ADHDの子どもへの対処法を考える
 〜ペアレント・トレーニング3回目より〜
ふたりの時間を探そう(スペシャルタイム)

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あなたには、子どもと2人きりになる時間がありますか?

子どもが何人もいる人や、フルタイムで仕事をしている人だと、なかなか子どもと2人きりで過ごす時間は持てないかもしれませんね。
一見、子どもとふれあう時間が多いように見える人でも、実際には炊事洗濯といった家事に追われていて、じっくり子どもと向き合えないでいることって、よくあります。
向き合っていても、親が子に一方的に命令したり、お説教したりする時間になっていることも・・・。

ほんの短い時間でも、子どもと2人きりになってその子をしっかりと認めて上げると、子どもはとても喜びます。
子どもの心が安定し、親子関係がぐっと改善されます。

この時間を、スペシャルタイムと呼びます。
一日の生活を振り返って、スペシャルタイムにできる時間を探してみましょう。



1.スペシャルタイムってどんな時間?

 子どもと2人になれる時間  
 他のじゃまが入らない時間
 気持ちにゆとりのあるとき


 ※短い時間でも良いのです。



実践  「ふたりの時間を探そう」

1.

日常の様子を思い出して、あなたとお子さんが2人きりになれる時間を書き出す。

2.

その時間に子どもはあなたにどんなことを求めてくるのかを書く。

3.

その時、あなたはどうするかを書く。

4.

子どもがあなたの態度に満足しているかどうかを書く。

5.

スペシャルタイムに使えるかどうかを判断する。

子どもの満足する2人きりの時間がある・・・スペシャルタイムとして有効に活用する
子どもは満足していないが、2人きりの時間はある・・・同上
子どもと2人きりの時間がない・・・意識して2人きりの時間を作ってみる
記入例 (我が家の場合)

子どもと2人になれる時間

子どもがあなたに求めてくること

あなたはどうするか

子どもはその態度に満足しているか

スペシャルタイムに使えるか

平日の朝食時

食べ物を取り分けてもらうなど、食事の手助け

手助けはするが、早く食べて欲しいので急かす

満足していない

×

学校まで送迎する車の中

カーステレオに音楽テープをかけてもらいたがる (車中ではゲームボーイをやっているのでほとんど要求はない)

テープをかける

当然のことと感じている

×

夜、布団に入って寝るまでの間

本を読んでもらいたがる

本を読み聞かせる。読みながら本の場面について話をする

満足している

朝食の時間はあわただしいのでスペシャルタイムに使えません。
車の中の時間は、じゃまも入らないので好都合なのですが、昇平がひとり遊びの時間にしているので、やはり使えません。
そこで、寝る前の時間をスペシャルタイムに利用することにしました。


中には、記入してみたけれど、どうしても2人きりの時間が作れない人もいることでしょう。
いつも兄弟一緒にいるので、その子と2人きりになる時間がない、とか。
そういうときには、週に1回だけでもいいから、その子と2人きりになれる時間を見つける努力をします。兄弟が習いものに行っている時間帯とか・・・。
そして、2人きりの時間を過ごした結果どうだったか、表に記入してみます。



2.スペシャルタイムに必ずすること

 親子で話し合って、スペシャルタイムに名前をつける。
 親子で時間を決める(5〜20分間)  
 子どもに主導権を与える
 ほめる(注目する)
 望ましくない行動は無視する


 まず親子でスペシャルタイムに、子どもがのってきそうな楽しい名前をつけてください。
    例)「一人っ子タイム」「ママと遊ぶ時間」「○○ちゃんの時間」etc.

 次に、親子で話し合って時間を決めます。そうしないと、子どもはスペシャルタイムの引き延ばしにかかるからです。(だって、楽しいですからね。)時間が長くなると親の負担が大きくなって、結局スペシャルタイムが続かなくなります。長くても20分程度にしましょう。

 スペシャルタイムにすることは、子どもに決めさせます。できれば、親子で一緒にできるものがよいでしょう。子どもからゲームを習うのもよし。きっと、子どもは得意になって教えてくれます。そこをたくさんほめましょう。決して、親が主導権を握って、子どもにああしなさい、こうしなさいと命令しないように。

 一緒に遊ぶだけでなく、子どもの話を聞いてあげるのも良いスペシャルタイムになります。「ほめる」というのは、その子どもに注目を与えること。子どもの話に耳を傾けるのは、ほめるのと同じ効果があります。

