日は一カ所計算ミスの間違いがありました。
 本人は正しく答えたつもりなので(=「予想外のできごと」)「えーっ、そんな馬鹿な!! そんなはずないよ!!」と怒り出そうとしたので、すかさず「ほら、怒らないんだよ」と声をかけると、それ以上は騒がず、自分で間違いに気づいて正しく直すことができました。「直せたのも偉いけど、ちょっと怒っただけで、すぐに怒るのをやめられたのが本当に偉かったね」とほめたら、とても嬉しそうでした。
 家庭学習で間違ったときに怒る――というのは、ほぼ毎日起きることなので、このあたりで重点的にほめていくと、「予想外」にも少しずつ強くなっていけるかも……と思いました。

 夜、自分から6−2の学習予定表を見て、「明日は五校時だ。だから、クラブはない」と確認していました。これまであまり見られなかった行動です。自分なりに、いろいろなことに見通しを立てようとし始めているのかもしれない、と感じました。

※中学校に電話をして、来月上旬に中学校の校長、教頭、特支学級担任の先生方と面談をするアポを取りました。昇平の入学については、次年度の対応の予定等を話し合ってこようと思います。こちらからは、主人と私で行く予定でいます。翌日が昇平の個別懇談ですから、その時ドウ子先生にもご報告できると思います。

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11月22日(木)

 午前中、親の会の学習会へ。テーマは「笑顔になろう〜母親自身を大切に〜」。心理士の先生の指導の下、母親である自分自身の心の状態を知る心理テストを3つほど行った。どれも面白かったが、描画法というので「雨」の絵を描いたら、「大変なことがあっても、その中に思い切って出ていこうとしている気持ちが表れている」というようなことを言われた。絵を見た他の会員たちからは、「なんか雨の中でも楽しそうだね」と言われてしまった。うん、雨の日だって、雨だからこそ楽しめることはあるし、雨だから見つかるものもあると思うんだよね、と話した。ストレスチェックというものもしたが、数字が低いほど良いという困難抵抗力が、なんとマイナス11と出た。(笑)
 まあ、本当にいろいろなことがあるけれど(現に、この日も昇平は学校でトラブルを起こしてきたけれど)、昇平自身の成長を待つ部分も大きくて、一気に良く変わるはずもないから、やっぱり一歩一歩進んでいくしかないんだよね。そんな道のりの中であっても、きっと楽しめること、素敵なことはたくさん見つかるはずだから。

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11月23日(金)

 勤労感謝の日。でも、旦那は今日も仕事。ご苦労様。
 じーちゃんの誕生日なので、ばーちゃんが昼にお赤飯を炊いた。今まで昇平は絶対お赤飯など食べようとしなかったのだけれど、今回初めて「少し食べてみようかな」と言い出して、本当に茶碗に半分くらい食べた。びっくり! いろいろなことに挑戦しようという意欲は、やっぱり伸びてきている。

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11月24日(土)

 兄ちゃんは学校、旦那は仕事。昇平だけが三連休。特に何ごともなく、穏やかに一日が過ぎた。

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11月25日(日)

 旦那と兄ちゃんと昇平と四人で、買い物と外食に出た。久しぶりでファミレスへ。ところが、すぐ隣のテーブルで小さな子がぐずって大騒ぎしていて、昇平は真っ青。あまりにつらそうなので、店員に頼んでテーブルを替えてもらった。ところが、店内が混んでいて、その席の隣にも赤ちゃんが。時々ぐずって泣き出すので、そのたびにまた昇平は食べるどころではなくなって、耳をふさいで固まっていた。幸い、その赤ちゃんはお母さんにあやされるとすぐに泣きやんだので、そのたびに「ほら、泣きやんだよ。今のうち」と食事を進めた。本当に、昇平は小さい子のぐずる声や赤ちゃんの泣き声に弱いのだけれど、それでも大声で怒り出したり、テーブルを叩いたりすることはなかった。料理そのものもおいしかったようで、スープバーやサラダバーに何度も行ってはお代わりをしていた。
 その後、私が欲しい本があったので書店に回ったのだけれど、そこでも店内に赤ちゃんの泣き声が。寒くなったから、外出できなくなった家族連れが来ているのだろう。本を見つけて買うまでに15分くらいかかってしまったけれど、てっきり車の中か店の外に避難していると思っていた昇平が、まだ店内にいた。「昇平は同じ場所を何度もぐるぐる回っていたよ」とは兄ちゃんの証言。書店を出てから、「俺、頑張って耐えたぞ」と昇平が誇らしそうに言った。どうやらファミレスで泣き声に固まったことが残念で、書店でその挽回をしていたらしい。「うん、よく我慢したね。偉かったね」と、たくさんほめた。

 結果はすぐには出てこない。成長が目に見えるようになるまでには、長い長い時間がかかる。
 それでも、昇平は歩き続ける。進む道のりは小さくても、一歩一歩、着実に前へ。
 親の我々にできることは、その成長の力を信じてあげることだね――。


(おまけ)
 心理テストで描いた私の「雨」の絵も載せてみます。

Ame






[07/11/26(月) 11:24] 学校 日常 発達障害

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