昇平てくてく日記2

小学校高学年編

2月(2)〜薬の調整とゲームの友だち

2月11日(月)

 朝8時頃、「L子さんのことが心配になった」と突然しくしく泣き出した。きっかけになることは何もなかったので、フラッシュバックを起こしたのだろうか? 10分くらい泣いて落ちついた。

 ところで、昇平は先週末からまたオンラインRPGの「メイプルストーリー」に夢中になっている。1年以上前に一度熱中して、ある時から突然「もうやりたくない」と言って近寄りもしなくなっていたのだけれど、ゲーム漫画を読んだのがきっかけでまたやりたくなったらしい。以前の登録IDが残っていたので、キャラクターを作り直して初心者からやりなおし。でも、見ていると遊び方はちゃんと覚えているし、なにより同じゲームをしている他のプレイヤー(ネットを通じて同じゲームをしている実在の人間)との関わり方が以前よりじょうずになっていた。

 ゲーム以外の時間は庭で雪遊び。私大の受験が一段落した兄ちゃんとテレビゲームもしていた。朝、突然泣いたけれど、それ以外は落ちついていて楽しそうだった。 

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2月12日(火)

(ドウ子先生の連絡帳から)
 フラッシュバックかな、と思えること、学校でもありました。
 朝、1年生の子の弟くんが廊下で泣き声のような高い声を出し、それがつらくて涙を流していた昇平くん……でも、怒ったり拳を作ったりしなかったので「我慢してるんだね、えらい!!」と誉めました。そんなことがあった数分後、弟くんはとっくに帰っていたのですが、また急にはらはらと涙を流しました。「どうしたの?」と尋ねると、「L子さんにバカって言ったときのことを思いだした」と言いました。小さい子の声に耐えていた分、気持ちが不安定になっての出来事かもしれません。
 また、逆に思い出し笑いも多く、空笑と言うより、声を上げて突然笑う、そして止まらない、ということもありました。薬が変わってから、笑いが止まらない、注意しても笑い続ける、という場面は多くなったように感じています。何かを見たり聞いたりいて反応しての笑いではないので、周りでは「えっ!?」と感じるような場面です。同じお薬に変わったお子さんにも同じように“笑う”ことに変化があったことがあり、「どうなんだろう!?」と感じています。その他は落ちついた一日でした。

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2月13日(水)

 学校では相変わらず1年生に腹を立てそうになって我慢したり、L子さんの勉強のことを気にしすぎたり、ちょこちょことトラブルは起こっているが、家では安定した様子が続いている。明日はバレンタインデーなので、「チョコレートちょうだいね。生チョコがいいなぁ」と楽しみにしている。

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2月14日(木)

 午前中、親の会の学習会があった。テーマは「発達障害児の発達と性」。会が発足した頃にはまだ未就学だった我々の子どもたちも、小学校高学年や中学生の年代になってきた。体も心も発達していく時期を迎えて、その変化に親としてどう対応していったらよいか、というテーマで、臨床心理士でスクールカウンセラーのK先生の講話。後半は会員からの事例を元にした話し合い。
 結論。性とは生きることそのもの。思春期は自分の体の変化を知り、他人との関わり方を知っていくための時期。性をタブー視するのではなく、生きていくために大切なこととして学んでいくものと考える。それは定型発達児にもそうでない子どもにもまったく同じだけれど、発達障害を持つ子の場合は、それを知るために一手間、二手間をかけて理解しやすいようにしてあげる必要がある。

 バレンタインデー。今年は家族の男性全員にロ○ズの生チョコをプレゼント。「おいしい〜」と昇平も兄ちゃんも大喜び。ただ、子どもたちとまったく同じチョコだった旦那だけが、ほんのちょっと複雑な顔をしていた。(笑)

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2月15日(金)

