昇平てくてく日記3

中学校編

広汎性発達障害の診断が付きました

 自立支援の更新の時期が近づいてきたので、継続のために病院で診断書を書いてもらったら、新しい診断名が加わっていました。

 今までの昇平の診断は、「主たる精神障害:注意欠陥多動性障害(ADHD)」と「身体合併症:てんかん」。そこに今回初めて、「従たる精神障害:広汎性発達障害(PDD)」と記載されていました。

 広汎性発達障害を一般的な言い方に置き換えると、「自閉傾向」になるでしょうか。
 はい、やっと、昇平の「自閉スペクトラムの特徴」が正式に診断されました。やった〜〜!!


 なに喜んでるの。強がり? やけくそ? 無理やり?
 と心配する方がいらっしゃるかもしれませんね。でも、これは本心です。

 昇平の言動の記録を見ていれば、あるいは当人と関わっていれば、彼に自閉症の特徴もあることは、はっきりわかります。なのに、昇平の診断名はいつまでたっても「ADHD」と「てんかん」だけ。最近は社会性の困難さのほうも際だってきて、いかにもという感じなのに、いつまでも私が「診断名としてはADHDだけです」と言っているものだから、「このお母さんは我が子が自閉症なのを認めたくないんだろう」とか「自閉症の診断をしない医者だから、それで主治医にしているんだろう」とか。まぁ、有言無言の非難と言うんでしょうか。そういうのがずっとありました。

 実際には、私のほうから主治医に「まだ自閉の診断はつきませんか?」と聞き続けてきたし、診断はなくても自閉の特徴に合わせた対応もしてきたつもりです。主治医はなかなか自閉と診断してくださらなかったけれど、主治医の指導は自閉スペクトラムに準じたものだったし、薬もその他の対応も昇平にはとても良く合っていました。病院だって、我が家から近いし待ち時間も短いから、昇平に楽に通院できて非常に好都合です。ただ「自閉」の診断名をつけてもらうためだけに、せっかくここまで継続して診てもらった主治医を変え、本人に合っている治療を捨てて、病院を変えるメリットを感じなかったのです。
 セカンドオピニオンにかかって診断をもらっては、と勧められたこともありますが、これも、主治医との信頼関係を崩しそうで、あまりやりたくありませんでした。私たちは、今診てもらっているこの主治医から、自閉の診断をもらいたかったのですね。


 今回、広汎性発達障害という自閉スペクトラムの診断名が正式に下りた背景には、昇平のADHDの特徴がおちついてきたことがあるようです。
 これまで、診察室での昇平は、多動と衝動性がひどすぎて、主治医とまともに会話することができませんでした。診察室をあっちへ飛び回り、こっちへ行き、質問されても全然聞く耳持たず。5分もたてば「さようなら」と勝手に部屋を出て行こうとする始末。
 それがこのところ落ちついてきて、さらに質問に答えたり自分から説明や話をしたりする社会性が伸びてきたために、主治医との会話も成立するようになりました。その結果、主治医にも、昇平が持つ「社会性の困難」「会話の成立のしにくさ」という、自閉スペクトラムとしての特徴がはっきりわかった、ということのようです。
 それに、「診断のごみ箱」などと言われて、診断基準にあてはまらないものにつけられることが多かった「広汎性発達障害」が、最近は研究も進んできて、自閉症スペクトラムの一種という位置づけが確立してきたという印象があります。今回の背景には、そんな事情もあったのかもしれません。

 先の診断書には、昇平の状態像の説明として、こんなことも書かれていました。

「状況の理解がよくなってきたがマイペースが見られ、目の前にあるものなどにこだわってしまいがちです。ことばからのインプットが著しくしにくいPDDのパターンも見られています。」

 まったくそのとおりだと思います。


  ☆彡☆彡☆彡☆彡


 昇平には、ADHDに加えてPDDの診断も下りましたが、実際には本人はこれまでとまったく変わりません。
 家族や学校の先生、友人、その他昇平に関わる人たちの態度も全然変わりありません。支援の仕方も同じです。

 自分に障害があるとわかってから、昇平は前よりも自分を見つめるようになってきました。
 かっとなりやすいとか、すぐパニックを起こして騒いでしまうという自分の特徴を理解して、それをなんとかコントロールしようと、学校で毎日努力しています。その甲斐はあるようで、「最近、かっとなってもすぐ落ち着くなど、感情の振幅の幅が小さくなってきたようです」と担任から連絡帳に書かれてきました。
 自分が考えや気持ちを思うようにことばにできないことも自覚していて、最近では、相手に伝わるような言い方をしようと努力しているようです。考えながらことばを選んで話した後、「今の話し方、わかりやすかったでしょう?」と聞いてくることもあります。

 自主学習や家庭教師との勉強もがんばっています。明日から学年末テストですが、多すぎる範囲に怒りながらも、ノルマの学習時間と、「これだけはやろうね」と決めた内容はちゃんとこなしていました。彼は確かにADHDを持っていますが、同時にPDDもあるので、自閉的な几帳面さがADHDの集中力の弱さをカバーしているのかもしれない、などとも思います。

 先日は虫歯の治療に歯医者に行きましたが、途中で診察台から起き上がることも、「次は何をするの!?」「何回削るの!?」と治療の予定をしつこく尋ねることもなく、落ち着いて座って、黙って治療を受けていました。先生や歯科技工士さんのほうで、今までの昇平を想定して「もう少しだからね〜」「もうちょっと我慢してね〜」と何度も声をかけてくれていて、昇平の落ちつきぶりと対照的でした。終わればお礼を言うし、待合室のトイレに先客がいれば「すみません、失礼します」とちゃんと断って入っていくし……あれまぁ、なんとまぁ、と私はただただ驚くばかり。
 子どもは本当に成長していくものですね。子ども自身に合わせた対応と指導を続けていけば、こんなふうに変わっていくんだ、とつくづく感じてしまいました。

 大切なのは、診断名ではなく、その子の状態像を正しくつかんで、それに合わせたやり方を見つけていくこと。
 ただ、診断名はそのための大きな手がかりになるから、やっぱり、状態像をきちんと伝えられるものがもらえれば、それにこしたことはないですね。
 そういう意味で、とてもほっとすることができた、今回の診断でした。

[09/02/18(水) 23:09] その他

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