昇平てくてく日記2

小学校高学年編

1月(4)〜ベタナミンに切り替えて

1月21日(月)

 リタリンからベタナミンに切り替えて二日目。朝、起きてきたときに、いやにぼーっとした顔つきをしていた。朝食を食べるのにもいつになく時間がかかっていて、じいちゃんから「早く食え」と叱られて腹を立て、それにじいちゃんが怒って険悪な雰囲気に。「朝っぱらからやめてちょうだい」と言って切り上げさせたけれど。
 薬が切り替わった件、実は義父母にはまだ伝えていない。義父の方は、要領よくわかりやすくまとめて伝えないと、理解できないどころか誤解して事態がこじれる可能性が非常に高い。義母の方はきちんと説明すれば理解してくれるのだけれど、その陰で昇平のことをとても心配するので、これまたうっかりありのままには話せない。こちらで充分状態を把握して「ベタナミンでも大丈夫ですよ」と言えるようになってからでないと報告できないのだ。旦那にだけは何でもそのままに話せるけれど、いかんせん仕事で朝早く家を出て夜遅く帰ってくるから、昇平の薬が変わることにも今ひとつ実感がない様子。学校や家での問題を話しても、やっぱり実感としては捉えられないでいるし。とはいえ、この状況は今に始まったことじゃない。そもそもの最初からこんな感じだから、昇平に関しては、結局私が全部把握して、全部決定して、全部対応しなくちゃいけないのよね。
 ……っと。おお、いかんいかん、愚痴ってしまった。愚痴ったってどうしようもないんだから、愚痴るのも時間のムダだわ。(苦笑)
 とにかく、朝は不注意状態がひどい感じで登校したので、学校でどうしているのか心配だったけれど、下校の迎えに行ったら、待ち合わせ場所に来た昇平はもう、しゃんとした顔つきになっていた。連絡帳を見ても、特に大きな問題や変化はなかったらしい。たぶん、ベタナミンの効果が出てくるのに少し時間がかかったのだろう。ちょっと安心した。

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1月22日(火)

 リタリンからベタナミンになって三日目。学校の方にも何か変化があったら知らせてください、とお願いしてあるのだけれど、トラブルがあってもそれはリタリン時代から起こっていたことなので、「特に変化とは言えないようだ」という話。今までにも、静かに落ちついた一日もあれば、こだわりが強くて指導が難しい日もあり……とその日によっても状態が違って、二日目ではまだよくわからないので、引き続き観察します、と連絡帳に書かれてきた。
 家での様子を見る限り、本当にリタリンを使っていたときとほとんど変わりがない。夕方になるとハイテンションになって、本を読んでは独りごとを言ってげらげら笑っている。ただ、なんとなくだけれど、リタリンの頃より落ちついている時間が少し長いような気はする。ほんのわずかだけれど。 

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1月23日(水)

 (ゆめがおかのクラスメートの個人的な変化に関することなので、詳細は省略)
 変化を気にしすぎて、クラスメートに暴言、パニックになったという。リタリンを使っていた頃にも起きていたことなので、薬が変わったせいではないらしいけれど。
 昇平は以前と比べるとかなりクラスメートの言動や変化について「こだわり」が強くなったような気がする。全然自分には関係ないことなのに、そこに関わって、「そんなことをするなんて、おまえは馬鹿だ、カスだ!」と相手をぼろくそに言う。クラスメートたちのほうがわかっていて、そんな時の昇平を相手にしないようにしてくれているので、それ以上のトラブルにはならないけれど。
 こだわりが強まった理由はなんだろう、と考えてみる。
 本当に、リタリンを使っていた頃から起きていたから、薬が変わったせいではない。たぶん、もともと昇平が持っていたものなんだろう。ただ、これまでは本人の不注意度がひどくて、周りの人々の言動や状態が目に入らなかったから、それを気にすることも起きなかったのじゃないだろうか。さらに、昇平自身の記憶力がよくなってきたから、クラスメートたちの気になる行動を忘れることなく「覚えて」しまって、それがこだわりの元になっているような。結局、昇平の「成長」が「こだわり」という現象を助長しているように感じられる。
 とにかく、自分に関係のないことに関わっていってしまうのが問題なのだけれど、これも今すぐどうこうできる部分ではない。本人がさらに成長して、「自分は自分、他人は他人。他人のことはその人自身が心配すればいいことで、ぼくが関わる必要はない」というのを理解できるようになるまでは、何百回でも何千回でも、繰り返し教え続けるしかないんだろうな。
 一日に三回それを言い聞かせるだけでも、一年間で千回以上。う〜ん、何千回くらいですむんだろうか?

