昇平てくてく日記3
中学校編
高校へ通うために〜昇平の受験勉強〜
夏休みに入って一週間が過ぎました。毎日本当に暑い日が続いていますが、昇平も私も、他の家族も元気でいます。
今年、昇平は中学3年生。受験生の夏は、夏期講習や受験勉強で忙しい時期なのだけれど、昇平の受験勉強は普通とは少し(いえ、かなり)違います。なにしろ、「高校に入るための勉強」ではなく、「高校に入ってから通い続けることができるための勉強」ですから。
昇平が目ざしているのは単位制・通信制の私立高校。いわゆる五教科の入学試験はありません。素行に問題がなく、本人に学校で勉強する意欲があれば、それに応えてくれる学校だと聞いています。通信制なので、毎日学校へ通うわけではありませんが、本人の希望と状態に合わせて、学校へ通う日を多くすることができることも特徴です。
昇平の場合、学校へ行くのが週に一日だけとか、月に数日だけ、という一般的な通信制高校では、学校の日数が足りません。本人は「学校へ通えない」のではなく、「緩やかなスケジュールの下で、自分に合ったペースで学校に通って学ぶこと」を求めているのですから。
親としても、学校の中や、その登下校の間に経験することが、すべて彼を成長させると考えています。自分で駅まで行くこと、駅から一人で電車に乗ること、目的地で降りること、そこからまた学校まで自力で行くこと……途中でお弁当を買う、電車の待ち時間を店やゲーセンで過ごす、街中や電車の中で出会った人と上手に接する……体育の授業を受けるために、バスに乗って体育館へ行く、という、もうひとつの大きな課題もあります。
もっと近い場所に、楽に通える学校があればいいのに、という考え方もありますが、私たちは、このくらいの課題があるほうが、本人の自立のためになって良いと考えています。自力で交通機関を利用して移動できるようになれば、そして、その中で出会う知らない人とうまく同席できるようになれば、昇平の「生きるための力」は格段にアップしますから。
というわけで、この夏休みは、「入学するための勉強」ではなく、「入学してから学校に通うための勉強・練習」がメインになっているのです。
今日は、電車に乗って福島駅まで行く練習をしました。
「え、今頃そんなことを?」と驚かないでください。
このあたりは路線バスも走らない場所で、最寄りの駅まで自転車でも20分以上かかるので、移動はもっぱら自家用車を使います。昇平も、物心ついたころから、ずっと車で移動してきて、公共交通機関を利用したことがほとんどありません。まずここから教えてあげないと、自力で高校に通えないのです。
家から駅までは自家用車で行きましたが、これは、彼がもう自分だけで自転車で駅まで行けるようになっていたから。中学になって自転車通学をするようになってから、自分で町中のあちこちへ行くようになって、駅のすぐ近くまでも行けるようになりました。「運動になるから」と、片道30分以上かけて歩いていくことさえあります。本当にたくましくなりました。
まず、メモ帳に駅の見取り図を書いて、電車に乗る手順を図と文字で教えてから、実際に駅の券売機で切符を買ってもらいました。今まで電車になんて、数えるほどしか乗っていない昇平です。少しまごつきながらも、無事に切符を買いました。
電車に乗ってからは、通学に定期券を使うこと、それを利用すれば、いつでも(学校のない日でも)自由に福島市まで行けることを教えました。昇平は、福島の駅ビルや駅前でしょっちゅう遊んできたので、これには大喜び。併せて、単位制・通信制の高校の勉強の仕組みなども、改めて教えたのですが、「高校ってすごく自由な感じがするね」と喜んでいました。
そろそろ自立したい年頃になってきた昇平です。「自分の力と判断に任されるようになる」ことに、不安より、嬉しさや期待の気持ちをふくらませたようでした。
福島駅に着いてからは、昇平自身の希望で、志望校まで歩きました。以前通ったルートを半分くらいは覚えていたので、もう一回歩けば、きっと大丈夫になるでしょう。
学校の前で引き返して、駅ビルに戻ってからは、昇平はゲーセンへ、私は本屋へ。その後、マクドナルドで昼食を取って、(昇平はお目当ての「サトシのピカチュウ」たるものをDSにダウンロードしていました)、もう一軒別の書店へ回って、また電車に乗って帰路につきました。
ただそれだけのことでも、昇平には、いろいろなことが新鮮な経験と喜びだったようです。きっと、高校というものと直結したことだったからでしょう。
これからも、折を見て、福島市まで電車で出る練習をしていく予定です。
電車を乗り過ごしたり、何か困ったことが起きたりしたときにどうしたらいいか、電車の中や街や店では、どういうマナーを守らなくてはならないか、実際に彼と一緒に行動しながら教えてあげなくてはならないことが、たくさんあります。
高校入学までにそれを教えて、実際に高校が始まったときには、自信を持って電車通ができるように、そして、高校で勉強することに専念できるように、なっていてほしいと思っています。
本当に世間様とはかけ離れている受験勉強ですが、生きていく力を身につける場としての高校であってほしいと思うので、我が家ではこれからもずっと、昇平のニーズ最優先でいくつもりです。
[10/07/29(木) 16:23] 薬・療育