昇平てくてく日記3

中学校編

昇平3行日記・5

※全然3行で収まっていない3行日記。

10月25日(月)
 土曜日の学校祭の振り替え休日だったので、昇平と病院へ行って、最近の不安定について相談して、軽い抗鬱剤を処方してもらってきた。夜に小さな錠剤を1錠飲むだけなので、難しくはない。
 日中は落ち着いて過ごしていたが、夜布団に入ってから、嫌なことが浮かんできたようで、11時半に私が寝に行ったら、まだ寝つけずにいた。
 不安定がひどくなっているので、安定剤も頓服させたが、なかなか効かなくて、結局1時近くになって、ようやく眠った。明日からまた学校だから、不安になってしまったんだね……。

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10月26日(火)
 週始めの不安と睡眠不足でなかなか起きられない。声をかけてようやく起こし、本人のペースで支度をさせ、朝食を食べさせて、私の車で学校まで送った。10分くらいの遅刻。
 学校では1〜3時間目まで、教室の後ろについたてを立て、マットと毛布を持ち込んだ特設スペースを作って、そこで寝ていたらしい。それでスッキリしたのか、4〜5時間目はしっかり授業を受けたが、その後、6時間目と掃除の時間にはまた寝ていたらしい。
 迎えに行ったら、「掃除の時間の後で目が覚めたときに、また嫌なことが頭に浮かんできたんだけど、長い時間金縛りにはならなかったんだよ」と教えてくれた。金縛りというのは、嫌な記憶がフラッシュバックしてフリーズしてしまう状態のこと。以前は解けるまでに10分くらいかかったのが、今回はあまり時間がかからなかったらしい。「お薬の効果が出てきたんだね。良かったね」と話した。

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10月27日(水)
 寒い朝だったが、割と順調に起きてきた。「今日は自転車で学校に行く」と言っていたけれど、次第に不安になってきて、「風邪気味だから送ってちょうだい」と言い出し、出かける直前にはまた少し落ち込んでいた。ただ、以前より落ち込んで動けない時間は短くなってきている。
 2カ月前から予約していた、スクールカウンセラーとの相談日。高校受験のための面接練習は、本人の考えやものの見方をまとめる意味でも、非常に効果が出ているが、最近の昇平の状態にはとても心配していただいた。ちょうど4校時目に面接練習も入っていたので、その時に昇平の話も聞いてくださることになった。
 相談から帰宅して間もなく、学校の昇平から電話。今日は実力テストだったのだが、その途中でL子さんが大声を上げたことで昇平もパニックになり、「もう我慢できない」「家に帰りたい」と言ってきた。4時間目に面接練習があること、この後のテストはL子さんと別の部屋で受けさせてもらうよう担任に言ってあげることを伝えると、なんとか納得して、「最後まで頑張ってみる」と電話を切った。実際、面接練習をし、テストも最後まで受けることができ、疲れたけれどやり切った、という顔で帰ってきた。
 夜、校長先生たちと一度お話ししたいことを、連絡帳を通じてお願いした。

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10月28日(木)
 咳が少しずつひどくなってきているが、今日は学年の球技大会で授業がないので、落ち込むこともなく登校していった。学校でも、試合に少し出て(ボールはまったく受けられなかったようだが)、あとは交流クラスの応援をしていたらしい。
 こうなると、昇平の登校しぶりの原因も特定しやすい。やはり、「勉強がわからなくなってきていること」。そのことで、自分はダメな人間だと思い知らされるから、学校に行きたくないんだよね。どうやって、それを乗り越えて自信を見つけるか。……誰もが経験する大人への通り道かもしれないけれど、発達障害を持つ子の道は、定型発達の子どもたちよりも困難が多いと感じる。
 校長、教務主任、学年主任の先生方との面談は、日程調整中。

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10月29日(金)
 夜寝る間もマスクをさせたら、咳がぐっと少なくなって、一安心。
 今日も学校では穏やかに過ごしたらしい。車で送迎したけれど、今朝は行きしぶることはまったくなかった。
 嫌なことを思いだして落ち込む場面はまだあるけれど、落ち込んでいる時間がとても短くなった。抗鬱剤もうまく効いているようで、これも一安心。

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10月30日(土)
 いよいよ、昇平の登校しぶりのきっかけになった数学の二次関数を、私が教え直しすることにした。
 やってみると、一生懸命考えて理解しようとするのに、どうしてもわからないでいることが感じられた。元々、数学にはそれなり自信があったから、その事実がショックで、一気に自信喪失してしまったらしい。
 どこかにつまづきがあると感じたので、あれこれ調べ、X(エックス)の二乗の出し方がよくわかっていないことを発見。これではできるはずがない。数学の教科書を読んでみると、導入部が昇平には非常に理解しにくかったこともわかった。ここできっと混乱したんだろう。明日、もう一度、つまづいたところに戻って教え直すことにした。
 午後はL子ちゃんが遊びに来てくれて、二人で楽しそうにゲームをしていた。

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10月31日(日)
 午前中、家庭教師と数学。先週お願いしていたとおり、二次関数をスキップして、次の円周角の単元の予習に取りかかってもらった。図形は得意なので順調に進んでいたが、終わったときに「ぼくはダメだ」と自信のないことを言ったという。
 午後、私とまた二次関数。つまづいたところを理解した後は、グラフが書ける、二次関数のグラフの特徴もわかる、二次関数の式を選ぶ問題もできる……。「当たってるよ」と言うと、「えっ、本当に?」と驚いていて、その後はとても元気になった。
 つまづきのクリアが問題だったわけだけれど、私にそれができたのは、昇平に信頼してもらえていたからかもしれない。とても落ち込んでいた昇平だけど、私のことばだけは届いたから。ペアレント・トレーニングを学び続けてきたのは無駄じゃなかった、と思った。 

[10/11/01(月) 08:49] 3行日記

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