見通しの立ちやすい支援とは
昨日の連絡帳に写真がはさまってきて、こんな内容が書いてあった。
(※写真をクリックすると少し大きくなります。)
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4月16日 記録者:ドウ子
写真は今日の学級清掃の様子です。床を三等分して拭くところをはっきりさせ、「新しい雑巾の汚れ具合を見るよ」と話すと、とても熱心に拭きました。向かって右端が昇平くんです。(ちなみに、真ん中がL子ちゃん、左がIくん) 雑巾がけも丁寧になりました。
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これを読んで、「う〜ん、やっぱりドウ子先生!」と感心してしまった。仕事の見通しの立て方がとてもうまい。
掃除の時間になっても、うろうろしているだけ、ふざけているだけで、ろくに働かない発達障害児というのは、けっこういる。いくら言ってもやろうとしないから、同じ掃除班の友だちから怒られたりして。先生からも叱られたりして。
でも、よくよくその理由を確かめてみると、掃除をする気がないのではなくて(もちろん、する気がないというのが原因の場合もあるけれど)、見通しを立てる力が弱いために、掃除の時間の間に自分が何をすればいいのか、いつまでにどんなことをすればいいのか、それがわからないために、手が出せなくてうろうろしていることがよくあるのだ。
「N先生〜身近な特別支援教育」に書いたように、その子が掃除用具の使い方をよく知らないために、うまく掃除できないでいる場合もある。
拭き掃除をするメンバーは3人。だから、ドウ子先生は床を三等分して見せて、「キミはここからここまで、あなたはここ、キミはここ」と掃除する場所をしっかり示し、「向こうの端からこっちの端まで拭いたら拭き終わり」と具体的な仕事の内容を示し、さらに「新しい雑巾だから、どのぐらい汚れを拭き取れたか雑巾ですぐわかるよ。だから、終わってから雑巾の汚れ具合を見るよ」と言うことで、作業を丁寧にやることを指導したのだろう。
彼らは目で見てわかりやすいことにはとても取り組みやすい。きっと、自分の持ち場を一生懸命拭きながら、ときどき雑巾を返して、どのくらい黒くなったか確かめていただろうと思う。そして、最後まで拭き終わってから、「ドウ子先生、見て見て! こんなに汚れたよ!」と得意そうに見せに行っただろうと思う。――三人が三人とも。(笑)
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発達障害のある子には、見通しの立ちやすい支援が必要だ、とはよく言われるけれど、それが具体的にどういうことかとなると、漠然としていてイメージがわかないことが多い。
実際には、こういう内容を支援するのことなのだと思う。
・自分は「なにを」するのか。
・それを「どこで」するのか。
・「いつまで」やるのか。
・「どういうふうに」やるのか。
何のことはない。いわゆる「4W1H」を子ども自身にはっきりさせてあげる、ということになるのだけれど。
1年前、初めての委員会活動の所属を決めるときにも、ドウ子先生はこれに基づいた支援をしてくれていた。昇平とL子ちゃんを保健委員にしたのだ。
保健委員の仕事の内容は、毎週一回の清潔検査の用紙を集めて保健室の先生へ届け、判をもらってまた各教室に届けることと、校内の水道をチェックして石けんなどを補充し、やはり用紙に丸をつけて確認すること。各自の受け持ちは決まっているから、それがすめば委員会の仕事は終了で、家に帰ることができる。
「なにを」「どこで」「いつまでに」がはっきりしている。しかも、保健委員会の担当の先生はドウ子先生自身。「どんなふうに」やるかの指導もばっちりできる。――もちろん、これは、ドウ子先生自身が希望して保健委員担当になってくださったのだと思うけれど。
この話を聞いたときに、「これが見通しの立つ支援というものだな〜」と、ものすごく感心した。
例えばこれが新聞委員会などだと、毎回仕事の内容が変わってしまう。企画のために話し合うだけの週もあるし、取材や調べ物だけの週もあれば、実際に新聞作りをする週もある。自分がどこで何をすればいいのかは、その時その時で臨機応変に判断しなくてはならなくなるし、いつになったら自分の仕事が終わるのかの見通しも立てにくい。(自分一人で作るなら良いけれど、大勢で協力しながら作るとなると、他の人の進行具合が関係してくるから、見通しが立たなくてイライラしてくるのが昇平。) 絵を描くのが好きで得意な昇平だから、5年生になったら新聞委員会が良いのでは、と私などは密かに考えていたのだけれど、こうして考えてみると、かなり本人に負担になる仕事だというのがわかる。
それに対して、保健委員の仕事は、わかりやすいし頑張りやすい。つまり、見通しが立ちやすい。しかも、ドウ子先生のサポートがすぐそばにある。昇平もL子ちゃんも、すぐに委員の仕事を覚えて、毎回きちんとこなすようになった。
委員会活動のある日は下校が遅くなるのだけれど、昇平がそれについて文句を言うことも、一度もなかったし、委員会の仕事をやりおえてきたことに、達成感を感じているようにも見えていた。
ちなみに、後から聞いた話によると、保健委員会で壁新聞を作ったときに、昇平はイラストを担当したらしい。なるほど。新聞委員会でなくても、自分の得意なところを発揮する場というのはあるものなのね。
今年も昇平は保健委員になったらしい。委員会担当が今年もドウ子先生かどうかはわからないけれど、たとえどの先生になっても、仕事の内容をしっかり把握して見通しが立つようになっているので、昇平もL子ちゃんも、ばっちり保健委員としてがんばれるだろうと思う。
見通しの立つ支援をすることで、子どもが自分で動けるようになる。そのことが良い自己評価を子どもに与えるし、周囲の子どもたちからも良い評価を受けることになる。それが、集団の一員としての自信を育んでいく。
ちょっとしたポイントなのだけれど、それが大事なんだなぁ、とつくづく思った。
さて、私が担当しているのは家庭の中での支援。
ドウ子先生の指導のポイントをおおいに真似させてもらうことにしようっと。
[07/04/17(火) 08:20] 学校 療育・知識 発達障害