昇平てくてく日記2
小学校高学年編
新しいお友だちとの関わり・4
新しい転入生が二人増えた今年のゆめがおか2組。聴覚過敏も持つ昇平は、声が大きかったり、落ちつかなかったりする二人の様子に過敏になって、新学期当初はプチパニックの暴言やトラブルが続く毎日だった。担任たちも、その対応に大わらわ。そのあたりの様子を報告したのが、「新しいお友だちとの関わり・1〜3」だった。
「3」では、なんとなくIくんと昇平が仲良くなりそうかな? という様子も見え始めていたのだけれど、さて、その後は……? と思っていたら、昨日、ついに本当に嬉しい報告が担任から入ってきた。以下は、その連絡帳から。
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5月22日(月) 記録者:ドウ子
今日はIくんとべったり仲良しで、ガンダムの絵やポケモンなどで話も合うらしく、以前の様子がうそのようです。Iくんは「昇平くんはかっこいいねぇ、絵もうまいねぇ」とすっかりお気に入りで、二人でゆずり合ったり、ほめあったり……。今までを知っている周りの大人は、あっけにとられています。
国語の時間に「不」の熟語を作っていた昇平くん、「不良」と書いてから、となりで一人で勉強していたIくんに向かって、「ねぇ、前に不良って言ってごめんね」と、思い出して謝っていました。子どもたちの関わりはおもしろいです。
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実を言えば、「3」をここに載せた直後、きつく注意した昇平に怒ったIくんが昇平に運動着袋をぶつけ、それに腹をたてた昇平がIくんの腕にかみつく、という事件も起きていた。幸い怪我はなかったし、お互いさまなので問題にはならなかったが。仲良くなりそうかな、と思うと逆戻り、という経過を示す中、じっと子どもたちと担任を信じて、私は待ち続けていた。
子どもたちは、昇平もIくんも、本当はとても素直でよい子たち。ただ、新しい環境になったこともあって、双方ともまだ落ちついていないだけ。そこに担任たちが全力で関わってくれているんだから、絶対に良い方向に向かわないはずはない……。本当に、ただひたすら信じて待つ日々だった。
だから、連絡帳を読んだとき、「ついにこの日が来た!」と思って、本当に嬉しかった。子どもたちの力は本当に素晴らしい! とも思った。
もう一人の転入生のL子ちゃんも、時々大声を出すので(感激したときにも、勉強が難しくて困ったときにも声が出る)、昇平はそのたびに怒っていたらしいけれど、こちらはもっと早く慣れて、5月の上旬には打ち解けてきていた。
その時の様子を書いた連絡帳も以下に載せてみる。
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5月9日(火) 記録者:ドウ子
L子さんとは、今日も机ひとつ離しての学習だったのですが、算数で昇平くんがわかるところをまだ苦手なL子さんが「むずかしい〜!」と言っていると、昇平くんは「バカか!」「おまえはまだわからないのか!」(L子さんの様子に怒っての例の暴言)と言いながらも、表情が以前とは違いました。眉を寄せての険しい顔ではありませんでした。
合間にL子さんが立ち歩くと、昇平くんはそれに絡まるように一緒になってふざけて嬉しそうにしていて、教師のほうがあきれてしまいました。以前ならL子さんのパニックに乱入して怒り出していたのに、今日は余裕が感じられました。
一緒に生活してみて、実はL子ちゃんがとても素直なこと、勉強を集中して長時間やることなど、良い点をたくさん見つけ、「大声を出すとんでもない人」という昇平くんの見方が、がらっと変わったからだと思います。あとはプラスの関わりが増えるだけだと思った今日でした。
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Iくんの時もそうなのだけれど、昇平は相手の中に良いところを見つけることで、相手を理解して受け入れている。そして、IくんやL子ちゃんも、同じようにして昇平を理解して受け入れているのだと思う。
その背景には、子どもたちが良い行動を見せたときにすかさずそれに気がついて、ことばでほめ続け、それを他の子たちに教えてきた、担任たちの努力があると感じている。だから、子どもたちは相手の長所に気がつくことができて、「あ、この子はホントはいい子なんだ」とわかることができたんだろう、と。
L子ちゃんと昇平は、今はもうすっかり仲良しだ。朝、登校したときに昇降口で出会うと、L子ちゃんは、「あ、昇平く〜ん、おはよ〜!」と、とても嬉しそうに挨拶してくれる。昇平も、勉強や生活でL子ちゃんに良い関心を持っている。男と女の差はあっても、同級生がいるっていうのは良いことだなぁ、と感じて見ている。
今までクラスの最下級生だった昇平に、Iくんという後輩ができたことも、本当に良かったと思う。きっと、これから昇平は「お兄ちゃん」になっていくだろう。
トラブルを乗り越えてこそ、深まるもの、広がるものがある。
今、心からそう思っている。
[06/05/23(火) 08:43] 学校 発達障害