昇平てくてく日記2

小学校高学年編

わかった!

 今日の午前中「講演会に『連携』を求めること〜」という記事をアップしたわけだけれど。
 その後、昨日聴いた講演会の内容も思い出しながら、とりとめもなくいろいろ考えたり、ぼんやり比較したりしていた。そして、ふいに、はっとあることに気がついた。

 ゆめがおかではしかにも落ちついて過ごしているのに、協力学級(交流級)の5−2に行くと、とたんに先生や同級生への暴言が始まってしまう昇平。何か少し強く注意されると、とたんにプチパニックを起こして、「ごめんなさい」の代わりに「ぼくはもうだめだ」「死ぬしかない」と言い出す昇平。社会科の授業は難しいけれど、社会科の内容そのものには興味を持っていて、資料集を眺めたり、チャレンジの社会科のページを眺めたりしては、「おじいちゃんやおばあちゃんの子どもの頃はどうだったの?」「お母さんが子どもの頃は○○はあった?」などと聞いてくるようになった昇平。先日の授業参観で、手洗い指導のために、ゆめがおかの子どもたちが洗った後の手をハンカチで拭いていない「現場」を撮ったビデオを見せられて、自分が本当に手を拭いていないのを見たとたん、「やめろ〜!!」とわめいていた昇平。今日、久しぶりにやってきた親戚に「お、しばらく見ない間にたくましくなったな」と言われて、さりげなく得意そうな表情になっていた昇平……。
 すべてが、ひとつの事実を示していたじゃないの!
 昇平は、今までよりも格段に、自分が所属している周りの世界が見えるようになってきたんだ。そして、周りが見えるようになってきたために、「自分が他の同級生から劣っているという事実」を突きつけられてしまって、自尊感情が失われてきているんだ! いわゆる、セルフエスティームの低下が急激に始まっていたんだ! ……そういうことだったんだ。

 そういえば、去年、昇平が何かというと「殺してください」を連発していたとき、親の会の顧問であるN先生がおっしゃっていたっけ。「子どもが死ぬとか殺すとか死にたいとか言い出したときには、本人にセルフエスティームの低下が起こっているんですよ」と……。あのときにはまだ、あまりピンと来なくて(なにしろ、普段の彼の様子を見ていると、自分はだめだと考えているなんてとても感じられなかったから)、「殺してください」と言うセリフがどんなに危険か、という話をして、そのことばは言わない、という方向で指導してしまったのだけれど。そうだ。確かに、あの頃から昇平は周囲の子どもたちと遊ぶのが楽しい、という感じになってきていた。自分の絵が友だちに誉められると嬉しそうだったし、それを自慢することもあった。それまでには見られない行動だった。ちょうどあの頃から、良い意味でも悪い意味でも、他者の中にいる自分、というのを意識し始めていたんだ……。

 昨日の講演で、品川さんがおっしゃっていた。「親が子どもをと誉めるのはもちろん大事なことだし、とても必要なことです。でも、自尊感情は同じ仲間の中でしか育っていきません。親がいくら子どもを『すごいね』と誉めても、同じ仲間たちが『あいつはすごいぞ』と言うことばにかなうものはないんです」
 そうだ……そうだ、そういうことなんだ……!

 社会科に興味を持ち始めたのは、周囲の社会に関心が向き始めた証拠。ゆめがおかで暴言が出ないのは、ゆめがおかという集団の中では昇平は他の子たちとまったく「同じ」どころか、先輩でさえある立場だから。なのに、5−2で暴言が頻発してしまうのは、そこにいると、自分がたまらなく劣っている、だめなヤツに感じられてしまうから……。本当は自分だって、他のみんなと同じように「できるヤツ」でありたいし、「あいつ、すごいぞ」と思ってもらいたいのに、嫌でも、自分自身で、他の子たちより劣っていることを思い知ってしまうから。
 かっこいいヒーローに憧れていた昇平。強きをくじき、弱きを助ける、賢い少年になりたい、と君は本気で願っていた。でも、成長は嫌でも自分自身の姿を明らかにしていく。自分は自分が思っていたほど大したヤツじゃなかったんだ、と、子どもたちは小学校高学年の頃から気がつき始める。一見発達が遅れて見えていた昇平も、確かに他の子たちと同じように、そんな時期に突入していたのだ。
 だからだね。母が少し注意しただけで、「ぼくはだめだ」「死ぬしかない」と、また口にするようになっていたのは。
 授業がよくわからなくなったり、しんどくなったりするたびに、暴言という形で先生に抗議しに行くようになったのは。
 ぼくも、みんなと同じようにできるようになりたい。みんなと同じように、「価値のあるヤツ」になりたい、と願うようになっていたからだったんだね。どうして自分はそういうヤツじゃないんだ、と自分で自分に腹立たしくてしかたなかったんだね。
 いつの間にか、そこまで大人になってきていたんだね……。

 明日、病院に行って主治医に相談してみよう。そのあたりのことを詳しく話して。薬の調整もあるかもしれないけれど、問題の本質が「セルフエスティームの低下」にあるのだとしたら、お薬だけではどうしようもない。品川さんの話の通り、「自尊感情は仲間の中でしか育たないもの」なのだもの。
 母も、君への話しかけ方、特に、注意のしかたや、やってほしいことへの指示の出し方には気をつけよう。君はもう、頭ごなしに叱られたり命じられたりする時期は過ぎてしまったのだわ。もちろん、明確な指示や注意は必要だし、それが往々にして「きつく」聞こえることはあるのだけれど、それでも、同時にやっぱり君のプライドには常に配慮しなくちゃならないんだね。うん。母も気をつけるよ……。

 「人々」の中で生きたい、その中で認められたい、と考え始めた君。
 そのために、我々は何に気をつけたらいいだろう。何をどうしていくのが、君のためになっていくだろう。
 専門家のアドバイスも仰ぎながら、みんなで考えていくからね……。
 だから――
 これほどのサインを出してもらいながら、なかなか気がつけないでいた母を許してね、昇平!
 

[06/06/25(日) 20:53] 学校 療育・知識 発達障害

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