 楽しさのあまり、子どもが羽目を外してしまうこともあります。そういう行動は「無視」します。(→新2回目「無視:ほめるために待つ」参照
 望ましくない行動が続くときには、スペシャルタイムをしばらく中止すると予告します。(「明日はスペシャルタイムを無しにしますよ」など。)




3.スペシャルタイムにしてはいけないこと

 指示や命令  
 否定的・批判的なコメント


 親子で遊んでいると、いつの間にか親が主導権を握り始めて、子どもにああしろ、こうしろと言っていることがあります。特に男性は、子どものペースややり方に我慢できない傾向が強いです。お父さんたちがスペシャルタイムを持つときには、「指示や命令はしない」と肝に銘じてくださいね。

 それから、子どもと一緒にゲームをしながら「こういうことばっかり上手なんだから」なんて皮肉を言わないこと。子どもが自分のことを話しているときに、「それは違うぞ」なんて説教を始めたりもしないこと。叱らない。批判しない。




実践結果

 スペシャルタイムには、目に見えるようなはっきりとした実践結果はなかなか出ません。
 ただ、ずっとスペシャルタイムを続けていくうちに、なんとなく子どもが明るく元気になってくる、親子の会話がスムーズになってくる、子どもの態度が素直になってきたような気がする・・・というような変化が出てきます。
 このスペシャルタイムは、親子関係の地固めをしてくれるものだと思います。
 特に、「ほめる」のが良いと分かっていても、なかなか生活の中にほめる機会がないと悩んでいる方は、意識してこのスペシャルタイムを取り入れて、その時間帯だけは「子どもをほめる」ことに専念すると良いでしょう。

 なお、ペアレント・トレーニング学習会に参加したメンバーの中には、こんな時間をスペシャルタイムにした方たちがいました。


 学校から帰ってきてすぐ(学校の報告を聞きながら、母に甘える時間に)  
 子どものゲームの時間(一緒にまぜてもらう)
 病院へ行く車の中(学校や友達のことなどを聞かせてもらう)
 子どもと出かけて、外食する時




スペシャルタイムがうまく行かないケースとその対応

 親がスペシャルタイムを持とうとしても、子どもの側がのってこなくて、うまく行かない場合があります。

子どものタイプ原因対応

小さな幼児

誰かと一緒に遊ぶことがまだ十分にできない

子どもの遊びを見守ってあげる
一緒にできる遊びに子どもを誘う

小学4,5年生くらいの子ども

活発になり、親が子の遊びについて行けない

事前に話し合い、スペシャルタイムの内容を親にもできることにする

ひとり遊びが好きな子

親と一緒に遊ぶよりも、自分の興味のあることをしたい

子どもの遊びを見守る
子どもと一緒に遊べることを探す

中学生以上の大きな子ども

大人になってきて、スペシャルタイムを幼稚に感じるようになる

スペシャルタイムを設定するのではなく、子どもが話を聞いてもらいたいときに話を聞く、などのスタイルにする


  ※上の表の子どもの年代は目安です。お子さんひとりひとりの個人差や性格などで違ってきます。



付記  お兄ちゃん・お姉ちゃんにもスペシャルタイムを!


 発達障害を持つ子に年上のきょうだいがいる場合は、ぜひ、きょうだいにもスペシャルタイムを作ってあげてください。

 下に発達障害を持つ弟や妹がいると、お兄ちゃん、お姉ちゃんたちはなにかと我慢する場面が多くなります。甘えたくても我慢していたり、親を幼い弟妹に譲っていたり。
 短い時間でもいいから、お兄ちゃん、お姉ちゃんと2人きりの時間を持って、たくさん注目して、ほめてあげてください。
 「お母さん(お父さん)は僕(私)のことも忘れていないんだ」という実感は、お兄ちゃん・お姉ちゃんたちの心を安定させて、親子関係だけでなく、弟や妹たちとの関係も良いものにしていきます。




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このレポートは、福島ADHDの会『とーます!』(現 発達障害支援の会『福島とーます!』)で行われたペアレント・トレーニング学習会の内容を、朝倉が個人的にまとめたものです。
レポートに関する質問等は、メールにてお受けいたします。

(2002年4月29日)  

朝倉玲  
ley@nifty.com  


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