昇平てくてく日記2

小学校高学年編

お役御免

寒くて雪の多い冬だったけれど、ここに来て、ようやく春めいた日差しを感じるようになってきた。2月ももう下旬。春はもうすぐそこだ。

実は、昨日の朝から、私は昇平の教室までついていくのをやめて、様子を見ている。
昇平が入学してからほぼ4年間、毎朝教室までついていって、担任が来るまで一緒に教室にいる、ということを続けてきたわけだけれど、ここに来て、そろそろそれをやめる時期に来たかな、と感じたのだ。
昇平ももうすぐ5年生。他の子たちもすっかり大きくなって、教室の中でのトラブルもほとんどなくなった。特に昇平などに危なっかしい場面がないわけではないけれど(先日も、ふざけて椅子の上に立ちながら着替えをしていた。よろめいて落ちたら怪我するところ!)、それでも、子どもたちの様子はぐんと落ち着いた。そろそろ、「教室で大人がいない時間を過ごす」練習も始めていいのかなぁ、と思ったのだ。

昇平に確認すると、「大丈夫、一人で昇降口から教室まで行ける」と言う。
当日の朝になって、「大丈夫かなぁ」とちょっと不安になったけれど、車を昇降口の前に停めて
「それじゃ、いってらっしゃい」
と声をかけると、さっさと自分で荷物を持って、元気に車から降りていった。
「いってきまーす!」
と言う声が一年生のように張り切っていて、ああ、やっぱり、もう一人で行く時期に来ていたんだ、と改めて感じた。
連絡帳を見ると、担任が教室に着いた時、昇平たち三人は教室で思い思いのことをして静かにすごしていたらしい。
そして、今朝、昇平はまた、まるでためらうこともなく、元気に一人で昇降口に向かっていった。その後ろ姿があっという間に他の子どもたちの間に紛れてしまって、それが嬉しくもあり、少し淋しくもあり……。

   ☆★☆★☆★☆

昇平が心配だっただけでなく、毎朝、教室で子どもたちの様子を見ていることが、私は何よりも楽しかった。ひとりひとりと言葉を交わして、前の日に家であったこと、登校途中で起こったこと、今夢中になっている遊びやテレビのこと、家で飼っているペットのこと……なんでもないような子どもたちの話に耳を傾けて、子どもたちの行動や、お互いの関わりの様子を見守って、その中に彼らの気持ちや成長を見るのが、とても楽しかった。
子どもたちはこの4年間で本当に成長した。本当に、本当に成長した。毎朝、そんな姿を見られるのが、私には本当に幸せだった。

だけど。
子どもたちのためを思えば、やっぱり、大人が距離を置くべき時期は来る。
見守るにしても、すぐそばではなく、一歩離れたところから見る。それが子どもたちの成長をよりいっそう促すから。
教室で一番幼い昇平さえ、とうとうその時期にやってきた。
私もいよいよお役御免なんだなぁ、と、元気に昇降口に向かう昇平の後ろ姿にしみじみと考えた。

とはいえ、正直、不安がないわけではない。
なにぶんADHDを持った子どもたちだから、今日は落ち着いていても、明日どんな状態でいるかはわからない。きっと、たくさん過ごす朝の中には、トラブルが起こったり、思いがけないアクシデントが起こったり……ということもあるのだろうけれど。
それもまた、大人のいない場所でどう過ごすかの練習だと思うことにして、思い切って、離れたところから様子を見ることにしている。

本当に、あと1か月半で昇平も5年生。名実共に高学年の仲間入りをする。
これからは、本人の自主性や自覚を促すための支援というのも、必要になってくるんだろうな……と。
明るい日差しの中で考えている。


[06/02/22(水) 14:52] 学校

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