昇平てくてく日記4

高校編

〔11〕友だち同士

6月27日(月)
 病院へ行ってからフリースクールへ。
 待合室に昇平の苦手なタイプの患者さんが待っていたので、自分から「外で待っている」と車に戻っていったのだけれど、いざ順番が来たので呼びに行ったら、ゲームに夢中になっていて、いくら診察室で待っていても来なかった。私だけが主治医と話をしてから、車に戻って「もう診察終わっちゃったよ!」と言うと、「えっ!」と驚いて診察室に飛んでいった。私に呼ばれた「らしい」とは思ったものの、ゲームを中断できなくて、診察室に行かなかったのだという。
 そりゃぁね、昇平が座っている場所から一番遠いドアを開けて呼びかけていたし、車内が薄暗くて、彼がこっちの言うことを認識したかどうか、よく見えなかったから、私が悪かったんだろうけれど。それにしても、今でもやっぱり不注意は健全だったか〜、と改めて思ってしまった。「すみませんでした。次は呼ばれたらすぐに来ます」と昇平は主治医に謝っていた。

 それが直接の原因ではないと思うけれど、フリースクールから帰るのに電車を待つあたりから不調で、嫌なことを思い出してはひとりで涙ぐんでいたらしい。夜も調子が悪かったので、9時には就寝した。

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6月28日(火)
 今日は1,2,3校目と、午前中ずっと学校の授業の日。
 昨日に引き続き調子が悪かったが、なんとか早起きして登校していった。

 最近の様子から、昇平の悩み事にこちらがずっとつき合うのも、考えが切り替わりにくくなって、不調の一因になっているのでは、と感じるようになってきた。そこで、帰宅してから「だいぶ悩み事も整理ができてきたようだから、これからは一日に一度、15分だけ昇平くんの悩みを聞くことにするね」と言ってみた。
 その後、折に触れて何度となく悩みの話を始めようとしたけれど、「今、今日の分の話をするの?」と聞くと、「今はまだいいや。夜になってから話す」と思い直していた。実際に夜になって話はしたけれど、15分しかないと思うと本人も要領よくまとめて話したいと考えるようで、ぐるぐるとエンドレスな悩みにはならないで、前向きな話が出てきていた。
 明日はフリースクールの日だが、友だちのSくんも来るとわかって、いっそう元気になり、夜には久しぶりにwii-fitで体も動かしていた。

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6月29日(水)
 フリースクールの日。
 Sくんも来て、時々一緒に悩みの話などもしたらしい。ネットで他人を傷つけるような書き込みをする子どもの話をすると、「その人はなにか生活の中でイライラするようなことがあったんじゃない?」とSくんが言ったそうで、忘れないように、と帰宅してからすぐにメモに書き留めていた。

 昇平とSくん。年齢は昇平の方が1歳上だけれど、見ていると、なんだか同じようなことで悩んでいる気がする。直接の悩み事は違っているのだけれど、どちらも自分と周囲の人たちとの「違い」に気づくようになって、孤独感や孤立感、理解してもらえない苦しさや苛立ちを感じているんじゃないだろうか。
 そんな中、学校も学年も違う二人が、フリースクールで共に過ごして、悩みを話し合っている。このことの意味は、きっと、とても大きい。
 Sくんがフリースクールに来るとわかると、昇平はとても嬉しそうになる。Sくんのほうでも、昇平がメールで誘うと、「それじゃ行ってみようかな」とフリースクールに行く気になるのだそうだ。本当にいい友だち同士になったと思う。

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6月30日(木)
 学校の授業がある日。
 午後からの授業だったけれど、私は市の障害児サークルの意見交換会があったので、「自分で時間を見て登校してね」と言って出かけた。その後、ちゃんと時間通りに出発したようで、「電車に乗りました」「駅前の軽食店でラーメンを食べてます」などとメールで報告をくれた。自分でいろいろと行動できることが、とても嬉しそう。
 授業は英語だったけれど、最近英語も調子がよいので、夕方元気に帰ってきた。

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7月1日(金)
 今日は学校でレポート学習会があった。
 昇平は普段から授業のない日にも学校に行って、職員室でレポートのわからないところを先生に教えてもらっているので、わざわざレポート学習会に参加する必要はなかったのだけれど、学習会の後の清掃に参加すると、特別活動の単位がもらえるというので、「出てみたら?」と勧めてみた。
 ところが、実際に行ってみたら、「家庭科のレポート内容がショックだった」そうで、「レポートが全部終わらなかった! 今日はもうこれ以上勉強できない!」と小パニックを起こして電話をかけてきた。その電話も、周囲がうるさくてなかなかこちらの声が聞き取れなくて、さらにパニックに。しかたないので一度電話を切って、もっと静かな場所に移動するようにメールで指示した。
 どうにか落ちつきを取り戻して帰宅したので、話を聞いてみると、レポート学習会には生徒が20人くらい参加していたので、混乱したり、理解できなくなったりしても、先生のほうでもすぐには対応できなくて、その間に昇平の混乱が大きくなったらしい、とわかった。
 まあ、昇平の場合、レポートはきちんとやって提出しているし、いろいろな行事にも参加できているので、レポート学習会に出なくても問題はない。「これからはレポート学習会はパスして、今まで通り職員室で先生に教えてもらう形のほうがいいみたいだね」と昇平と話した。
 本当に「集団」に弱い子どもであるわけだけれど、そこに配慮をしてもらえればちゃんと学べるのだから、無理に勉強会に参加させる必要はない。ただ、それを本人と家族が確認できたという意味で、一度参加してみたのは悪くはなかったと思っている。

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7月2日(土)
 友だちの家族と一泊で山間の宿泊施設へ。
 自炊の施設なので、子どもたちにも料理を手伝わせたり、施設の職員の方に本物の蛇を見せてもらったり。「ポケモンのジャローダってこんな感じかな?」と昇平も興味津々で蛇に触っていた。夜は花火などもして、久しぶりで楽しいひとときを過ごすことができた。
 昇平のブログに写真が出ているけれど、「蛇」が苦手な人はご注意ください。

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7月3日(日)
 お泊まりとなると、子どもたちは本当に早起き。朝5時半には起きて遊んでいた。親のほうも昨夜1時頃まで話していたから、すっかり寝不足。朝8時にはチェックアウトしたけれど、くたびれて、帰宅してから昼寝してしまった。
 昇平にはいいストレス発散になったようで、夜まで機嫌良く過ごしていた。

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☆昇平のブログ→ 「Dark Silver Zone」
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[11/07/04(月) 07:30] てくてく日記

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