昇平てくてく日記2

小学校高学年編

ライトアップを見に行く

 木曜日の夜、昇平と一緒にミニドライブとしゃれこんだ。
 行き先は隣町。12月になって、町の通りの街路樹をたくさんの電飾でライトアップしているので、それを見に行ったのだ。ずっと昔、まだ昇平がろくにしゃべることもできなかった頃、仙台市まで「光のページェント」を見に行ったことがあったけれど、それは昇平の記憶には残っていない。「通りの木にたくさんのライトをつけているんだよ」と教えると、どんなものだろう、とワクワクしていた。
 以前は、この手のライトアップは金色の電球だけだったけれど、最近では色つきもはやっているらしい。200メートルくらいの通りの両脇に2本ずつ、計4本、青いライトのともる木があった。通りのちょうど中央付近には体育館があるのだけれど、その入口の大きな木には、赤いライト。青、赤、そしてたくさんの金……。まるで夜空の星が下りてきて、木の枝に宿ったような美しさだった。
 昇平も大喜び&大興奮。「お母さん、歩こう! 歩いて見よう!」と大騒ぎ。車を体育館の駐車場に停めて、通りを一緒に散歩した。昇平は嬉しくて仕方がなくて、小走りで歩道を先に行く。と、小さな横道を横断しようとしたとき、停まって左折しようとしていた車の陰から、こちらへ曲がってくる車が――!
 思わず叫んだ。
「昇平、危ない!」
 そのまま走っていたら、間違いなく車にぶつかるタイミングとコースだった。が、その声を聞いたとたん、昇平がぱっと駆け戻ってきて、左折の車はそのまま通りすぎ、事なきを得た。さすがに本人もこれにはあせったようだったし、母も、しばらくは胸がドキドキして止まらなかった。
 ああよかった。こういう時って、本当に目を離せない。でも、「危ない」と言われた瞬間に身をひるがえせるところが、さすがはADHDっ子だな、と妙な感心もしてしまった。私だったら、「危ない!」「え、なにが――?」一瞬ぼうぜん、そのままガツン! と行きかねない。
 ADHDを持つ子は、確かに注意散漫で多動で衝動性もあるから、危険な目にも遭いやすいけれど、その分だけ、危険回避能力も天から授かっているのかもしれないなぁ、なんて思ってしまった。
 もちろん、昇平が無事だったから、そんな悠長なことも考えていられたのだけれど。

 その後はゆっくり歩きながら、ライトアップされた街路樹の下を散歩した。昇平は私の腕をつかんで歩いていた。
 通りのはずれに建って眺めると、本当に、金と青と赤い光が星のよう。星が連なって、木の枝の形を作っている。
 「おまつりみたいだね!」と昇平が何度も繰り返していた。学習発表会で群読「おまつり」を発表したから、彼の中にあるおまつりの賑やかなイメージと、華やかに光で飾られた通りがオーバーラップしたのかもしれない。
 通りの反対側に渡って、また光を眺めながら歩く。通りに面した店やホテルにもクリスマスのライトアップをしているところがあって、そんなものも一緒に眺めて。昇平は夜、外を出歩くことがほとんどないから、見るものすべてが珍しそうだった。
 我が家へ戻る途中、個人のお宅で毎年すごいクリスマスのイルミネーションをするところがあるので、回り道をしてそれも見に行った。年々豪華になっていくと言うことで、今年は庭先の木に色とりどりの電飾、玄関口に大きな星、光でできたサンタクロースのそりとトナカイ……と本当にすごかった。車の中から眺めただけだったけれど、昇平は「すげーっ!」と目をまん丸。家に帰って、おじーちゃんに「どうだった?」と聞かれたら、「最高だったー!!」と答えていた。

 本当に、理解の幅が広がって、自分なりに感じたり感動したりするようになった昇平。もっともっと、いろいろなものを見たり体験したりさせてあげたいな、と思った。
 仙台市の「光のページェント」。あの何万という光の洪水を見せたら、昇平はどう感じるんだろう。私もまだ見たことがないけれど、神戸の「ルミナリエ」に連れて行ったら? いつか見せてあげたいな。本当に、いろいろなものを感じさせてあげたいな。
 そんなことをとても思わせる、最近の昇平……。

061214_1914 ←映りが暗いけれど、赤くライトアップされた樹。

[06/12/17(日) 15:32] 日常 発達障害

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