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1月24日(木)

 クラスメートの「変化」を知ってパニックになる場面が決まっているようなので、その時にはその子のそばにいないように言い聞かせ、さらに連絡帳を通じて担任にも声かけをお願いしておいた。今日は昇平がいないところで、その子に変化の報告をさせたので、昇平のこだわりも爆発しなかった、という報告があった。一安心。
 掃除の時間に、ドウ子先生が黒板に教室を区画に分けた絵を描いて、「昇平共和国」とか「○○くん王国」と書き込んで、“きれいな国はどこ?”と書いたら、みんな必死で掃いたり拭いたりしたそうだ。昇平も今まで見たことのない素早い動きで掃除をしたので、「昇平共和国には素敵なお姫様が来るかも」とドウ子先生が言ったら、昇平は「女の人はいいです。お金の宝物にしてください」と答えたとか。なんて現実的な共和国頭首なんだ!(笑)

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1月25日(金)

 今日もL子ちゃん相手に暴言が激しかった、と連絡帳に書かれてきた。理由を本人に聞いたら、L子ちゃんが先生に向かって「いや」と言ったからだという。「L子ちゃんは何に対して『いや』って言ったの?」と聞いてみると、「わかんない」。
 これだよね〜。昇平の最近の暴言や爆発のパターン。ただクラスメートが「いや」と言ったとか、「できない」とごねたとか、先生に対して逆らうような様子を見せたとか、そういう決まったことが起きると、とたんに怒り出す。本人はL子ちゃんや下級生たちを指導しようとしているのかもしれないけれど、状況は全然把握できていないから、それは完全に的外れ。本当に、どうやって教えていったらよいのやら。
 ちなみに、家庭の中だと学習中にこれに近いことが起きる。答え合わせをしているときに「あれ、これが違ってるな」などと言うと、「嘘つけ、この野郎!」とたちまち怒り出す。こちらは正答を見て答え合わせしているのだから、嘘のはずはない。「違っているな」ということばだけに条件反射的に反応しているだけ。そういえば、以前は平気だった「ダメ」ということばにも、即座に怒り出すようになっているような。
 ふむ、これらの否定的ことばを使わずに、別の柔らかい表現をするようにしたら、何か変わってくるかな? 試してみることにしよう。

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1月26日(土)

 私は町内会の役員の仕事で一日多忙。夜にも出かけた。昇平は二階に一人でいたけれど、落ちついて留守番していたようだ。
 夜11時半までテレビで映画を見ていた。いつもの就寝時間を大幅に過ぎていたけれど、明日も休みなので大目に見た。というか、面白くてついつい私も一緒に見てしまったのだけれど。ただ、終盤近くになって、私が突然寒気。どうやら忙しすぎて熱が出たらしい。今週は町内会の仕事で連日外出していたし、それ以外にも長男の大学受験の手続きなどであたふたしていたからなぁ。手足が氷のように冷たくなってしまって、毛布を重ねてくるまってやっと眠った。昇平の方は落ちついて寝ていた。

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1月27日(日)

 町内会の行事で朝から外出。朝起きたときにはまだ37.5℃くらい熱があったけれど、解熱剤を飲んで出かけたら、行事の間にどんどん熱が下がって、昼頃にはすっかり平熱になった。その後もだるさは少し残ったけれど、熱は上がらず、何とか役目もやり終えることができて、ほっと一安心。
 午後3時頃帰宅したら、昇平は本を読みながらげらげらと笑っていた。夕方によく見せる様子だったので私自身はなんとも思わなかったのだけれど、旦那が「しまった、昼の薬を飲ませ忘れた!」。なるほど、いつもより早く薬が切れた状態になっていたのね。
 その夜はそれ以上はなんと言うこともなかったけれど、この日記を書いている月曜日の朝は、ものすごく眠そうな、ぼーっとした状態になっていた。ベタナミンの効果がなくなって、不注意が強まったらしい。朝食を食べている間にじいちゃんがすぐ後ろを通っていっても気がつかず、「おはよう」も言わなかった。「今、誰が通っていったの?」と声をかけたら、やっと気がついて「おはよう」を言いに追いかけていったけれど。
 学校などでトラブルがあっても、それはリタリンの時と同じ現象で、薬が変わったせいではなかった。ベタナミンが効いている間は意識はしゃんとしているけれど、切れてしまうと、とたんに不注意が強くなったり、やたらと本にげらげらと笑ってハイテンションになったり、という状態が起きる。どうやら、ベタナミンもリタリンと同様に効いているらしい。いろいろあった一週間だったけれど、薬に関しては本当に安心した。

[08/01/28(月) 21:25] 学校 日常 療育・知識 発達障害

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