昇平てくてく日記3

中学校編

パニックのコントロール

(連絡帳の長谷田先生のコメントから)
○11月20日(金)
 今日も落ち着いた、穏やかな一日でした。授業にも一生懸命取り組みました。
 この頃、表情が明るくなったように感じます。パニックを起こす回数も減ってきているようですし、最近はパニックを起こさないようにコントロールできるようになってきています。これも成長の証しなのかもしれません。
 明日から三連休です。ゆっくり休養し、来週も元気に登校できるよう、よろしくお願いします。

 ※明日、L子さんとKくんが午後1時に遊びにうかがうそうです。


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 半月ぶりの日記更新になってしまいましたが、家庭での昇平の様子も、担任のコメントと同じような状況です。
 とにかくまず明るくなりました。表情が良くなり、言動が前向きになり、かんしゃくやパニックを回避する努力を自分からするし、例え起こしても短時間で落ち着くようになってきました。それに比例するように家族に対する態度も優しくなってきて、自分から気を配ったり、いたわったり。大人になってきたなぁ、と感じされされます。

 この変化の転機はどこだっただろう? と振り返れば、やはり、学校の中に「避難場所」を作ってもらい、家庭で「できる自分」を実感できる取り組みをした、1学期末から夏休みにかけての時期にあるように感じます。(→ 「夏休みの報告」
 パニックを起こしそうだ、と感じたときに自分から「避難場所」の別教室に移動できるようになったので、学校でのトラブルが減りました。「俺は恐ろしい奴だ。自分で自分がどうしても抑えられなくて、ひどいことを言ったりやったりして、友だちや先生を傷つけてしまうんだ!」とパニックから落ち着くたびに泣いていた昇平ですが、避難場所に移動することで、そんな自分をコントロールできるようになってきた、と実感できるようになってきたようです。
 夏休み中も、「やればできる自分」を実感することと、「楽しいイベント」や「そのままの自分でも受け入れてもらえる場所」を数多く経験できるように力を注いだので、夏休みが終わる頃にはかなり自信を取り戻して、夏休み明けにはまた前向きに学校へ通えるようになりました。間もなく2学期も終わろうとしていますが、学校での昇平の様子は、上のコメントのような感じです。本当に良かった、と思います。


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 昨日は、長谷田先生も知らせてくださったように、同じ学級のL子さんと隣の学級のKくんが我が家に遊びに来てくれました。L子さんは昇平の同級生ですが、Kくんは1学年上です。二人が遊びに来るのは、今回が3回目。約束はいつも学校でして、午後いっぱいゲームをして遊んでいます。
 中学生とはいえ、どの子もそれぞれに特徴や社会性の困難を抱える子なので、関わりの「交通整理」は不可欠です。彼らが遊んでいる間、私はずっと同じ部屋か隣の部屋にいて、パソコンで仕事をするふりをしながら目配りして、必要に応じて声をかけたり、仲介したりします。最初はけっこう大変でしたが、回を重ねるごとに遊び方がうまくなってきて、昨日は互いに譲り合ったり、許し合ったり、相談し合ったり……とても楽しそうで、良い感じでした。

 ただ、昇平は、友だちと遊べる嬉しさのあまり、うっかり昼の薬を飲み忘れました。楽しく遊んでいるのに、時々イライラするようになり、それが時間と共に頻繁になっていくので、こっそり本人に確認してわかりました。その時点で午後3時半。午後の薬を飲むには時間的に遅くなっていたし、本人も友だちのいるところで薬を飲みたくはないので、「いい、飲まなくても大丈夫だから」と言って、そのまま遊んでいました。その後も、イライラしてもすぐに抑えて謝る、自分勝手なこともしない、ということを頑張っていましたが、午後4時半、もうすぐ友だちが帰る、という時間になって、とうとう爆発しました。ほんのちょっとしたことでL子ちゃんと言い争いになったので、間に私が入って調停、仲直り。最後には3人で協力してミニゲームをして、みごと対戦相手のコンピューターに勝ってお開きとなりました。
 その後、爆発してしまったことに、しゅんとしている昇平に、「この次、友だちと遊ぶときには、忘れずに薬を飲もうね。あれはイライラを減らしてくれるお薬だから」と話して聞かせ、本人も「ぼくがイライラしていたのはそのせいだったのか」と気がつき、また明るい顔になりました。この次は、きっと飲み忘れたりしないでしょう。


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 パニックもトラブルも、いきなりゼロになってしまう、ということはありません。本人が自分の性格や特徴を自分で把握して、それを自分でコントロールしようとしなくてはならないから、その成長に時間がかかります。長い長い自分との戦いです。
 そのための原動力はどこから来るのかといえば、やはり、「自分を信じる気持ち」なんだろうと思います。ぼくにはできる。きっと自分を良くしていける、と信じる心があるからこそ、失敗しても「こんなことで負けていちゃダメだよね」「人間は何度でもやり直せるんだよね」と言って、再挑戦できるようになります。(左のセリフは、本当に昇平自身がよく口にすることばです) その不屈の積み重ねは、時間と共に、目に見える変化になっていきます。もちろん、良い方向への変化です。
 昇平に関わる私たちにできることは、そんな彼の自信を支えていくことなんだろうと思います。「うん、何度でもやり直せるんだよ」「以前より怒る回数が減ってきているじゃない。失敗してもいいんだよ。仕切り直して、また明日頑張ればいいんだから」「大丈夫、君もきっと変わっていけるよ」……繰り返しそう語り聞かせ、対策を一緒に考えていくことで。

 ゆっくりと、でも確実に前進を続けている昇平。
 その成長を、これからも見守り、支え続けていきたいな、と思います。

[09/11/22(日) 06:05] 薬・療育

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