校外学習
昇平は昨日、中学校の校外学習で会津若松市へフィールドワークに行った。
会津若松は戊辰戦争の舞台にもなった歴史の町で、市内には鶴ヶ城(つるがじょう)という天守閣が再建され、あちこちに史跡も多い。子どもたちはグループでコースを決めて数カ所を回るのだが、その際の交通手段は自分たちで選ぶし、昼食の場所や内容も自分たちで決め、手作り体験も何か一つ必ず組み込むことになっている。子どもたちだけで回って歩くだけに、皆どきどきしながら、楽しく真剣に活動に取り組む。
とはいえ、昇平は子どもだけのグループで一緒に行動するのはちょっと無理。何事も起きなければ良いけれど、こういう活動の場合は昇平が原因でなくても、いろいろな突発的なトラブルが起きやすい。予定のバスに乗り損ねたとか、道に迷ったとか……。そういう困難に自分たちだけで対処するのも重要な学習体験になるのだけれど、そこに昇平が加わると、不安からパニックを起こしてしまって、同じ班員の子どもたちには対処できなくなる。周りがよく見えない子だから、迷子になる可能性も高い。
というわけで、昇平とL子ちゃんだけは二人だけのグループで、そこに担任の岩沢先生と介助の赤井先生が同行。保護者としては、これ以上ないというほど安心できる体制での校外学習になった。
ただ、学校だってちゃんと考えている。昇平たちが自分たちで考えて行動するように、と準備の段階からいろいろ配慮していた。「彼らが大人になっていくための経験の場」という意味づけは、昇平たちにとっても同じだったと思う。
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出発当日は集合が朝6時40分と早い。集合場所まで家族の車で送られてくる子も多いのだけれど、昇平は「自転車で学校までいって、自転車を置いて集合場所のプールの駐車場まで行くんだよ」と言った。そうかそうか、そこからもう「自分たちで」行動する学習が始まっているのね。それじゃあ、と朝5時半に起こして自転車で行ってもらった。いつもは宵っ張りな昇平が、前の晩はちゃんと早く風呂に入って早く寝た。
当日の午前10時半頃、突然公衆電話から私の携帯に連絡が入った。
公衆電話を使うのは昇平だけだから「何事かあったか!?」と焦ったけれど、電話に出てみたら、「無事についたよ〜。今、お城の会館。赤べこの絵付けをしてね〜、お土産も買ったよ」と楽しそうな声。こっちは一気に力が抜けてしまった。(笑)
上の写真は、その時に絵付けした赤べこ。べこ、というのはこっちの方言で「牛」のこと。会津名物の張り子の牛で、首を振るようになっている。表情がいかにも昇平らしい。
その後、老舗の和菓子屋さんまで歩き、そば屋で昼食を取り、またお城へ戻って博物館と天守閣の中の展示館を見る、というコースだったようだ。夕方、自分で自転車で帰宅して、「疲れた〜」とは言っていたけれど、とても元気だった。楽しい経験をしてきたらしい。
「途中でL子ちゃんとちょっと仲違いしちゃったけれど、ちゃんと解決したよ。疲れてたし、L子ちゃんのことを誤解していたんだ」という自己申告もあった。そうか〜、そういうこともあるよね。でも、ちゃんと解決できたんだから良かったよね。そんなふうに言いながら、解決の背景に先生方の働きかけを感じた。
「ぼくが『死んでやる!』って言ってたら、トラックの運転手のおじさんが二人通っていって、笑っていたんだ」とも話してくれた。そりゃそうだろうねぇ。外でそんなことを言うと、笑われちゃうから恥ずかしいよね。「うん」
トラブルも、自己分析と解決のための良い経験。本当に良い学習をしてきたようだね。
出発の前日、必要経費の他に三千円ほど余分にお金を持たせながら、「自分のお土産の他に、家にも何かお土産を買ってきなさいね。お菓子がいいと思うな」と話して聞かせたら、自分で学習のしおりの表紙に「うちへのおみやげ、おかし」とメモっていた。忘れずに買ってきたお土産は、老舗の和菓子屋の名物大福。自分自身には小さな赤べこのストラップを2つと、刀のキーホルダーを1つ買って、あまりの千五百円くらいを戻してきた。ちゃんと予算内の買い物もできた、というわけ。
昇平がお土産を買ってきた、と聞いて、じいちゃんとばあちゃんはとてもびっくりしていた。じいちゃんなどは大喜びで、「おいしい大福を買ってきてくれてありがとう!」と昇平に小遣いまでくれた。後出しの餞別かな?(笑) 昇平も、とても嬉しそうな顔をして、もらった小遣いはすぐに貯金箱に入れていた。本当に、校外学習がどれほど本人を大人にする体験になったのやら。なんだかすっかり感心してしまった。
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他の子と同レベルのことはできなくても、自分に合ったスタイル、自分に合わせたレベルでの経験をして、大人になっていく。
本当に良い学習をしてきたなぁ、と親としても、とても嬉しい一日だった。
[08/09/03(水) 09:06] 学校