昇平てくてく日記3

中学校編

プロフィールノートを作る

 来週の月曜日から、いよいよ新学期が開始。昇平は中学2年生になります。

 担任や教科担当が大幅に入れ替わるとわかっているわけですが、今年度は介助の先生もつかないらしい、という噂も聞こえてきました。あくまでも噂なのですが、考えてみれば、昨年度の情緒級の生徒数は5名(当初は6名。1人は通常級へ)、今年度は新入生を迎えて3名。予算難の昨今、この状況で介助がつくのは、確かに難しいかもしれません。
 ということは、昇平は特支学級でも協力学級(交流学級)でも、介助の手助けなしで、自分一人でやっていかなくてはならない、ということ。クラス替えもあって大きく環境が変わる中、この状況は本人にも学校の先生たちにもかなり負担になるのが目に見えます。
 さて、どうしよう?

 考えて、久しぶりに昇平の「プロフィールノート」を作成しました。昇平の特長と対応のポイントを説明した文章です。小学校の4年生くらいまでは毎年作って、その年の担任の先生にお渡ししていたのですが、それ以降はあまり必要を感じなくなっていました。でも、さすがに今年はあったほうが良さそうです。
 中学生活も丸一年過ぎて、昇平や先生方が何にどんなふうに困るのかも見えてきました。そこにポイントを絞って作ったのが、以下のプロフィールノートです。ちなみに、ワードで作成しました。


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朝倉昇平の担任・担当の先生方へ

 昇平の母親の朝倉玲です。今年度、息子が大変お世話になります。
 昇平は発達障害を持っていて、困難や発達の未熟な点が他のお子さんより多くあるので、学校生活の中で困った場面が起きることがあるだろうと考えています。以下に彼の特徴と対応のポイントをまとめましたので、指導や対応に困ったときに参考にしていただければありがたく思います。


1.場面の理解が苦手です。特に、口頭での話や指示の理解が大変です。

 普通、これくらいのことは見てわかるだろう、聞いてわかるだろうと思えることが、わかっていなかったり、部分的にしか理解できていなかったりします。特に、耳で聞き取って理解する力に困難があるので、口頭での指示や人の話は理解しにくいです。そのため、活動の見通しが立たなくなって不安になり、パニックを起こして騒ぐことが多々あります。
 重要な内容の場合には、必ず本人がわかっているかどうかを確認してください。また、本人が質問してきたときには、わかるように教えてやってください。文字や絵で見て理解する能力は高いほうなので、特別な活動内容、準備物、課題、次回予定等がある時には、メモなどに書いて渡すと安心してすぐに落ち着きます。
 口頭で指示する場合には、わかりやすいことばでゆっくり話しかけてください。矢継ぎ早に話しかけると、聞き取れなくなって怒る場合があります。


2.パニックを起こしたら、静かな場所でクールダウンさせてください。

 周囲の刺激に弱く、興奮しやすい特徴があります。パニックを起こすと激怒して、暴言・乱暴な行動を起こす場合があります。落ち着かせようとして無理に抑えつけるとさらに興奮するし、叱りつけてもやはり興奮するので逆効果です。静かな声で話しかけて落ち着かせてください。興奮がひどいときには、刺激から離して静かな場所でクールダウンさせてください。
 本人は起こしたくてパニックを起こしているわけではないので、落ち着いた後にはとても落ち込みます。指導等は、本人が完全に落ち着いてから、静かに言い聞かせるようにお願いします。


3.本人の自尊心を尊重してやってください。

 未熟な点は多々ありますが、それでも中学生らしい自尊心が育ってきています。他のお子さんたちと同じように、自分の話に耳を傾けてもらえなかったり、一方的に命令されたりすると怒ります。また、言いたいことはあるのに、なかなかことばにまとめられなくてイライラする様子も見られます。自分で自分の未熟さを感じて、なんとかそれを改善しようと頑張っているので、それがうまくいかなくて怒ったり落ち込んだりすることもよくあります。
 本人の気持ちや努力を認めてやってください。頑張ろうとする態度が、少しずつ改善と成長につながるのだと思います。本人が努力することを諦めたり、学校不信や人間不信になって自分の人生を投げ出してしまわないよう、先生方の理解と支援をどうかお願いいたします。また、絵を描くことなどは得意に感じているので、得意なことを認めることで本人の自信を伸ばしていただければ幸いです。


※ 学校だけでは対応に困ることが起きた場合にはいつでも話し合いに応じますので、ご連絡ください。
 また、主治医も「相談したいことがあればいつでも病院へ電話して下さい」と言っています。私たちに断りなくご相談くださってかまいません。
  主治医:M病院 Y院長  ×××−××××(代)


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 本当は、プロフィールノートには昇平の長所や性格の特徴、学習していくときのスタイルや学習指導のコツなども載せたいのですが、上記の内容だけでA4版の用紙1枚分になってしまったので、そこは省略しました。あまり分量が多いと、忙しい先生方に読んでもらえなくなるのでは、と思ったからです。
 たとえば他の学校から転任してきて、昇平をまったく知らない状態でこれを見せられると、「いったいどんな過激な子どもなのだろう!?」と驚かれてしまうかも、とも思うのですが、パニックを起こすと収集が大変になるし、学校で一番対応に困るのがこのパニックなので、しょうがないかな、と考えています。

 内容的には、パニックの予防と対応に絞り込んであります。1.は見通しが立たない不安から来るパニック、2.は興奮しやすい特性から来るパニック、3.は自尊心を傷つけられたことから来るパニックについてです。
 1や2は昔から見られましたが、3は中学生になって顕著になってきました。それだけ大人になってきたんだなぁ、と思います。家庭でも、今までのように「○○しなさい」と頭ごなしに指示したりはしないで、昇平の気持ちを聞きながらアドバイスする形に変えています。……なかなか急には変えられなくて、しょっちゅう昇平を怒らせてますけどね。(苦笑)

 主治医に相談の電話をかけても良いことは、昨日の定期診察で改めて許可を得ました。
 私としては、学校が対応に困ったとき、子どもを診てくれている病院に相談するのは当然のことだと思っていたのですが、中には「勝手に相談した」と怒る保護者がいたり、相談されるのを迷惑がる医者もいるのだそうで、学校としても相談をためらう場合があるのだそうです。学校と保護者と病院は連携して子どもの対応を考えていくべき、と言われながらも、現実にはなかなか難しいものなのだなぁ、とつくづく思いました。
 また、先生によっては、病院に相談したことを知られたくない場合もあるだろうとも思ったので、「断らないで相談してかまいません」とあえて明記しました。

 このプロフィールノートを、担任を通じて、昇平に関わる先生方全部にお渡ししようと思っています。
 これをどう受けとるか、どう利用してもらえるか、それはやってみないとわかりません。ただ、きっと困った場面というのは起きるだろうし、「どうしたらいいだろう?」と先生が困惑したときに、「そういえばあんなものがあった」と思いだして読み直してもらえたら、少しは助けになるかもしれない、と考えています。

 新学期まであと二日。
 昇平は、若干の不安は感じているものの、それでも前向きに二年生になろうとしています。
 この彼のがんばりや努力を、どうか先生方が受け止めて支援してくださるように――と心から願っています。

[09/04/04(土) 05:45] 学校

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