昇平てくてく日記2

小学校高学年編

今朝のエピソード二題

 今日は小学校がお弁当の日。兄ちゃんのと合わせて二つも弁当を作らなくちゃいけないので、私は朝から大わらわ。時間になっても昇平を起こしに行く暇がない。
 ので、旦那に頼んだ。
「昇平を起こしてやって。で、もしも起きないときには私に声をかけて」
 最近朝が肌寒くなってきたせいか、昇平は寝起きが悪くなってきている。休みの日だけは、5時とか5時半とか、馬鹿早い時間に起きてくるくせに、学校に行く朝となるとなかなか始動しないのだ。
 料理しながら二階の様子をうかがっていると、やがて昇平の声がして、階段を下りてきた。トイレに行く。良かった、無事に起きたらしい。
 出勤していく旦那を玄関まで見送ったら、旦那がにやにやしながら言った。
「昇平は最初なかなか起きなかったんだけどな、『お母さんが来るよ』って言ったとたんに起き出したんだよな」
 は。なんですか、それ? なんでそこに私の名前を出しますか。でもって、私のことを言ったとたん、昇平が起き出したってのは、いったい……。
「それを見て、なるほどなー、と思ったぞ」
 と旦那が笑う。
 う〜。ホントにそりゃどういう意味ですか? 私がそんなに怖い母だとでも??
 すると、旦那の笑い声や私の声を聞きつけて、二階から昇平が呼びかけてきた。
「なにー? 何があったの、どうしたのー?」
 話の内容なんて聞こえないくせに焦ったような声になっているのは、父と母の会話の雰囲気を察したせいなのか? まったくも〜、タイミング良すぎだよ、あんた。
 それ以上怒れなくなって、旦那と大笑いになってしまった。
 なんてこともない、今朝のエピソード。

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 今朝のエピソードをもうひとつ。ついさっきの出来事。
 昇平を学校に送って、やれやれ、と部屋に戻ってきたら、突然ポケットの携帯が鳴った。『公衆電話』……昇平だ!
 なにごと? と思いながら電話に出ると、昇平の声が飛び出してきた。
「お母さん、大変だ! 今日の三、四校時目が図工なんだよ!」
 なにっ!?
 確か、次の図工はビー玉迷路を作るから、空き箱などの材料が必要だったはず。でも、図工は来週だから、まだ先のことだと思って材料をしっかり集めていなかったよ。いつ、時間割が変更になっていたの??
 ――なんて思いが頭をよぎったのも一瞬のこと。すぐに電話に返事をした。
「わかった。後で材料を持っていってあげるからね」
「うん!」
 昇平の声がぱっと明るくなって、ガチャン、と電話が切れた。
 ……あ、しまった。材料に何と何が必要なのか確認するのを忘れたぞ。(汗)
 材料については連絡帳に書いてあったからなぁ。ま、いいや。うろ覚えだけど、必要そうなものを適当に集めて持っていこう。

 ところが、がさがさと材料をかき集めて学校へ届けると、なんと、今日は昇平は図工がなかったことが判明した。朝、L子ちゃんが自分の協力学級の時間割を眺めているのを一緒にのぞき込んで、三、四校時目に図工があるのを見て、てっきり自分もそうだと思いこんだのだ。最近、学習発表会の練習などで二人一緒に行動することが多かったので、そこから来た勘違い。さらに、朝のバタバタした時間帯だったこともあって、ドウ子先生たちも、自分たちの気がつかないうちに、協力学級のお友だちが昇平に時間割変更を伝えに来てくれたのかと勘違いしたのだった。
 すると、ドウ子先生が言った。
「でも、昇平君はえらかったんですよ」
 図工があるのに自分がその材料を持ってきていないことに気がつくと、昇平はあわてることもなく、「ぼく、お母さんに電話してきます」と言って、さっさとテレカを持って学校の公衆電話へ向かったのだそうだ。誰に言われるでもなく、誰かに付き添ってもらうこともなく、自分で判断して、自分の力で母に電話をかけてきていたのだ。
 これにはドウ子先生も西尾先生も私も感心。毎日、下校のお迎えのために母に電話をかけているけれど、そのスキルがこんなところに応用できたんだね。
 今回は単なる誤解だったけれど、今後、本当に早急に家から何か持ってきてもらう場面があるかもしれないから、その時には、きっとこの経験が生きるだろうと思った。
 思いがけないところで、昇平の成長ぶりを確認することができて、ちょっと嬉しい朝だった。

[06/10/12(木) 09:11] 学校 日常 発達障害

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