昇平てくてく日記2

小学校高学年編

昇平という子ども〜発達障害の特徴を考える

療育掲示板で障害の特徴について話し合ったのをきっかけに、最近、昇平の特長というものを改めて考えている。

診断名としては、昇平は正式には「ADHD」としか診断されていない。そこに「自閉症のような特徴もある」と但し書きが付いている。私は、この診断名をスタートラインに、昇平の障害のことを勉強し始めた。もう7年も昔のことだ。
ADHDに関する本を読みあさると、ある部分は非常によく昇平に当てはまるけれど、なんだか当てはまらない部分もあった。昇平が困難として抱えているのに、それについて述べられていないことも多かった。
私が今も出入りしている発達障害関係の掲示板には、ADHDだけでなく、自閉スペクトラムの子どもを持つ親御さんや、自閉の診断を受けている成人当事者も、大勢集まって書き込みをしているが、その中に昇平の困難に関する説明を見つけることもしばしばあった。やがて、古典的な自閉症にはあてはまらない、高機能自閉症やアスペルガーと言ったタイプの自閉症の関連書籍が数多く出版されるようになり、それを読んで、「おお、これは昇平を説明するのにぴったり!」と思うことも多かった。
つまり、本当の意味で診断名を考えるならば、昇平はやっぱり、高機能自閉症とADHDを併発していると定義するのが一番ぴったりしているのだろうと思う。最近はことばもかなり発達してきたので、アスペルガーと言ってもいいのかもしれないけれど、よく彼の話を聞いていると、やっぱり話しづらそうにしていたり、思い通りにことばを操れないでいることが多いので、「言語に困難がないタイプ」という定義があるアスペルガーに入るのかどうかは疑問でいる。また、自閉症としても、ADHDとしても、典型的なタイプではない。どちらも、「部分的に」当てはまったり、当てはまらなかったりしている。
今かかっている病院を変え、主治医を変えれば、おそらく診断名も変わる可能性は高いと思っている。今は自閉最優先で診断がつけられる時代だし、まず間違いなく、主診断名は自閉スペクトラムのほうになるだろうと、私としては読んでいる。そこにぜひ忘れずに「ADHD」の診断名も併記してほしい、とは思うけれど。

だけど。
診断名を変えることで、なにかメリットがあるかな? と私は考えている。
昇平に障害があることがわかったばかりの時期であれば、正確で精密な診断名のほうがありがたかっただろう、とは思う。今は、ADHDも自閉スペクトラムも、本当に数え切れないくらいの数の本が出版されているし、ネットで検索をかけても、とても見切れないくらいの関連サイトがヒットするようになっている。調べたくても、本もなければサイトもほとんど見つからなかった7年前とは、本当に雲泥の差の情報量だ。
その中で、子どもに合った情報を、あまり回り道せずに得るためには、やっぱり正確な診断名があったほうが便利だろうとは思う。学校や幼稚園、保育園の担任といった人たちに理解や強力を求めるためにも、正確な診断名があったほうがいい。
でも、昇平に関して言えば、その時代はもう、とっくに過ぎてしまった。
もちろん、私は今でも発達障害に関する本を読んでいるし、まだまだ理解できていない部分もあるから、もっと勉強しなくては、と思っているけれど、その方向性は、すでにしっかりつかんでしまった。「ADHD&自閉スペクトラム」 その方向さえしっかりつかんでいれば、ひどく見当はずれな情報をつかむことはない。
担任にも、ただこう伝えればいいだけのこと。「この子の診断名はADHDです。でも、自閉症のような特徴も持っていますので、そちらのほうの配慮もぜひお願いします」。

結局、診断名は入り口に過ぎなかった気がする。あるいは、親子で進んでいく方向を示す羅針盤だろうか。
羅針盤は、船の進むべき方向を見極めるのには非常に有効だけれど、その先は、実際の海を見ながら梶を切り、海流や風に乗り、大小の波を越えていかなくてはならなくなる。自分の目で海そのものを見なければ、船は進んでいくことができない。
それと同じように、私たちも、診断名という羅針盤で方向をつかんだら、後はその子自身の姿を見ながら、困難や問題を越え、対応を考えていかなければならないのだ。

私には、昇平はこんな子どもに見えている。

   ☆★☆★☆★☆

・お絵かきや造形、パソコンやゲームが大好きな子。

・大好きなことには何時間でも熱中して、夢中で取り組める子。

・その反面、面倒くさいこと、やりたくないことには、なかなか取り組みたがらない子。

・小さい頃にはことばの発達が大きく遅れていたけれど、最近は大分しゃべれるようになってきた子。でも、やっぱり、ことばで話そうとすると、頭の中で混乱するらしくて、なかなか思うようには話せない子。

