昇平てくてく日記2

小学校高学年編

半分自力下校への挑戦・4

 下校ルートの途中まで、同級生と一緒に歩いて帰り、待ち合わせ場所で母の迎えの車に乗って帰宅する、という取り組みのレポートの第四弾。ひきつづき、連絡帳から。

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5月15日(月)   記録者:ドウ子

 今日、協力学級の岩幡先生のほうから、昇平くんと一緒に帰るメンバーから「昇平くんの歩くスピードがゆっくりで、注意しても聞いてくれないんだ」との話があった、と聞かされました。そのこと以外で困ったことは何もないのだけれど、ゆっくりすぎるのには参ってしまったようだ、とのことでした。
 教室でも昇平くんに、みんなと同じスピードで歩くように話しましたが、待ち合わせ場所の××で会ったときにも、ゆっくり過ぎなかったかどうか尋ねてみてください。

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5月15日(月)   記録者:母

 明日、××に子どもたちが到着したら、歩くスピードのことを聞いてみようと思います。
 今日は学校から電話をかけてから18〜19分くらいで××に到着。男の子同士でゲームの話をしながら歩いてきたようで、別れ際にMくんが大きな声で、「明日もまた一緒に帰ろうねー!」と声をかけてくれていました。
 本当にいいお子さんたちですね! 嬉しいです。

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5月16日(火)   記録者:ドウ子

 さて、昼休み、岩幡先生が教室に来て、「Mくんが ”昇平くんがゆっくり歩くと家に帰る時刻が遅くなり、遊べなくなる” といってきた。そして、お母さんに相談したら、 "(昇平くんと帰るのを)当番制にしてもらったらどうか” と言われたらしいが、どうしたら良いだろう」と相談してきました。
 去年、4−3の担任だった弓子先生と、不審者対策のために学童までの道を誰と帰るかを決める際に、「数人の名前を挙げておいて、そのうちの誰かと帰る」というのはいいけれど、「何曜日は誰」と決めるのはおかしい、昇平くんと帰るのは係活動ではなく、自然発生的な友人関係であるべきだ、と話し合ったことを思い出し、岩幡先生に伝えました。岩幡先生もわかってくださり、Mくんに話してみる、と言ってくれました。
 一番は、昇平くんのどんな歩き方が「ゆっくり」なのかを実際に確認し、改める点があればまず直すこと、だと思います。今日は委員会活動があって、私がついていくことができませんが、今週中に下校の様子を観察しようと思います。
 岩幡先生のお話では、Mくんはとても真面目なので、責任を普通以上に強く感じてしまったのではないか、ということでした。そして、まだ三回しか一緒に帰っていないので、もう少し様子を見てから考えてもいいと思う、とも言っていました。私も、もう少し時間がほしいと思っています。

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5月16日(火)   記録者:母

 今日、××に到着したMくんに、「どう? 今日は昇平くんの歩き方は遅かった?」と聞いてみたら、あっ、という表情をちょっと見せて、「いえ、大丈夫でした」と……。Mくんとしては、自分がお母さんなどに話したことが、いろいろな人に影響(波紋)を広げているのを感じて、ちょっと気にしているのかも、と思いました。
 本当に、とても真面目で優しいお子さんなのですね。無理や義務などではなく、一緒に自然に帰れる、気楽な関係になっていってくれるといいな、と思いました。もう少し時間をかけて見守ってほしいと、私も思っています。

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5月17日(水)   記録者:ドウ子

 下校の様子を見に行く件、連日Mくんにプレッシャーをかけてもいけないと思い、少し間を置くことにしました。

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5月17日(水)   記録者:母

 ××まで、今まで電話してから20分近くかかっていたのが、今日は16分で到着しました。
 時間を見計らって出発した私の車が到着するのとほぼ同時だったので、「早かったね!」と言うと、「今日はすごく早かったんです」とMくん。でも、とっても緊張していたのがわかる笑顔で……ちょっと胸が痛くなりました。きっと、時間がかからないように、昇平と一生懸命歩いてきてくれたのだと思います。
 昇平はよく、Mくんの腕にすがりつくようにして歩いてきます。道がなかなか覚えられないので、離れるのが不安なのだろうと思います。昇平が道を覚えたら、きっともっと早く歩けるようになると思うこと、でも、話に夢中になったりしたら、歩き方が遅くなることもあるだろうと思うこと、到着が遅くても早くても、おばさんは必ず昇平の迎えに来ること……だから、大丈夫だよ、と……明日はMくんが一緒に下校しない日なので、金曜日のときにでも、Mくんに話してあげたいな、と思います。

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 と、連絡帳には書いたものの、結局私はその話をMくんにはしなかった。
 「大丈夫だよ」「そんなに責任を感じなくていいんだよ」と言ってあげたいのは山々だったのだけれど、そんなふうに声をかけられてしまっただけで、いっそうMくんはプレッシャーを感じて、自分を責めていきそうな感じに見えたから。
 そっと見守るしかない子どもたちの姿。実際にMくんに出会ったときには、「ありがとうね。お世話様」と声をかけることしかできない。
 優しいMくん。本当に優しくて、真面目なMくん。昇平もそんなMくんを覚えて頼るようになって、頼りにしすぎて、それがまた少しMくんの負担になっているかもしれなくて……。

 みんなが今より楽に一緒にやっていく「やり方」を見つけていきたいね。
 私に昇平を引き渡してからも、自宅に向かいながら、気がかりそうに心配するように、いつまでもこちらを振り返ってくれるMくんの姿を見るにつけ、そう思わずにはいられなかった。
(つづく)

[06/06/19(月) 09:46] 学校 発達障害

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