昇平てくてく日記4

高校編

てくてく日記・199「自分の障害について学ぶ」

2015hahanohi
母の日のお祝いはケーキ
(息子たちではなく旦那が買ってくれた)

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5/4(月)〜5/10(日)

月:みどりの日
火:こどもの日、自分の障害について学ぶ
水:振替休日、障害者職業センターへ行ってみる
木:フリースクール
金:フリースクール
土:休日
日:母の日、買い物へ

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 心理カウンセラー心屋仁之助さんの本を読み聞かせるうちに、昇平が自分について考え始めたことは、前回の日記に書いた通りだけれど、「ぼくはどうしてこんなふうなのかな?」「これはどうしてこんなふうになるんだろう?」と、自分の障害特性についても疑問に思うようになってきたので、説明に良さそうな本を探して『これでわかる 大人の発達障害』(成美堂出版/林寧哲監修)という本を見つけた。大人になるまで発達障害に気づかなかった当事者や家族に向けた本なのでわかりやすいし、今年出たばかりの本なので情報的にも新しい。まず私が一通り読んでから、昇平が「ぼくはどうしてこうなのかな?」と言ったタイミングをつかまえて、「それについての理由やヒントが書かれてる本を見つけたんだけど、読んでほしい?」と切り出してみた。

 昇平はもうすぐ二十歳になるし、折に触れて障害についても教えてきたのだけれど、本人の頭にはしっかり入っていなかった。自分に障害があることはわかっていても、「なんていう名前の障害か覚えてる?」と聞いたら、「わからない」と言ってから「ADHDだっけ?」。
「うん、それともう一つ、PDDっていうものも持っているんだよ。広汎性発達障害とも言うけれど、自閉症の一種で、一番新しい言い方ではASD(自閉スペクトラム症)って言うんだ。君は二つの障害を併せ持っているんだよ」……と、まずは診断名をきちんと教えるところから始めた。
 次に、本に書かれた障害特性について読み聞かせていったけれど、思い当たることはたくさんあるし、けっしてポジティブには書かれていないので、昇平はだんだんうなだれていってしまった。しまいには「ぼくはこんなに酷い障害だったのか。しかも二つも」とぽつりとつぶやいたり。

 ただ、実際には昇平は純粋なADSからするともうちょっと症状がマイルドで、こだわりや社会性の困難は持っていても、臨機応変なところや好奇心の強いところもある。一方、純粋なADHDならば、落ち着きがなくて整理整頓も苦手になるのだけれど、彼は大きくなってからは本当に落ち着きが出たし、自分の荷物や部屋も彼なりのルールできちんと片付けられている。やるべき事も忘れずにきちんとできるので、今は一見してはADHDがあるようには見えない。(実際にはまだ残っているけれど)
「これはね、君が持っているADSとADHDがうまい具合に補い合っているからなんだよ」と話して聞かせた。
 ADSはかたくなで生真面目で自分が決めたルールを変えたくなくて普段と違うことをするのも苦手。だけど、ADHDはものすごく好奇心が強くて行動力もありすぎるくらいあるのが特徴だから、ADSの堅さをADHDが中和している(ように私には見える)。
 一方、ADHDは落ち着きがなくて衝動性が強くて、やりたいこと優先で面倒くさいことは後回しにしたいのが特性。でもADSの真面目さがそんなADHDをコントロールしていて、「やるべきことはやらなくちゃいけないぞ」と言ってくれるし、衝動的に何かをしたいと思いついたとしても、「いや待て待て、まずいかも知れないぞ」と引き留めてくれるから、危ないことも起きない。
 確かに二つの障害が重なっていることが大きなハンデにはなっているのだけれど、二つ重なっているおかげで、互いに補い合って症状が緩和されているのも事実。
 これは、私が昇平を観察しながら、ずっと思ってきたこと。自閉症(ADS)にしてはけっこう臨機応変、ADHDにしてはきちんとしている。二つの障害特性がうまい具合にフォローし合っているんだなぁ、と。

 この説明は昇平に効果があった。うなだれていた頭が上がって、「へぇ! ぼく(の障害)にもいいところがあったんだ!」と顔がぱっと明るくなった。
 昇平にしてみれば、障害は自分の外ではなく内側にあるもので、言ってみれば彼自身そのものであるから、その障害特性にうまい具合に働いているところもあるとわかって、気持ちがぐっと明るくなったようだった。

 『大人の発達障害』の本では、障害特性の説明の次に、受診から診断までの流れや、薬などを使った治療のあれこれが書かれているけれど、昇平はこの部分はとっくの昔にクリアしているので飛ばして、「生きづらさに対処するヒント」という章に進んだ。
 「○×式思考を乗り越えるために」「こだわりにとらわれたときには…」「自分勝手なルールに気づこう」「人の感情を知るには観察から」……
 昇平自身が困っていたり、うまくいかなかったりすることがいろいろ出てくるけれど、それに対するヒントというのが、すでに実戦していたり、心屋さんの本を読みながら「これからここを頑張ると良さそうだね」と話し合ってきたことばかりだったので、ここでも前向きな気持ちになることができた。
 必要なこと、乗り越えていかなくちゃいけないことはたくさんあるけれど、「すでにそれを始めていた」ので、「今のままでOK。この調子で進んでいこう。ゴーゴー!」という気持ちになったのだと思う。

 本には、発達障害を知った上で、自立した社会生活を営むためのヒントも書かれていたけれど、この日はそこまでは進まなかった。一度にたくさん読んでも疲れて消化できなくなるし、仕事に絡むヒントも多いので、障害者職業センターに通い始めてから読んだほうがいろいろ実践できるだろうし。
 ただ、彼の障害特性やヒントについて読み聞かせた後で、昇平が自分からこう言った。
「ということは、仕事も自分の能力や特徴に合ったものを探せばいい、っていうことだね」
 そうそう! そういうこと!
 自分でそこに気がつけるなんて、よくぞここまで成長してくれたね、と本当に嬉しく思った。


 その翌日には、電車と歩きで障害者職業センターまで行ってみたけれど、長距離に音を上げることもなく、しっかり歩き通してくれた。
 職業センターでも自分の特性を知る取り組みはあるはずだけれど、今回学んだことをベースに、自分に合った職業を見つけていってくれるんじゃないかな、と考えている。
 

(2015.5.11記)

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[15/05/11(月) 13:40] てくてく日記

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