・それでも、自分の気持ちを伝えたいと考えている子。

・基本的にはとても素直で生真面目な子。だけど、親の目を盗んでこっそりゲーム時間の時計を戻したりするような、ちゃっかりしたところも持ち合わせた子。

・落ちつきがなくて、椅子に座っていても、始終体を動かしている子。食事時になると、体を動かす変わりに、手がひらひらと動き出す子。

・目移りが激しくて、すぐ、目にしたものに関心を持ってしまう子。それが落ちつきのなさの原因になることも・・・。

・行動が急なので、危なっかしい時がある子。急に動き出したり、急に方向転換したり。座る時には落ちるように膝から畳に座るので、万がいち画鋲でも落ちていたら大怪我になるからやめなさい、と言っているのに、全然改められない子。

・日常の習慣が面倒くさい子。歯みがき、洗面、シャンプー、体を洗うこと、宿題や勉強、めんどくさい、めんどくさい・・・!(でも、やらなくちゃダメよ)

・目で見てわかりやすいものが好きな子。ギャグマンガ大好き。でも、夜寝る前に布団の中で聞く母の寝物語も大好き。(母もこの時間は大好きですよ)

・その一方で、普通では予想できないようなものが怖くなることがある子。泣いている顔の絵だったり、しかにもかわいく見えるキャラクターの絵だったり、ギョロリとした目玉だったり。不安が強い時ほど、その症状は悪化して、神経症のようになることもある子。

・小さな子どもの泣いている声や騒いでいる声、誰かの怒っている声が死ぬほど嫌いな子。とんでもない拒否反応を示して、昇平自身がパニックに陥る。昇平と生活していて、最優先で配慮しなくてはならない特徴。

・上記の感覚過敏(聴覚過敏)があるために、小児科や子どもが多く集まる場所が鬼門になっている子。早く中学生になってほしい。普通の内科でOKになるから。

・耳で聞いた指示が理解しにくい子。特に、一度にいろいろ言うと理解しきれなくなるので、予定などを先のことまで知らせておきたい時には、紙に書き出してやった方が絶対に親切。

・その場の様子や人の動き、話などから、場面の意味をつかみにくい子。見当はずれのことをしたり、次に何をしていいのかがわからなかったりする。大事なことをするときや、勉強の場面などでは、そばに介助者がついて説明して理解を助ける必要がある。

・自分がどういう状況にあって、何をすればいいかがわかると、かなりスムーズにやり遂げることができる子。それがわかった時には、不安そうな顔が一転して明るい笑顔に変わる。場面の理解の補助は、昇平に一番必要な支援。

・お気に入りのビデオや音楽などはあるものの、こだわりはあまり強くない子。一度頭に入ったことでも、後からの修正はけっこう柔軟にできる。

・年齢よりは幼いけれど、気に入った友達と遊ぶ楽しさを覚えて、友達が好きになった子。(ここまで社会性が発達してくれて、よかったよかった)

・忘れん坊な子。ランドセルや荷物を部屋に置いて登校しようとしたこと、数知れず。

・ポイントやシールをためるごほうびがあると、がぜん張り切る子。

・ほめられるのが大好きな子。特に最近は「お兄ちゃんになった」「大人になってきた」と認められるのが嬉しい様子。

・実はけっこうロマンチスト。でもって、美少女系大好き。(笑)

・将来は、自分のホームページを作って、自作の絵やアニメ、ゲームなどを公開するという夢を持っている子。
    ・
    ・
    ・
   ☆★☆★☆★☆

まだまだ他にもあるけれど、このぐらいにしておこう。
要するに、昇平という子どもを表そうとすれば、こんなふうに、えらく散文的になってしまうのだ。
自閉の三つ組みがうんぬん、ADHDの特徴がなんたら、というのは、その散文のなかにちりばめられた特徴の破片でしかない。
医者や心理士は、専門家としての支援をするために、そういう障害特性から子どもを判断する必要があるけれど、私たち親は、そこまで考える必要はないだろう、と、それこそ、この7年の間に、私は考えるようになった。
散文的な昇平と暮らしていくには、やっぱりこちらも散文的になるしかない。時には愛情で、時には理性で、時には感情で、日々子どもと向き合っていくしかない。
そしてそれは、ごくごく当たり前な、子どもがいる家庭の風景に過ぎない・・・。

昇平には障害がある。それは紛れもない事実だ。
だけど、昇平は、障害があろうがなかろうが、私の子どもであり、私たちの家族の一員である。
一番大事なのは、それなんだろうな、と思う。
親子だから、家族だから、一緒に楽しく暮らしていきたい。だから、この子のことをもっと知りたいと思う。困っていることには手を貸したいと思う。他の人にも手助けを求めたいと思う。
ただそれだけ。障害の理解というのは、本当に、ただそれだけのことなんだろうと思う。

[06/03/22(水) 13:57] 療育・知識 発達障害

[表紙][2006年リスト][もどる][すすむ]