 午後3時過ぎ、ドウ子先生から突然「すみませんが迎えに来てください」と電話がかかってきた。5校時目の後に昇平とL子さんとでトラブルがあり、いつもは我慢してくれるL子さんも今日は怒って「昇平くんなんて嫌い! もう友だちじゃない!」と言ったことから大パニックを起こし、そのまま下校させるのは危ない気がするから、という話。あわてて学校まで迎えに行った。
 私が教室について先生から話を聞いている間も昇平はまだ興奮していて、母を叩いたりしたけれど、パニックで吐く暴言に「そういうのにはお母さんは返事はしません。落ちついたら返事をします」と「無視」の宣言をして車に乗せ、スーパーで買い物をする間、車中に一人にしておいたら、買い物から戻ったときにはすっかり落ちついていた。帰宅してからも落ちついた状態は続いたけれど、さすがにかなり疲れた顔をしていた。
 こういう大パニックは家ではめったに起こさないけれど、思い通りにならないことが起きる学校では日常茶飯事のことらしい。学級のみんなももう慣れっこだという。パニック自体は珍しくなかったけれど、下校途中の安全を考えて私が呼ばれたのだ。ただ、薬が変わってから、急に怒り出したりするような不安定な場面が増えたようだし、L子ちゃんの勉強のことをあまりうるさく言うのでL子ちゃんもそれを気にするようになってきた、ということなので、病院に連絡して、明日、急きょ受診することにした。

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2月16日(土)

 午前中病院へ行き、主治医に状況を報告。不安定になる場面はあるもののそれ以外の時には落ちついているので、効果はあるのでしょう、ということで、ベタナミンはそのままにして、精神安定剤のセレネースを微増して様子を見ることにした。
 午後から歯医者の予約も入っていたけれど、一日に病院二カ所は負担が大きいので、歯医者は延期。午後、ゲームをするうちにだんだん元気になってきた。

 メイプルストーリーではまた新しいお友だちが二人できて、その人たちと「明日の○時に××の場所でまた会おうね」と待ち合わせの約束。(チャットのようにパソコンで文字を入力してやりとりができる。) ところが、その途中で急に回線状態が悪くなったのか、日本語入力ができなくなり、しまいには通信も切れてしまった。怒りながらそれでゲームを終わりにしようとするので、「ちょっと待って! お友だちには何が起きたかわからなくて、きっと『どうしたんだろう?』って思っているから、急いでもう一度アクセスして、お友だちがいたらわけを説明しなさい!」とアドバイス。昇平は、どうせもうその友だちはいなくなっているだろうと思っていたようだが、行ってみたらちゃんと待っていた。無事に事情を説明し、明日の約束もきちんとできて、めでたしめでたし。終わってから「どんな気持ちだった?」と聞いたら、「ちゃんと約束できて嬉しかった」という答え。うんうん、その気持ちが大事だよね。
 メイプルストーリーは、どうやら小学校高学年から中学生くらいの同年代の子どもたちが多く遊んでいる様子。昇平にとってはちょうど良いSSTの場になるかもしれない。母の目配りは必要だけれど。

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2月17日(日)

 兄ちゃんは休み、旦那は出勤。兄ちゃんとテレビゲームをしていたが、兄ちゃんに言われてキャラクターを快く譲ったり、自分が負けても、その負け方がおかしかったと兄ちゃんと笑って楽しんだり。遊び方、関わり方が格段に進歩しているのを感じた。

 メイプルストーリーでは昨日約束した友だちとゲーム世界の中で無事に再会して、一緒にプレイをしていた。「なんだか本当に友だちと待ち合わせしてるみたいだ」と嬉しそうだった。……学区外の学校に通っていることもあって、実際には、昇平は友だちと「待ち合わせ」をした経験がまだ一度もない。ゲームの中の世界とはいえ、対等な友だちができて、その友だちと待ち合わせて遊べて、とても良い経験をしているんじゃないかな、と思う。

[08/02/18(月) 24:49] 学校 日常 療育・知識 発達障害

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