昇平てくてく日記2
小学校高学年編
鼓笛練習・1
さて、三学期に入って、いよいよ昇平たち四年生は鼓笛の練習が始まった。
この学校では例年、五年生が運動会や交通安全パレードで鼓笛の演奏をすることになっていて、そのための練習がこの時期からスタートするのだ。
担当の楽器や役割分担(リングガール等)は冬休みの前に決まっていたが、いよいよ全体での練習が始まるという日、昇平は朝からなんだか落ち着かなかった。教室までついていった母に、やたらとべたべた甘えてくるかと思えば、ちょっとしたことにイライラして、腹をたてたりしている。これは初めての鼓笛練習が不安なんだな、と思って、「大丈夫。みんな初めから上手にはできないし、これからいっぱい練習すれば、ちゃんと上手になるんだからね」と言い聞かせているところへ、ドウ子先生が教室に入ってきた。
先生が黒板に書いた時間割に『鼓笛練習』とあるのを見て、昇平はやっぱり不安そうな顔をしたが、ドウ子先生にも「ちゃんと練習すればできるようになるから、大丈夫だよ」と言われて、「はい、わかりました」とけなげに返事をしていた。
まだ緊張した顔はしているものの、とにかく、やってみなくちゃ始まらないことなので、後は先生方にお任せして、私は家に帰った。
以下は、連絡帳から。
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1月12日(木) 記録者:ドウ子
鼓笛の不安による落ちつきのなさは、朝で終わりましたが、12時頃、勉強している最中に「あと一時間だ……」とつぶやいたところをみると、ずっと気になりつつ、黙っていたのかもしれません。
今日は1時に体育館に五年生と一緒に集まり、鍵盤ハーモニカは四年生二人、五年生二人の四人組を作りました。(注:そのグループの中で五年生が四年生に演奏の指導をする。)
偶然だったのですが、並んだ順番から(ゆめがおか五年生の)Dくんが近くにいたので、四、五年の担任の先生たちとの暗黙の了解で何となく動き、ちゃんとDくんと昇平くんは同じ組になりました。
その後、グループの中で名前を教えあったりしましたが、もう一人の五年生のMくんに「ねぇ〜、Mくんの名字は何?」と尋ねたりして、すっかりリラックス……。終わる頃には「楽しいねぇ」と言っていました。
その後、パート別の練習場所が発表になったので、直後に「昇平くんの練習場所は?」と尋ねると「4−3」と違ったことを答えていました。(本当は4−1) 発表になっている最中の表情を見ても、どうもわかっていないな(注意して聞いている様子がない)と思っていたので、「やっぱり……」という感じでした。
明日からは、4−1に練習に入ったら、四年生ペアのKくんに昇平くんを席に誘ってくれるように頼んでおいたので、部屋に入ってどうしよう……ということはないと思います。
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1月12日(木) 記録者:母
先生方のご配慮のおかげでスムーズに鼓笛の練習に入れそうで、ほっとしています。
午前中、気にはなっていたのでしょうが、12時になるまでそれを口にも表にも出さずにいたのは偉かったなぁ、と思います。
D先輩、昇平をよろしくネ!
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1月13日(金) 記録者:ドウ子
今日から本格的に鼓笛の練習が開始しました。
本人の言動をつなげてみると、1時からの練習までに自分の給食が終わるかどうか、が一番の心配事のようで、「給食の準備を早くからしよう」とか、「ぼくのご飯の量を減らして」 「1時にちゃんと4−1にいけるかなぁ……」ということを何回か口にしていました。
でも、練習そのものは楽しみなようで、給食を食べ終わった後、「協力学級の4−3に行って(そこで待っていて)、1時になったら4−1に行くよ」とはりきって出かけていきました。(Dくんはおいていかれました。)
帰ってくると、「ぼく、ここまでできたよ。聞いて!!」と鍵盤ハーモニカを出し、一段目をゆっくりですが半音の部分も正確に弾いてくれました。できたところまで楽譜にラインマーカーで線を引いて、「ここまで合格」と言うと、「うん」と嬉しそうでした。
来年の鼓笛パレードに ”道路を車が通るか” 心配している昇平くんですが、演奏はバッチリ!!になりそうな気がしています!
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さてさて、本当にどうなっていきますやら、の鼓笛練習。
これからも、連絡帳の記録を中心にレポートしていこうと思います。
[06/01/26(木) 14:16] 学校 発達障害