昇平てくてく日記4

高校編

〔59〕遠足と友だち

5月28日(月)
 今年度初めての体育の授業があった。
 体育は福島駅前の学校ではなく、バスに乗って15分ほどの場所の体育館で行われる。昨年1年かけて一人でバスで行けるように練習して(体育が1年に6回しかないので、これだけ時間がかかった)、今は駅前のバス停で乗るバスを間違えないように気をつけてあげれば大丈夫なところまで来た。運賃もICカードを使えば小銭を準備する必要がないので安心だし――

 と思っていたら、昇平がバスに乗ろうとして、ICカードにエラーが出た。えっ、有効期限切れ?
 通常のICカードには期限はないのだけれど、昇平は障害者割引で購入しているので、期限切れになっていたのだ。
 しかたがないので現金で乗ってもらおうとしたけれど、それはまだやったことがないので出来ない、と昇平は言う。発車時間はどんどん迫る。あわてて考え、思いついて、バスの運転手から新しいICカードを購入した。割引は効かないけれど、文句は言えない。
 昇平は新しいカードを持って体育館へ行き、古いカードのほうは私がバス会社の窓口へ持っていって、期間延長してもらった。体育館から戻っても新しいカードには残金があったので、これは義母に使ってもらえることになり、どれも無駄にならずにすんで、一件落着。よかったよかった。

 昇平が体育から戻ってくるまでの間、昇平が中学生の時にお世話になった家庭教師のH先生と、駅前のカフェテリアで待ち合わせて、おしゃべりをした。昇平が卒業した後も、私が体育の付き添いで福島市に出たときに、こうして先生とお会いしている。とてもステキな時間が過ごせるので、付き添いの時の私のお楽しみ。
 本当はそろそろ昇平一人で体育へ行ける段階に来ているのだけれど、今日のような予想外のトラブルが起きることもあるし、付き添いにかこつけないとH先生ともなかなか会えないと思うので、もうしばらく付き添いは続けようかな〜、などと考えている。

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5月29日(火)
 今日はフリースクールの日。
 スクールに来ている男の子たちと一緒に「モンハン」のゲームで狩りに行った、と嬉しそうに帰ってきた。

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5月30日(水)
 学校の遠足で那須ハイランドパークへ。
 去年も参加したので、今年が二度目。去年使い残した回数券をそのまま持たせることができた。
 先週学校で友達になったYくんも参加していたので、バスの中から一緒で、ゲームの話をたくさんしたり、一緒にパークを回ったり、レストランで昼食を食べたりしたのだという。「すごく楽しかった!」と元気いっぱいで帰宅した。

 話を聞いてみると、Yくんはなんと30歳。現在は一人暮らしだが、高校卒業が夢だったので、がんばって今年、通信制のこの高校に入学したのだという。なるほどなぁ、と思わず納得した。
 そのぐらいの年齢ならば、コミュニケーション能力があまり高くない昇平ともうまく付き合えるだろうし、昇平は昇平で、相手が10歳以上も年上だったからといって、そのことで付きあいを敬遠するようなことはしない。双方とも友だちはほしかったわけだから、ニーズも条件もちょうど一致したことになる。
 昇平とYくん――いや、Yさんと言うべきか――は、バスの中で携帯の番号も交換したらしい。
 「学校にもお友だちができて良かったね」と言うと、「そうなんだよ!」とすごく嬉しそうだった。

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5月31日(木)
 今日はフリースクールが休みだったので、学校へ行くのも休みにして、一日家でゆっくりさせた。
 日中は落ち着いていたが、夜8時半頃になって少し不安定になってきたので、リスペリドンを飲み、9時に寝室に引っ込んだ。9時半にはぐっすり寝ていたので、やはり前日の疲れもあったのだろう。

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6月1日(金)
 学校の職員室へレポート学習へ。
 その間、家ではインターネットの光回線開通工事が行われていた。これで我が家もとうとうフレッ○光。通信速度が上がって快適になったけれど、昇平が別のパソコンで動画を見ていたりすると、いきなりまた重くなる。これはしかたがないか。

 私は少し風邪気味なので、早めに寝た。その後、昇平が少し不安定になって寝室に来たが、私が本調子ではなかったので、また明日ゆっくり話そうね、ということにした。

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6月2日(土)
 昇平はたっぷり寝て、また元気になった。
 元気になったところで少しずつ話をして、社会について誤解して学んでしまったことを少しずつほどいていく。今は、幸せと金の有る無しは、関係があるようで実は関係なくて、幸せも不幸せも自分の心が感じて決めていくことなんだ、という話をしている。
 納得するまでには何度も同じ話をしなくてはならないけれど、自分自身のまわりの出来事や出会った人々を思い出すことで、ゆっくりと理解を進めている。

 夜、伊達市内の阿武隈川の河川敷で、震災からの復興を祈念した花火大会があった。
 少し距離はあったが、我が家の2階の窓から真っ正面に見えたので、私は家から花火見物。昇平は歩いて会場まで行って、花火と屋台と「楽しそうな人々の様子」を楽しんできた。

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6月3日(日)
 旦那が半ドンだったので、久しぶりに3人で焼き肉バイキングの食べ放題へ。昇平は旦那と同じくらい、がっつり肉を食べていた。私は総菜やパスタ、サラダ、デザート類などを。その後は、書店に回って欲しかった本を何冊も見つけて買ってきた。
 我が家の休日はだいたいこんな感じ。家族で外食をしてから本屋やスーパーに回って帰宅、というパターン。これでみんな充分楽しいんだから、これで良し、と。 

 そういえば、朝にはYさんから昇平にメールが来たらしい。「レポートが終わらない」とあったので、「まだ間に合うよ。がんばって」と返事をしたという。
 普通の子どもたちであればごく当たり前のやりとりだけど、昇平にとっては画期的な進歩だ。

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☆昇平のブログ→ 「やつむの日常」
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[12/06/04(月) 10:54] てくてく日記

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